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とある世界の決戦Part1

お願いいたします

「魔王!貴様の命もここまでだ!」


ここは俺の実室。

少年とも少女とも取れる声、その表情は被っている白銀の兜で分からない。神々の加護を受け魔を消し去る存在である勇者。その勇者は俺を殺そうとしているようで思わずわーこいつまじできたのかよと言う気持ちを吐き出しそうになった。

紹介が遅れた俺の名前はリュージ・イツカ・クライネル、一応みんなから魔王と呼ばれている存在だ。

魔王とは本来、魔を導くもの支配する者やらまさに悪の元凶とか言われてきてるが、俺にとってそんな勝手なイメージは迷惑極まりない。

遡ること10うん年俺の父親はそれはそれは立派な魔王だったそうだ。

巨人族を思わせるほど大きく、鋼を思わせる程の体は刃はおろか強力な魔法の一撃も防ぎ、その禍々しいツノで人種を殺しに殺し敵を唸らせる程の知力で大戦にも勝利した我が父は、勇者をあと一押しで殺すところまで来そうだが、三日三晩続いた激戦の末、勇者の放った攻撃でその命を落としてしまう。

そんなの父親の血を受け継ぎ、この世に生まれた俺は今度こそ人種を滅せる存在が現れたと必然的に魔王になることを余儀なくされ今に至るわけだ。


俺はこんな生活はもうたくさんなんだよ。やりたくもない仕事をして、何にも恨みのない奴らを恨むこんな人生。というか勇者に命を狙われる時点で俺は死んだも同然じゃね?

俺は父の様に体も大きくはなくむしろ普通の人間サイズだし、ツノは確かに大きいけれではっきり言って書く作業とかすると邪魔だ。過去の文献を調べてみても俺みたいな魔王はおろか勇者に勝てた魔王なんていないし、このままじゃあ俺は確実にお陀仏だ。

だから俺は幼いながらも既に決心していた。


絶対に俺は命も狙われず、平和で安静な余生を過ごすのだ!!・・・と。


そうして本や古文書を手当たり次第に調べ挙げ、遂に俺の余生を安静に過ごせる場所を見つけたのだ。

この日のために念入りに準備し、部下や側近、ましてや家族にも秘密にし計画もバッチリ立てた俺は今日その計画を実行させる。

目の前の勇者を見つめ、スッと手を挙げた俺はとある装置の起動をした。

その行いの真の意味を知っているのは俺だけだろう。勇者一行などはその行為が何かの攻撃だと思ったのか、サッと武器を構えてかなり警戒をしている。



「貴方達勇者なんぞに我らが王を倒すことなど不可能。身の程を知りなさい勇者よ」


と澄んだ声が周りに轟く。

俺の側近で幼馴染、それでいて多くの魔人や魔物、悪魔の軍を率いる七魔将の1人 リリス・クロウだ。

リリスは淫魔とも呼ばれているサキュバスで、その色気を使い多種多様な種族を誘惑しては行為に及ぼうとする悪魔である。

しかしリリスはそんなイメージを大きく覆すほど清楚で、それでいて美しく七魔将や俺の側近という地位も自分の武力と知力でのし上がったまさに武将気質な少女だ。


そんなリリスは自分よりも大きな大剣を空間魔法内から取り出し、勇者一行へとその刃を向け濃密な殺気を飛ばした。


「貴方達勇者の相手などは私1人で十分です!」


その細腕から想像がつかない程、まるで棒切れのように大剣を振りあげ恐ろしい速度で勇者達に斬りかかる。


「クっ!」

「嘘でしょ!本当にサキュバスなの?」


とリリスのサキュバスらしからぬ猛々しいその姿に勇者一行からは驚きの声が上がり、リリスへと交戦を開始。


「くそこいつは強すぎる!アスカここは俺たちがなんとか抑える!今のうちに魔王を殺せ!」


と両手に剣を構えた戦士風の男が白銀のフルアーマーを着込んだ勇者へと叫び、勇者は腰に帯びていた聖剣を抜き出し、盾を構えると魔王の俺に向かって走り出す。


やべきた!


勇者一行と交戦するリリスはその顔を怒気に歪めて、禍々しい魔力を放出し戦士風の男を斬り飛ばし壁へと叩きつけた。


「私の魔王様に近づくな!!!!!」


リリスは声を上げながら俺に迫る勇者に向け、走り出そうとするがそれを炎と氷の壁が阻む。


「貴方の相手は私たちです!」


と賢者や戦士、そして槍使いなどがリリスを止めるため襲いかかった。



飛び上がり聖剣を振り下ろす勇者を見ながら俺は、座っていた王座から静かに立ち上がると空間魔法から代々受け継いできた魔剣 デュランダルを取り出し勇者が放った聖剣での一撃を難なく受け止める。

