5章⑮ 《三本柱》
そして15分程、休憩を挟んで部長が話し出した。
「それで、記憶の方はどうだ2人共?」
「まだ、少し混乱していますけど落ち着いて来ています。」
「間違っていた記憶が消えて行く感じだな。」
部長が彩音と一空の状態を確認し、特に異常がない事を理解した。
「さて、これからの事だが、お前達も映像を見て気付いていると思うが〈神守護〉に襲撃を仕掛ける組織がいたが、【神の名を継ぐ者】に反抗する組織は数多くある。」
「っ!」
「そんなにあるのか?」
部長の言葉に3人はすぐに反応した。
「これは偶然だが、【神の名を継ぐ者】に反抗する他の組織について、少し調べがついたから先に共有しよう。」
すると部長は立ち上がり、部室の壁に貼ってあるホワイトボードの前に移動して、ペンを取りボードに図のような物を描き出した。
「部長、いつの間にそんな事調べていたんですか?」
彩音の問いかけに、部長は描きながら答えた。
「空いてる時間を使ってコツコツと調べただけだ。意外と情報が無いから大変だったがな。」
彩音に答えているうちに、ボードに描き終え振り返って一空達の方を見た。
ホワイトボードには、3つの円が書かれてそれぞれ少しずつ重なり中心が3つの円が重なっている図が描かれており、それぞれの円に名前が書かれていた。
「部長、何だその図は?」
仁が部長の描いた図を指差して問いかけると、部長はペンで図を指しながら説明し出した。
「これは、《三本柱》と言う。【神の名を継ぐ者】達に反抗・敵対している組織の中でも、特に力や影響力が強い3つの大きい組織の事を示している総称だ。」
「3つの組織...」
一空が呟くと、部長は3つの円の一番上にある円をペンで指した。
「まずは、【獣王】。これはお前達も知っているだろう。特に御神楽は直接関わった事がある奴らだ。」
「...」
仁は黙って部長の説明を聞き続けた。
「組織構成まで、詳しくは分からないが組織名になっている獣王と呼ばれる者が、リーダーと言われている。それと幹部と思われる人物は、何かしらのマークを身に付けていると言う情報もある。」
「マークか...」
「そして以前、戦った相手は全員が獣系の力を使っていた事から、この組織は主に獣系統の力を使う者達ではないかと私は考えている。」
部長の考えに彩音や一空が反応した。
「確かに、私が戦った奴は海の生き物ぽかったな。」
「俺は、ゴリラとかゾウだったな...」
2人はその時の事を思い出して話していた。
「あくまでも、私の考えだから間に受けないでくれ。とりあえず【獣王】としての情報は以上だ。」
そして部長は次に左下の円をペンで指して話し出した。
「次は、【革命者】と言う組織だ。だが、この組織の情報はほとんど無かったが、多分この組織のリーダーは乙坂 だ。」
「乙坂 って、確かこの学園に襲撃して来た奴らのリーダー的な奴だったよな?」
一空がそう言うと部長が頷く。
「この組織は、仮面や目元を隠していると情報があってな、あの映像で自らの組織も名乗っていた事で正しい情報だと分かった。それに竜胆らしき人物もいるとなるとリーダーが乙坂でないかと判断した訳だ。」
それに仁が疑問を投げかけた。
「それだけで、その組織のリーダーが乙坂と言う奴に決めるのはどうなんだ?それを決定付ける証拠はないんだろう。」
すると部長は少し黙ってから答えた。
「...確かに御神楽の言う通りだな。勝手に自分で決め付けてしまった事は謝る。...だが、乙坂の実力は私と同格レベルだ。そう考えると何かしらの組織のリーダーだったとしてもおかしくないと私は思っている。」
「なぁ、それを決めるのは、今じゃなくてもいいんじゃねぇの?」
一空が2人の間に入って呟いた。
「そうだな。気を取り直して、最後の組織について話すそう。」
そう言って部長が最後の円をペンで指して話し出した。
「これが3つ目の組織、【七星連合】だ。」
「なんか、いかにもって組織名だな...」
「この組織は、【革命者】同様に現時点でほとんど情報がない。1つの情報としては、この3つの組織の中で一番の規模だと言う事だ。」
