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第二十五話 蜂蜜色の時間


ゴメンナサイ。結局どろあまセカンドズトーリーを投入してしまいました。


「少し休まなくても大丈夫?」

気持ちよくって兄貴にもたれている俺にこの人はそう言った。

「大丈夫。」

今はこうしていたい。兄貴の心臓の音を聞いていたかった。

「肇が好きだから。」

その一言で、鼓動が早くなるのが分かった。驚いて見上げると、兄貴は困った顔で俺を見下ろしていて。

「僕のベッドにおいで。」

そう言った。

「お姫様だっこは嫌いかな?」

照れくさそうに。

「うん。」

それは初めての事だったけど。

「して。」

そう言いながら彼の首に腕を巻き付けた。


 兄貴のベッドは当然の様に兄貴の匂いがした。服のまま羽毛の布団に包まれ

「安心してお休み。」

って言われ、腕の中に囲われた。でも、当然、眠れるはずが無くて。

「はじめ。」

そう言って見つめている彼の気を引いた。

「ん?」

「もう、飽きちゃった?」

兄貴が息を詰めた。

「馬鹿だなぁ。」

困ったような、それでいて欲望を讃えた瞳が俺の顔を覗き込み

「いいの?」

って、聞いた。


 シーツが心地よかった。基に抱かれていたのが嘘の様だった。唇が合い、それを返す喜びを。内側の柔らかい所がこすれ合い、お互いの小さな違いを感じあう。ぴちゃっぴちゃっていう小さな水音が頭の中でこだましていた。

「肇・・・・。」

自然にその名前がこぼれた。

「んっ・・・・・」

彼が差し入れる舌先に、自分の舌を丸める様にし、そっと下から絡めた。彼の喉が小さく鳴るのが嬉しくて、舌の先を揺らし彼を刺激する。なんて素敵なんだろう。自分一人が一方的に愛しているんじゃない。ましてや、受け取りを拒んでいる愛を強要されている訳じゃない。これって、お互いが分け与え合う感情だって思った。全神経を唇に集中して兄貴を感じうっとりしていた。そのはずが、

「あっ!」

この人の大きな手が動いて、俺の胸を包んだ。

「うくっ。」

摘まれ、こねられ悲鳴は彼の口の中。全てが飲み込まれ、ああ、蹂躙されているって、思った。俺はこの人に支配されている。俺はこの人の女だって。

 従属している。それは均等な関係ではないのだろうけれど。それでも俺はこの人のモノになりたかった。

 彼はゆっくりと唇を離す。 

 兄貴は意地悪だ。

 欲しい、欲しい。この人の全てが欲しい。耐えきれなくて、しがみつき引き寄せる。

「お願い、ねぇ、欲しいの。肇が欲しい。」


 そしてこの人はいやらしかった。強すぎる刺激に怖くなり、思わず

「嫌っ。」

って抗うと、

「好いから。」

って言ってもっと惨くする。奥歯を噛みしめ、反り返る俺に追い討ちをかける様にキスをして。

「声、聞かせて。」

いやらしい、いやらしい、いやらしい!!