ギギッ!と火花を散らし魔剣と聖剣がぶつかり合い周りにその衝撃が轟く。勇者はさらにスキル《剣聖技》を駆使し様々な斬撃を繰り出してくるが、俺はそれら全てをデュランダルで捌きった。


まさか傷が一つもつかないとは思っていなかったのか勇者からは息を飲む声とリリスを相手している勇者一行からは驚きに満ちた顔を浮かべた。



「嘘だろ!アスカの聖剣技を捌ききっただと!」

「傷一つつけられないなんて!」

「魔王・・・。一体どれほど強いんだ」

「ふふふ!魔王様は様々な才能を持ちながら幼いころから血の滲む様な鍛錬をしてきたのだ!貴様ら勇者など目でもないわバーカ!!」


リリスよ俺ちょっと恥ずかしいぞ



内心部下の言動に少し気恥ずかしさを覚えながら聖剣を持ちこちらを伺う勇者の姿を見る。

今の勇者など実力の半分も出していないだろうに、先代の勇者から受け継いできたスキル《聖霊同化》を発動してしまえば俺との力の差など一瞬にして埋まり命の危険が及ぶ事態になるだろう。



失敗は許されない。失敗=死だからな。


フッーと俺は少し気持ちを整えると自分の素の声よりも少し声を低くしいかにも魔王らしいであろう声を出し演出をする。


「ククク!勇者よ出し惜しみはよせ本気で来んと一撃で死ぬぞ?」


俺はスッと片手を挙げると巨大な魔法陣が背後に出現し、荒ぶる魔力が広い実室中に渦巻いて行く。

それを肌で感じたものは果てやリリスでさえも生唾を飲み込んだ。



「さあ受け止めてみろ 終焉の(エンド・オブ・)鎮魂歌(レクイエム)


すると赤黒く先端がまるで剣の様に鋭い触手が何本も出現し、勇者に本気を出させるために襲いかかる。

勇者は身体強化を全力でかけ、聖剣を強く握るとその触手たちを斬り飛ばして行くが、俺の触手たちの攻撃速度がそれを上回り白銀の鎧に徐々に傷ができて行く。

そして複数の触手が集結し、さながらバリスタ砲のような威力を持った攻撃が放たれると勇者は受け止めただけで後方へと突き飛ばした。


あわや壁に激突かと思ったが勇者は宙で体勢を立て直し、剣を突き立てて衝撃を地面へと逃すことで威力を軽減し、ふわりと地面へと降り立つ事で衝突はまぬがれる。


「休んでいる暇はないぞ?」


と俺は片手を上げ触手に勇者を襲うように合図すると勇者を貫くために触手が迫る。

勇者はゆらりと立ち上がると自分の魔力を高め聖剣を前に突き出し叫んだ。



「古の聖霊よ我に力を《聖霊同化》発動!!」



凛とした声が響き勇者の背中から神々しい程の大きな翼が飛び出し、勇者の体を青白いオーラのようなものを纏い凄まじい程の魔力が部屋中に溢れる。



「これが聖霊同化・・・。やはり知識で知っているのと実物で見るのとでは全然違うか」



勇者の聖霊同化の発動。待ちに待った瞬間がいよいよ訪れ計画を実行する準備が整った。俺が安静な余生を過ごすには魔王つまりは俺を死んだことにしなければならない。



悪いが勇者よ利用させてもらうぞ?



俺は静かに息を飲み、待機させていたエンド・オブ・レクイエムを聖霊同化した勇者に向かって放つ。

しかし勇者の動きは先ほどとは全く別物になっており、迫り来る触手たちを全て避けて俺に向かって来る。俺はさらに触手の数を増やすと追加で攻撃に加えさせた。


だが勇者は動じず聖剣を用意ることで傷一つ付かずに俺の元へとたどり着くと聖剣を構えて上段斬りを放ってくる。俺はそれを避けるが、その行動を予測したのか勇者はありったけの魔力を込めて勇者にだけ授かる魔払いの魔法をもうすでに展開していた。

このタイミングしかない!と心で叫んだ俺は、魔法を発動させる。



「魔王これで終わりだ! 光り輝く紅き焔よ 魔を打ち滅ぼし希望を与えよ!シャイニング・レイザー!」


すると闇を飲み込む焔と光が俺へと降り注ぎ、体を燃やしてゆく。強力な光と火耐性のマジックアイテムを幾つも身につけているはずなのだが、それを持ってしても結構なダメージを受けてしまった俺はこれ以上はまずいと用意しておいた転移魔法を発動させその場から離脱したのだった。





◇◇◇◇



放った強力な魔法シャイニング・レイザーが魔王に当たるのを見ながら、勇者である私はゆっくりと息を吐いた。

私の名前はアスカ・ミト・クロムネル 今年で16になった少女である。

この世界でミト・クロムネルという家名知らぬものは恐らく一人としていないだろう。なぜなら私の家は代々勇者の印が10年に一度出る家系なのだ。

勇者の印と言うのはそのままで、勇者の証明になるようなもので産まれた時に体のどこかに痣のように付いているそうで、私も胸の中心にそのマークが存在しこの度勇者になったわけである。

