2章② 考え方の相違
一空は部室にいる見知らぬ男に驚き声が出てしまった。
「うぁ、誰だお前!?」
その声にメガネの男が反応した。
「誰だとは、いきなり失礼だな。見れば分かるだろ」
そう言ってメガネの男はその場で振り返った。
「うちの生徒か?」
「そうだ。今日から2年の竜胆 真だ」
そう言うと、よく見かける動作であるメガネを『クイッ』と人差し指で上にやる動作をした。
「同い年か……あぁ、後さっきはいきなり驚いて、すまん!」
「……で、君は誰だい?」
「俺は、万城 一空だ。あんたと同じ、今日から2年の生徒だ」
竜胆は、一空を頭から足まで一通り見ると部長の方に体を向けた。
「で、何でああいう部外者が部室に来てるんですか?」
その言葉に『ムッ』ときた一空は部長が答える前に発言した。
「ちょっとそこのメガネ君……俺は部外者じゃないんだけどね〜」
一空は嫌味を言うかのように、竜胆に言うと再び振り返る竜胆。
「ほぉ〜どう部外者でないと言うんだ? それと俺をメガネ君と呼ぶな。せめて竜胆と呼べ!」
「そりゃぁ、すいませんね竜胆君」
2人は勝手にギスギスした雰囲気になって行く。そこに止めに入ったのは彩音だった。
「ちょっと2人とも止めなって。何ムキになってるの? それに部長もちょっとニヤニヤしてないで止めて下さいよ!」
彩音は一空と竜胆だけでなく、その光景を面白がっていた部長にも注意をした。
「いやぁ〜なんか勝手に盛り上がっていくから面白いな〜って思ってさぁ」
「部長が早く、真に一空のこと伝えていれば、こうはならなかったと思いますけどね」
「だってこいつ、なんか今日しつこいんだよ〜」
「部長、別に俺がしつこい訳じゃなくて、あなたがしっかり答えてくれないからでしょうが!」
竜胆は部長に対して訴える。すると渋々部長は、竜胆が知りたいことをもう一度聞いた。
「で、お前は私に何を聞きたいんだっけ?」
「ですから、昨日の戦闘はどうなったのかを詳しくお聞きしたいんですよ」
竜胆は部長の前にある机を両手で叩いて伝えた。
「あぁ、そのことね……結論から言うとお前の後ろにいるアイツが最終的に解決させたらしいぞ」
「!?」
竜胆はすぐに振り返り一空を見る。一空はいきなり見つめられ、少し後ろに退けぞいた。
「な、なんだよ……」
「……」
次に竜胆は、無言で彩音の方を向いた。
「彩音、お前が昨日の戦闘を担当したんだろ? 部長のことだ、また冗談でも言ってるんだろ?」
「……真、それは本当の事なの……」
「嘘だろ……あんな野郎が解決させたって言うのか?」
一空は竜胆の言葉にまた『ムッ』としたが、今回は抑えた。
「真は信じられないかもしれないけど、一空が昨日の戦闘を解決させたのは本当。私がこの目で見てたし」
「……部長、本当ですか?」
竜胆まだ信じられず、また部長に問いただす。
「私は直接見てたわけじゃないから分からないが、行った時には彩音はボロボロで、そいつは変な格好してたな」
部長は自分が見たことをそのまま竜胆に伝えると、それを聞き何か納得したように竜胆は一空の方を向いて問い始めた。
「なるほど、お前は彩音にストラップを貰ってマグレで奴らに勝ったということだろ?」
そう自信満々に一空に対して言い放つ竜胆。すると、一空はそれに対して反論する。
「俺は勝敗とかじゃなくてただ、戦いを辞めさせたかっただけだ……」
一空はそう言うと昨日のことを思い出して胸が締め付けられる感じになる。
「戦うことをか? 馬鹿馬鹿しい。そんなことできるわけないだろう。ただでさえ、たまたま力を持った奴が何を言ってるんだか」
竜胆が言い放った事に一空は我慢できなくなった。
「戦って何になる。無駄に命を奪うことはして欲しくないだけだ!」
それを聞くと竜胆もさらに反論する。
「力がない奴が、できない事を口に出すな! これは奴らに奪われるか、俺たちが奪うかしかないんだよ! 何も知らねぇ奴が勝手に自分の理想を押し付けるんじゃねぇ!」
「なんだと! お前がどんな奴か知らねぇが、そこまで言われる筋合いはねわ! お前こそ、口だけなんじゃないのか?」
2人はついに怒鳴りながらケンカをしだす。
「ほぉう。そこまで、言うのならもし、お前の力で俺をねじ伏せられたら、理想を口にだすことぐらいなら許してやるよ」
「望むところだ! だが、俺が勝ったらお前のそのふざけた考え、考え直してもらうぞ!」
勝手に力勝負することになっており、彩音が再度止めに入ろうとすると部長が先に立ち上がった。
「いいんじゃないか? 場所は用意してやるから存分にやれ」
「部長! 何言ってんですか!?」
「ちょうどいいだろう、一空の力を見極めることもできて、実力も見れる。まぁ、竜胆相手だから微妙だがな」
「そうですけど……別に、こんなケンカをしてる時じゃなくても」
彩音は部長に進言したが、部長は止めることなく進める。
「じゃ、場所は私が私用で作った地下訓練所で行うぞ。2人とも全力でやれよ」
「もちろんです部長、息の根を止めるつもりでやりますよ」
「俺だってやってやるよ! 絶対勝って考え直させてやるからな!」
こうして2人のケンカは、それぞれの言動をかけた力勝負となった。
そして、そのまま全員で部室を後にして、部長の言う地下訓練所に向かった。