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くっころの騎士団と枢軸の魔術師  作者: Tand0
Saga 6: やせいの王女さまが現れた!
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武闘会(しずおか(前編

 唐突に始まった武闘会開催の報に浮き足立つ薔薇騎士団であったが、


①仕切りが鳳凰騎士団であること、

②目的はヒメノ姫の将来の婿探しであること、

③アーカンソー王国の各騎士団からは1名男性だけを選出すること、

④助っ人は可能であること、


などの事項が判明すると急速に熱が冷めていった。


 サクラの執務室で、サクラは騎士団のくノ一のシノを除く部隊長3人と魔術師、それに妖狐を集めて相談を始めたが結果は芳しくない。


「これは――。我らが薔薇騎士団に対する当てつけなのでしょうか?」


 (いきどおる)るのはエルフのエルだ。

 騎士団のせっかくの見せ場だというのに、参加資格が男性のみというのが気に食わないらしい。

 薔薇騎士団の他の一般女性騎士のテンションが低いのもそのためだ。

 自分に参加資格がないというのはすこぶるモチベーションを下げるものらしい。


「おねぇさまの婿探しということであれば、切っ掛けは当然わたくしでしょうから当てつけという意味では間違っていないでしょうね。男性だけというのも納得できる理由だけど――」

「我々薔薇騎士団は女性しかいないと――」

「であれば――」


 助っ人は可能という、これ見よがしの抜け道に頼るしかないだろう。

 女性陣の視線が魔術師に集中する。


「俺は駄目だよ。ダメ絶対」

「理由は?」

「そのお姉ぇさまというか姫さんの婿探しが目的なのだろう? そんなのに出場して優勝したら、その姫さんに目を付けられて近衛騎士団入りとかNTRとかまっしぐらじゃん。俺はそんなのよりはサクラを選ぶぜさすがに。あの娘いい身体していたけど。こう出るところは出ていて――」


 そーだ、そーだと支援するのは妖狐だ。

 サクラは魔術師がその形状を身振り手振りで説明しようとするのをひっぱたいて止める。


「最後のがなければかっこいいのに全部台無しだよ、ソレ。しかし優勝するのは確定事項なのね」

「ふっ。四十八都道符拳は使用回数を使い切るまでは無敵だ」

「それ、ぜんぜん無敵じゃないじゃない」

「となると、まともに戦える殿方なんて、薔薇騎士団にはおりませんわ」


 そこで会話がとまる。振り出しに戻ってしまった。


 少なくとも騎士団として笑われない程度の強者は用意したい。

 女性しかいない薔薇騎士団だから男を用意できないのは仕方がないというのは分かっているだろうが、彼女たちからしてみれば鳳凰騎士団に対し不戦勝になるという自体がとても気に入らなかった。オジ・サーマキーノの笑い声が聞こえてくるようだ。


 そこに会話を終わらせるべく、新たな人が現れる。


「ただいま戻りました――」


 しゅたッ。という擬音が良く似合うくノ一のシノが現れる。

 薔薇騎士団第4の職種部隊。くノ一を操る忍軍の長だ。


「どうだった?」

「鳳凰騎士団を除くアーカンソー王国全ての公認騎士団に話を持ち込みましたが全て断られました」

「やはりか……。さすがは鳳凰騎士団。この手の手回しだけは一流だな」


 歯噛みするエルをサクラは宥める。

 が、何かひらめいたように顔をあげた。


「それならば最終手段しかないわね」

「最終手段ですか?」


 サクラは頷く。


「助っ人は可能だという。しかしそこにアーカンソーの国民でなければならないという制限はついていない、ということは?」

「まさかっ、助っ人外国人の手を借りるというのですか! しかしそもそも海外にそんな人脈があるというのですか?」

「ほら、ついさっき行ったじゃない」

「まさかのオーストロシア!」

「確かにウィンター将軍に任せればオーストロシア帝国最強でそれなりの地位の人間を招聘することは可能だと思いますが……」


 そのとき、彼女らは知らなかった。


 オーストロシアで最強は誰なのかと。

 オーストロシアで無類の格闘好きで、国内のあらゆる武闘会を総なめにした筋脳は誰なのかと。

 そして、ウィンター将軍がどんだけアクティブなのかということを――




「どうやらオーストロシア帝国のウィンター将軍はどうやらアーカンソー王国の婿探しの武闘会にでるらしいですな」

「それは好機だな。ウィンター将軍のオーストロシアなど、ルーのないカレーのようなもの」


 オーストロシアから見て東、アーカンソーから見れば北東にある王国。

 その名をエクスカリバー王国。その一室で騎士達は密談を交わしていた。


「陽動だ。少数精鋭を持って鳳凰騎士団に接触せよ。腕利きは一人でいい。助っ人外人枠として送り込んで我らエクスカリバー王国も大いにその武闘会なるものに関心があり、注力しているように思わせるのだ」


 エクスカリバー王国の国王は矢継ぎ早に指示をしていく。


「決してオーストロシアには感づかれるなよ」

「拝命いたしました」

「それからひそかに常備軍を集めておけ、一般農兵等を招集すると気取られる可能性もある。召集する場合は攻める瞬間だ。一気にやれよ」

「それは承知しております」

「今度こそ。今度こそエクスカリバー王国がやつらの地、クリミパースを奪い返す。今にみておれー。剣ではなく、拳で世界を謳歌する馬鹿者達に鉄槌を! 我らの剣戟でオーストロシアに勝利を!」

「勝利を!」


 騎士の唸り声。

 そこに批判するものなど誰もいない。

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