敵である魔族(魔人、魔物、悪魔の総称)を討ち倒してきてはや3年死ぬ思いを繰り返しながら私はついにこの瞬間を迎えたのだ。そう魔王との決着である。

先祖代々から私たち勇者は魔王との戦いを運命付けられていて、もはや逃げられない。

こうして私は魔王と刃を交えそうしていま討ち取ったことを確信する。さっきまで感じていた魔王の魔力が完全に感じなくなったからだ。


「魔王様!?」


と魔王の側近であるサキュバスも気づいたのか、声を大きく上げ仲間たちを吹き飛ばし私が魔法の放った場所を凝視していた。

光と炎がだんだんと弱まり私は静かに手を握りしめる。そこには魔王の姿はなく只々何かの燃えかすが無数にユラユラとしているだけだった。

そうだついに私は魔王を倒したのである。



「や、やったぜ!ついに魔王を倒したぞ!」

「さすがだわアスカ!!」

「ついに!ついにあの魔王を・・・!!」


とパティーの仲間たちから歓喜の声が聞こえる中、仲間たちを相手にしていたサキュバスは只々呆然と魔王がいたところを目をこれでもかと見開き、まるでないものを見るような必死さで見つめている。

私は聖霊同化の反動で少し気怠げな体に鞭を打って、サキュバスに聖剣を向けた。



「魔王は死んだもう戦う意味もない!お前達が大人しく武器を収め捕まるならば、悪いようにはしない投降しろ」



実際は人を殺した魔族などは確実に殺されるか、もしくは奴隷にされるだろうがいまはそんな事を考えている場合ではない。

外で未だ七魔将達と激戦を繰り広げている仲間達の戦いを終わらせるためには敵の降参が一番早いだろう。

しかしサキュバスからでてきた言葉は私たちの想像を遥かに超える言葉だった。


「私の魔王様が!私の魔王様が!私の魔王様が!私の魔王様が!私の魔王様が!私の魔王様が!私の魔王様が!私の魔王様が!私の魔王様が!私の魔王様が!私の魔王様が!私の魔王様が!私の魔王様が!私の魔王様が!私の魔王様が!私の魔王様がぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!!!!」



まるで狂気に満ちた声でそう言うサキュバスの顔はどこか壊れた人間のような顔をしていて、聞いていた全員がその声と雰囲気で背筋がゾクッと震え上がった。そしてそれと同時に消え去った魔王を超える魔力と殺気、圧力が溢れ出し私達は瞬時に理解する。


こいつが次の魔王だ!


私はすぐさま聖剣を強く握り、体に身体強化をかけると未だ動かず私の!と連呼するサキュバスに向け聖剣を振り下ろす。

が急に目をグリン!とこちらに向けたサキュバスに片手一本で受け止められてしまう。

本来聖剣には邪悪な魔力を持つものが触れると多大なダメージを負うはずだが、そんな様子は微塵も感じられないサキュバスを見てこれはやばいと感じた私は即座に叫んだ。



「全員撤退!今の私達じゃあ手に負えない!」


聖霊同化を発動すると反動で丸一日休まなければ使用できない。恐らくあのサキュバスは最初に戦った魔王よりも強いだろう。ならば聖霊同化は絶対に必要なのは間違いないだろう。


魔王・・・!とんでもない置き土産をくれたわね!!


と心の中で毒付く私をよそにサキュバスは真っ黒な不気味な涙を目から流すと頬が避けるのではないかというほど口元に笑みを浮かべた。


「貴様ら全員ぶっ殺してやる!」


とサキュバスの持っていた大剣があろう事か、破壊の化身の様ないびつな形に変え、サキュバスはそれをいとも簡単に振り回し私達に攻撃をしてくる。


「クソ!」


とS級冒険者 双剣使いのバラドが声を上げサキュバスの攻撃を防ごうと剣2本で受け止めようとするが、その余りの威力に剣が粉々に砕けバラドはそのまま砲弾の様な速度で、壁に叩きつけられメキッと言う音を立てそのまま白眼を剥いた。


「レオン!バラドの回収!マリアはありったけの攻撃魔法を!」



と私が命令を下すと皆は「はい!」と迅速にそれを決行し、私も賢者のマリアに加勢する様に様々な属性魔法を狂気に満ちたサキュバスに向かって撃ちまくる。


「バラドは回収した城から出るぞ!」


とレオンの声がした時サキュバスの大きな声が室内に響き渡った。


「逃すかぁぁぁぁぁ!!!!!!」


と爆発的なまでの魔力が部屋を破壊し尽くしてゆく場面を最後に私達は展開していた転移の魔法で、早急に城を後にするのだった。


週一ペースで出したいです!

今後ともよろしくお願いします( ̄^ ̄)ゞ

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