5章⑫ 龍と狐の仮面
「革命者...だと...」
セカンドは龍の仮面を付けた者が言った言葉を繰り返して呟いた。
すると、龍の仮面を付けた奴の後ろからもう1人の人物が顔を出した。
「やぁ、みんな...」
それは、ウィンだった。
するとウィンの姿を見たイフトが呟いた。
「ウィン!お前...それ!」
「あぁ、これかい?大した事ないよ、腕の1本くらい。」
ウィンは、なくなった左腕を見せる様に答えた。
「何が足した事ないだ!ふざけるな!」
ウィンは龍の仮面を付けた者に、怒鳴られて殴られていた。
するとセカンドが、ウィンを見て次に問いかけた。
「サードはどうした?」
「サード?..,あぁ、アイツか。」
セカンドの問いかけに、龍の仮面を付けた者が答えた。
「背後から殴りかかって、吹き飛ばそてやったよ。ウチの仲間が殺されるとこだったからね。」
「そうか...!」
するとセカンドは、龍の仮面を付けた者に飛びかかり薙刀を振り下ろした。
しかし、龍の仮面を付けた者は振り下ろされた薙刀に対して腕の装備から煙を出して勢いよく殴り抜いて弾き返した。
セカンドはその反動で、押し返され宙で一回転して地面に着地した。
それを見た龍の仮面は、脚から煙を出して一瞬でセカンドの目の前に移動して蹴り飛ばした。
『ガシャンッ!』と立っていた棚にセカンドが飛ばされてしまう。
「ゴーグル何してる、撤退だ...」
龍の仮面を付けた者は、振り返りながらゴーグルに話しかけた。
「は、はい!」
ゴーグルが返事をすると、イフトとロクトルと一緒にウィンの方へと走り出した。
すると、龍の仮面を付けた者が一瞬だけ、一空と彩音の方を見たがすぐに正面を向いた。
「...おい、彩音。あの装備...」
「っ!...」
龍の仮面を付けた者の装備を見て一空は驚き、彩音は言葉を失っていた。
理由は、そいつの装備が竜胆の物と全く同じだったからだ。
「お前ら、後で詳しく説明してもらうからな...」
「はい...」
龍の仮面を付けた者が、ゴーグル達に低いトーンで発言すると、ゴーグル達は少し震えた声で返事をした。
そのまま、壊した壁から立ち去ろうとした瞬間だった。
セカンドが、飛ばされた方から現れて龍の仮面を付けた者の後頭部目掛けて、鋭い槍を放った。
「っ!」
龍の仮面を付けた者は、それには気付いておらず、前方にいたウィンが気付いて行動したが、槍の方がそれより早く到達すると思われた時だった。
真上の天井から何かが落下して来て、龍の仮面を付けた者と飛んできた槍の間に落下した。
『ゴギンッ!』と落下時の音と槍がそれに当たり弾かれた音が響き渡った。
「!?」
セカンドが放った槍は、その勢いのまま弾かれてセカンドの後ろの壁に突き刺さった。
そして土煙が晴れて行くと、そこにいたのは身長が2メートル近くあり、全身が銀色に輝く筋肉ゴリゴリで目元はマスクの様な物で覆われた奴と、そいつの片方の肩に乗っている狐の仮面を付けた者がいた。
「あら、アイツらがいないわ。ここだと思ったのだけど?」
「んー...」
「メタル、ここで合ってるわよね?」
「んー...」
すると、イフトが声をかけた。
「メタル!?」
その声に反応して、全身が銀色に輝く奴ことメタルが振り返った。
それに狐の仮面を付けた者も振り返った。
「あら、そちらにいらしたのね。分かりませんでしたわ。」
「んー...」
「来たか。」
龍の仮面を付けた者が、そう言うと狐の仮面を付けた者が少し不満そうに話した。
「あら、何故少し上から目線なのかしら。わざわざ来てあげたと言うのに。」
すると、龍の仮面を付けた者は、聞こえない程の小さい声で呟いてから、答えた。
「面倒な奴だ......別にそう言う意味で言ってない。」
そんな会話をしているところに、再びセカンドが槍を持って次は狐の仮面の奴目掛けて放った。