「そんなに大きい組織なんですか?」
彩音が部長に聞き返すと、部長がホワイトボードにいくつからの楕円形を描きながら話した。
「【七星連合】は、いくつもの組織が集まって作られている組織らしい。更にそこからリーダーを選定しているという噂がある。持ってる情報はこれだけだ。」
部長が話し終わって少し沈黙した後、仁が小さいため息を漏らしながら呟いた。
「...このうち、2つの組織とは既に接触している事に驚きだな。」
「御神楽の言う通りここ2ヶ月少しで、《三本柱》〈神守護〉と接触した事で、急激に私達の立場が変わっている。しかもそれはあまり良くない方にだ。」
「そうだな、それは身を持って感じているよ。」
仁がそう言うと、彩音も呟いた。
「やっぱり、また襲撃して来たりするんですかね?」
「その可能性は高いな。特に今は〈神守護〉の行動に注意すべきだな。万城が粛清宣言を受けている事も考えれば、必ずアイツらは仕掛けて来るだろう。」
「(ファースト...)」
一空はファーストに挑んで負けて言われた事を思い出していた。
「出来ることはやっておくべきだな。今を維持するのは良くない。自らの力をより磨きをかけるべきだな。」
仁が彩音と一空に対して話した。
すると一空は、自らの手を見つめて『ギュッ』と握りしめた。
「(俺自身の力をもっと使いこなして、俺がアイツを倒す!)」
そして部長が話し出した。
「いつ何があるか分からないから、警戒はしておくように。それと、出来るだけ1人にはならない様に心がけてくれ。」
部長がそう締める様な言葉を呟くと、3人は頷いて応えた。
「と、お前達には言ったが、私も早くこの腕を何とかしないとな...」
部長は動かない左腕を見て呟いた。
「そうですね...その腕を治せる可能性がある《五源器》も手に入れるのも難しいですしね...」
「まぁ、焦らず機会を待つさ。それより、お前達。」
そう言って部長がいきなり、一空と彩音の方に近寄って来た。
「な、何ですか?」
彩音が少し驚いた声を出すと部長が心配する様な声で呟いた。
「お前達、月末の中間テスト大丈夫何だろうな?」
「......え?」
2人が同時に聞き返すと、部長がもう一度聞き直した。
「だから、中間テストだよ。先週授業で言われたろ。」
「...嘘...聞いてなかった...」
彩音は気の抜けた言葉で呟いた。
だが、一空は違った。
「まだ、2週間あるじゃねぇか。楽勝だって。」
そう自信満々に一空が言うと部長が、話しかけた。
「ほう、やたらと自信があるみたいだが今回はいつものテストとは違って実力テストで、範囲などはないぞ。」
「.......はぁ!?」
部長の言葉に唖然とする一空。
「先に言っとくが、赤点なんて取ったらどうなるか分かってるだろうな...」
部長が2人を脅す言葉を言うと、彩音が立ち上がり扉に手をかけて話した。
「部長、今日はこれから用事がある事を思い出したので帰らせて頂きます!」
そう言って部室を後にした。
一空は彩音の行動を見た後に、ゆっくりと立ち上がった。
そこに部長が手を伸ばして更に脅す一言を呟いた。
「それ相応の点数取らないと、赤点と同じだからな...」
一空は生唾を飲み込み、足早に部室の扉に手をかけて部室を後にした。
「...なんつう、脅し方してんだ。」
仁が部長にそう言うと、部長はソファーに腰をかけて答えた。
「いつもあんな感じさ。それにアイツらは学生だから、本当はなるべくこんな生活じゃなくて、学生として生活させてやりたいと思ってんだよ。」
「ふ〜ん、意外と考えてんじゃん。」
「意外とは何だ!私はこの学園の理事長だぞ。」
「そうだったな。」
仁がそう言って部長が腰掛けているソファーに座った。
「私はあまり体験出来なかった、この学生生活を大切にして欲しんだよ。」
その発言に仁は少し『ニヤニヤ』して見ていた。
「何、ニヤニヤしてんだよ!」
「イッテェ!」
部長は仁の頭を軽く叩いて、いつもの椅子に戻り座った。
「(さて、後は奴らがどう動くかだな...)」