町はスルーの方向で
「やっと見えてきた。」
朝から歩きっぱなしなのに着いたのは、昼過ぎ。
だって、お腹が減って仕方なかったから、硬いパン食べたし。
昼ご飯食べたんだから、昼過ぎでしょ。日も傾き掛けてる事だしね。
[やっとかよ。お前遅いぞ。]
頭の上で、マッタリしてたトカゲには言われたくないけどね。
「暗くなる前に着いたんだから、いいでしょ。」
トカゲさんと話ながら、町へ近付いていく。
町は高い柵に囲まれていて、大きな扉からしか入れなくなってる。何だか、定番な気がする。それが、当たり前みたいな。
「すみませ~ん。」
扉に向かって、大きめの声で話し掛けると扉近くの家から、タイミングよく出てきた人が近付いてきた。
『見ない顔だな。こんな小さな町に何のようだ?』
警戒してるというよりは、本当に何もないのだろう。
不思議そうな顔をしている。
「通りすがりの旅人です。」
こう言えとトカゲさんに言われた。ストレートに(僕は誰?)って聞いてもよさそうなのに。
『そうか。それなら、北の街まで行くんだろ?今日は、この町に泊まるのか?小さな宿なら、あるぞ。』
親切心で言ってくれてるのだろう。野宿はイヤだし、この町に泊まろうかな。
[お前、金ないだろ?どうやって泊まるんだ?それに、お前を知ってるヤツもいなさそうだ。先へ向かうぞ。]
トカゲさんに言われて気が付いた。
僕、無一文だ。
。。。。。。。。。
『ぎゃわっぎゃわっ言って、話してるみたいに見える。よく懐いたトカゲだな。』
んっ?町人Aには、ぎゃわっぎゃわっと聞こえてるんだろうか?
もしかして、トカゲさんが話してると思ってるだけで、幻聴?
僕の頭は大丈夫か?
[また、良からぬ事を考えてるだろ?
どうやら、お前にしか言葉は通じてないらしいな。
曲がりなりにも召喚主なんだ。それ位の事があっても不思議じゃない。]
何でも無い様な事みたいにサラッと流すトカゲさん。
トカゲ界では、あるあるネタなんだろうか?
それは、ともかくとして
「急ぐ旅なので、このまま進みます。
ありがとうございました。」
町で休みたかったけど、トカゲさんに逆らっても、何もいいことなさそうだし、お金もないからスルーしていきます。