しかし、メタルがすぐさま狐の仮面を付けた者を左腕に降ろして、右腕の筋肉で槍で弾き返した。
そして、メタルがセカンドの方を睨んだ。
「んー!!」
「あら、私達に戦いを挑んで来る奴がいるなんて、なんて命知らずな奴。」
狐の仮面を付けた者が、メタルの肩から顔を出して話した。
「お前も奴らの仲間か?」
セカンドの問いかけに、狐の仮面を付けた者が『クスッ』と笑ってから答えた。
「あら、それはどうかしら。」
狐の仮面を付けた者が、そう答えるとセカンドが足元に転がっていた薙刀を握ってから、飛びかかった。
それを見て、狐の仮面を付けた者はメタルの腕から飛び降りならが、呟いた。
「あら、本当に命知らずね...メタル...」
「んー!」
するとメタルが、振り返り左腕で飛びかかって振り下ろして来た薙刀を防ぐと、薙刀はへし折れてしまう。
「!」
そこからメタルは、右腕をセカンドの腹部に叩き込んで殴り飛ばした。
『ボゴンッ!』と棚の残骸に埋もれて姿が見えなくなった。
「あら、人ってそんなに飛ぶのね。」
「んー...」
「おい、戦う為にお前らを呼んだんじゃないぞ。」
龍の仮面を付けた者が、狐の仮面を付けた者に対して話すと狐の仮面を付けた者が振り向いた。
「あら、分かっているわ。ただ邪魔虫をはねただけよ。」
そう言うと、メタルが腕を差し出してそこに狐の仮面を付けた者が乗っかった。
「(コイツと話してると疲れる...)」
「あら、行かないのならわたくし達の方から先においたまさせていただきますわ。メタル。」
「んー!」
するとメタルが、姿勢を低くして勢いよく跳ね上がるとそのまま落ちて来たとこから上層に上がって行った。
「ウィン、俺達も行くぞ。」
「はい。」
そう言ってウィンが、片腕を下から勢いよく上に上げると足元から強い風が吹き出し、それに乗る様に飛び上がって上層へと飛んで行った。
その直後、棚の残骸に埋もれていたセカンドが残骸を跳ね除けて現れた。
「逃すか...」
セカンドの体は大きな傷はなく、服が所々破けているのみだった。
そこに〈神守護〉の部隊がやって来た。
「セカンドさん!こちらにいましたか。」
「来たな...お前らは、そこの一般人をナインスの元に連れて行け。後、サードの部隊と他の部隊にも連絡を入れろ。侵入者は《三本柱》の一つ革命者で、上層に行ったとな。」
セカンドからのいきなりの指示にも、冷静に対処し始める〈神守護〉の部隊。
「セカンドさんは、どうするのですか?」
「俺は、このまま侵入者を追う。」
そう言い残し、セカンドも侵入者が登って行った穴の下に移動して、そこから飛び上がって追って行った。
その後、一空と彩音は〈神守護〉の部隊に連れられてある部屋に入れられた。
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そこにはツアー参加者達や、ツアーに参加出来なかった者や記者達が沢山いた。
「どう言うことだ?」
そう一空が疑問を持っていると、部屋の奥から1人の人物が現れて宙に何かを投げた。
すると部屋が一気に明るくなった。
「!?ま、眩しい...」
「目が...開けられない...」
いきなりの強い光に部屋にいた者達は、目を開けることが出来ずにいた。
すると、次々といきなり倒れ始める人々。
「何が起こってる?」
一空は、うっすらと目を開けたが気を失うかの様に次々と人が倒れて行く姿しか目に入らなかった。
そして彩音も同様に、いきなり倒れてしまった。
「彩音!」
一空が声をかけても、起きることはなかった。
そして遂に一空も、いきなりスイッチが切れたかの様に意識がなくなってその場に倒れてしまった。
ーーその後目を覚ますと、〈神守護〉の拠点入り口に立っていた。