5章⑱ それぞれの戦い
「うぅわぁぁーー!」
一空は足元に空いた穴に入ってしまい、いまだに落下しているとこだった。
そして落下した穴を抜けるととある部屋の真上から飛び出た。
「違う部屋!?」
一空は部屋の真上に放り出されたが、地面には膝を柔軟に折り曲げて、直接衝撃を受けずにそのまま受け身を取って着地した。
「ふぅ〜...何処だここは...」
一空は周囲を見回したが、その部屋は一番最初に来た部屋と同じ様な部屋だった。
そして抜けてきた穴を、見上げたが既にその穴は無くなっていた。
「落とされた穴はもう無いか...辿って戻る事も出来ないな。...さて、部長達と分断されたと言う事は1人づつ片付けると言う事だろうな...」
一空はストラップに手を掛けて、戦闘態勢を取った。
すると前方の壁が開き、1人の人物が現れた。
「お前がここに来たか。」
その人物はそう言って一空に向かって歩き出した。
徐々に近付いて来て、一空はその人物が誰だか分かった。
「......ファースト!」
「これは何かの縁だな?あの日の続きが出来て、俺の手でお前を粛正出来るのが嬉しいよ。」
ファーストは片手を一空に向けて、手でゆっくりと握り拳を作りながら話した。
それを見て一空は、腰元の鎧のストラップを引っ張った。
腕には3本のゲージがあり、いつもの戦闘装備となり、更に剣のストラップを引っ張り手元に鉄の剣を出現させた。
「俺はお前なんかに粛正されない......お前に勝つ!」
一空はファーストに剣を向けて宣言した。
「勝つ?......お前が俺にか?ありえないな。お前は俺との実力差を、身をもって知っているだろ?」
「あぁ、あの日俺は死にかけた。だが、生き残りあの日の事を糧として成長した!だから、お前にも勝てる!」
「はっ!たかが数週間で何が成長だ?歯も立たなかった戦いで、何を糧にしたんだか。...ただ、一方的に粛正するのも可愛そうだからな。どう変わったか、見せてもらおうか?」
ファーストは、そう言って腰元の剣のストラップを引っ張り手元に剣を出現させた。
そして、剣に雷を纏わせた。
「さぁ、始めようか...粛正を。」
「行くぞ、ファースト!」
一空は力強く地面を蹴ってファーストに向かって行った。
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「ここは...外?....いや、部屋の中...」
彩音も落下して通って来た穴から出ると、そこは今までの部屋とは違い、草木や岩などが一面に広がり一見外かと思えるが、よく目を凝らすと橋は壁だと分かり部屋だと理解出来る様になっていた。
「室内だと思うけど、地面には土もあって風も吹くなんて、どうなっているのこの部屋...」
彩音は疑問に思いながら、周囲を見渡しながら歩いていると遠くからこちらに向かって来る人影を見つける。
「!」
彩音はすぐに戦闘態勢を取り、腰元の短剣のストラップに手をかざした。
「(誰か来る...来るとしたら、〈神守護〉の誰かのはず...)」
彩音はそのままの状態で見つめていると、徐々に近付いて来た人物が分かった。
その人物は、顔に仮面を付けて両手に槍を持った〈神守護〉のセカンドだった。
「俺の相手は、お前か...」
「確か、セカンド...」
するとセカンドが、徐々にスピードを上げて彩音に突っ込んで来た。
セカンドは、そのまま片手の槍を彩音に向けて突き出した。
彩音は、すぐに短剣のストラップを引っ張りセカンドの槍の付きを顔スレスレのとこで流した。
だが、セカンドはそのままもう片方の槍を斜め下から振り上げて来ていた。
「っ!」
彩音は咄嗟に対応して、もう片方の手で短剣のストラップを引っ張り出現させ、何とか防いだ。
「ふんっ!」
だが、セカンドの攻撃は終わらず彩音の腹部めがけて片足で吹き飛ばす様に蹴りを入れた。
「ぐっはぁっ!!」
彩音はそのまま後方へと吹き飛ばされてしまう。
「女だろうと我らが神に逆らう者は、容赦しない。」
「ゴホッゴホッ!......はぁ、はぁ、はぁ...本当に容赦がない蹴りね。」
彩音は、ゆっくりと立ち上がりセカンドに向かって短剣を構える。
「鉄よ、我が命に従い『氷結』となれ!」
彩音の言葉で短剣の先が氷の刃となった。
「私だって貴方に負ける訳には行かない。全力で貴方を倒す!」
「......」
セカンドは無言のまま、再び彩音に向かって突っ込んで行った。
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「ぐっ!」
仁が苦しげな声を上げたその直後、複数に渡り硬い物同士がぶつかり合う音が響き渡った。
「オラァ!」
そう叫びながら、仁に向かって大きく斧を振り抜いた。
仁はその斧を木刀で受け止めたが、力で押し負け吹き飛ばされてしまう。
「くっ...なんつう力だ...それに、あの黒い装備映像で見たことあるぞ。」
「手加減なんてしねぇ...テメェをここで潰す!」
仁の目線の先には、黒い鎧を纏い右腕には扇型の刃が先端に付いた装備し、左腕には扇型の刃を装備し、大きな斧を持っているサードがいた。
「(それに、この部屋は何だ...一面が砂で砂漠の様な場所だ...)」
仁が態勢を立て直しながら、周囲を見渡した。
「おい、いきなり攻撃は酷いんじゃないか?こっちは、いきなり穴に落とされて出て来たらこんなとこだったんだぞ。」
「時間稼ぎなど無駄だぞ。...ここ場でお前は俺に叩き潰されればいいんだよ!」
サードはそう言いながら、仁目掛けて素早く間を詰めて仁の目の前に移動し、大きな斧を勢いよく振り下ろした。
「っ!」
だが、仁はその斧を木刀で受け止めるとそのまま体を移動させながら木刀を地面に向けて、斧を滑らした。
「!」
「...なるほど、分かりやすい奴だな。だが、俺はそこら辺の奴とは違うぞ。」
仁はそのまま振り下ろした腕目掛けて、自らの木刀を振り下ろした。
木刀は、サードの腕に直撃したがサードは微動だにしなかった。
「(硬いっ!)」
「威勢がいい奴は、嫌いじゃねぇ!」
サードはそこから真横に斧を振り抜いた。
仁は受け止める事なく、すぐさま後方に飛び攻撃を避けた。
「(クッソ...砂に足を取られてあまり距離が取れない。)」
そこから仁は、1回転がりサードとの距離を取った。
「(こんな足場でアイツとやるのか...だが...)」
仁は数回足場を踏み付けて確認した。
「逃げる事など出来ないぞ。」
「逃げやしないさ。決着はつけてやるよ。」
仁は不安要素がありつつも木刀を握りサードに向けた。