 身悶えが止まらない。快感がスパイラルで降りて来る。そのくせこの人の動きは緩慢で、俺の躯ばかりが別の生き物みたいに動いていた。

 声かすれるほど叫ばされ、何度も意識が飛びかけた。でも兄貴は余裕で、俺は味わい尽くされている、そんな感じだった。

 そしていつか羞恥心と快楽のないまぜになった渦に巻き込まれ、気を失っていた。


「恥ずかしい・・・。」

気がついた俺は両手で顔を覆って兄貴の視線を避けた。きっとAV女優並みに凄かったんじゃないかって、嫌になった。

 とにかく、恥ずかしかった。

「俺は、嬉しいよ。」

そっと抱き寄せられた。

「俺たちは愛しあったんだ。俺たちは特別なんだよ。」

その関係に堕ちていきたかった。


 それから少し寝て優しいキスで起こされて。兄貴と離れるのが辛かった。

 そんな風にぼんやりとしている俺の躯を兄貴が気遣う様に優しくタオルで拭いてくれ、張り付いている髪を撫でとかされた。

「風邪、ひかない様にね。」

なんて。

 大切にされているのは分かってるけど、手慣れてる。俺が言うのはおかしいのかもしれない。でも大人ってこういうものかって思った。 

 すると俺の頭の上で、ちょっと笑う音がして

「俺だって、童貞じゃないさ。」

その上

「初めては高校1年の夏で、それからしばらくしてやってるとこ弟に見られて。親にはしこたま怒られた。」

意外な言葉を聞いた。

「俺は普通の男だから。」

そう言いながら、俺の首筋に甘く吸い付いた。

「愛してる人の事ばかり、考えてしまう。」

その腕の中で揺すられながら、

「絵里子さんの休みの日に、改めて挨拶にいこう。」

って言ってくれた。


 赤ちゃんができてたら、学校行けなくなるなって思った。でも兄貴が許してくれるなら、というか、できたらやっぱり産みたいし。

 俺はまだ子供だから。子供が子供産むって反対されるかもれないけれど。でも、多分大丈夫。この人は俺を一生守ってくれる、そんな気がした。

 この人の赤ちゃんだっこして

『おかえり。』

なんて言いながら暮らす毎日って、どんなだろう。

 

 兄貴に寄り添いながら、基の事を思い出していた。あいつの腕の中で何回も達した。動物って、本能に勝てないって思い知らされた。好きでもない男に抱かれて感じる事が惨めだった。

 でも、違う。

 兄貴と交わすキスの方が何倍も良い。奇妙な話しだけれど、それだけで自分の躯にスイッチが入った。彼を迎え入れたい。その準備を始め、何もかもが潤った。でもそれはとっても嬉しい感覚で、女でいる事がとても良い事だって思えた。それに何よりも終わった後に心があったかくなった。

 それは基としていた快感だけのセックスなんかとはまるで違っていた。 


「もうそろそろ。」

時計の針は4時を指していて。後一時間で約束の時間だった。

 兄貴に関係するものは何でもそう、気持ちいい。このベッドもそうだ。このまま根っこが生えそうになるくらい素敵だった。だから

「行かないと。」

本当に離れられなくなってしまう。

「ずっとこのままこうしていたいなぁ。・・・・時間が止まれば良いのに。」

未練がましい俺はもう一度兄貴の匂いを吸い込んだ。

「ここにいても良いんだよ。」

ふざけながら返され、兄貴が俺の代わりに基に話しをつける気が有るって事感じた。

「それは、駄目。」

兄貴の優しさにつけ込んじゃ駄目だよ。

「必ず戻ってくるから。」

その時まで、待っていてくれる?ねぇ、お願い。戻って来た俺の事、喜んでね。


 基を待つ為に二人でリビングに戻った。もちろんミルクティは冷めているから。

「何か飲み物でも入れようね。」

彼はコーヒーメーカーをセットした。俺は少しでも兄貴と離れるのが辛くって、その背中に寄り添っていた。

「甘えん坊。」

彼が笑うから。

「うん、そう。」

ってシャツ越しに背中を引っ掻いてやった。

「俺、放っとかれると寂しくって死んじゃうかもしれないよ。だから、ねぇ、独りにしないでね。」

すると兄貴は困った顔で振り向いて

「馬鹿な事言うんじゃない。」

ってたしなめた。それから

「君がいなくなってしまったら、僕がどうなるか考えて言っているのかい?勇利は僕がどうなっても平気って事なのかな?」

なんて、意地悪を言いながら抱きしめてくれた。


 コーヒーが出来上がるまではほんの少し時間があって。俺たちはもう一度ソファに戻ってキスをした。


 空気の入れ替えられたリビングは一瞬肌寒かったけれど、すぐに二人の熱で温かくなった。


                  Left Alone   つづく





できるだけ早く、予定の修羅場も書き上げます!

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