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くっころの騎士団と枢軸の魔術師  作者: Tand0
Saga 5: くっころの騎士団と枢軸の魔術師
32/52

急転(なら/しが/ぎふ(前編

「エル・エルブズ! カーラ・ナポリターノ! ヒラリー・ヴェネチアーノ! そしてシノ! 各職種部隊長をわたくしの権限で召集します! それから各自点呼を行って、いない人がいないか確認して! それから私のだんな様――じゃない庭師オーカ・スターシーノを叩き起こして連れて来て! 速く!」


 寝室をネグリジェの姿のまま飛び出したサクラはすぐさま薔薇騎士団4職種部隊長と、魔術師を呼び出す。


「主君! これはいったいどういうことです! ――っ。まずちゃんとした服を着てください! 命令さえ受ければ後は我々が動きますから。殿方(オーカ)が来てしまいますよ」


 乱れたネグリジェは少女とはいえ扇情的にすぎる。

 最初に来たエルフの女騎士であるエルはサクラの姿を見るなり、寝室にサクラをおいやろうとする。


「オーカならわたくしの未来のだんな様なのだから見せるのがちょっと早くなるだけよ。構うものか! 逆に見せ付けてあげるわよ。それより早く点呼を急ぎなさい! 誰かがあのキーワードを言ったはずよ。そこで何か問題が発生したみたい。ヨーコと私の召喚契約による心の繋がりが切れた。きっと魔術的な結界陣よ。ヨーコに何かあったら……」


 そこに自分のところに妖狐がいないことを知っている魔術師が駆けつけてきた。


「ならばキーワードを使って呼び戻せばいいじゃないか、『くっ……、殺せ』」


 魔術師はキーワードを唱える。

 当然のように何もおきなかった。


「くそう。やっぱ男じゃだめか。これは庭師のような偽者ではなく、ホンモノの薔薇騎士団の女騎士でないと駄目だな」


 魔術師はエルを見つめる。

 そしていきなりエルを突き飛ばした。


「エル! 言いなれていると思うがあの言葉を叫べ! 言わなければ衆人環視の中、すんげーエロイことするぞ!」


「くっ、殺せ」


 キーワードによる召還の魔術(イベントドリブン)には本当のシチュエーションを感じさせる演技が重要だと理解したエルは、心をこめて侮蔑をこめながら魔術師を睨み付けた。

 実際、魔術師は嫌らしい目つきをしていた。


「もっとなまめかしく!」


「くっ……、殺せ」


「もっとオーガに襲われた若いエルフの女騎士の薄い本みたいに!」


「くぅぅぅ、殺せぇぇ!」


「――だめか。ここまでやって帰ってこないとは、やはり魔法的な阻害が掛かっているか、ヨーコが気を失っているか……」


 まじめに考えている魔術師に対し、サクラは無言でスリッパを手にすると、容赦なく魔術師の頭をスパーンと引っぱたいた。


「いてぇ」

「4職種部隊の長。集合しました」


 そんなやりとりをしている中、第1から第4までの薔薇騎士団全職種部隊の長が集まる。


「こほん。ではエル・エルブズ。第一主力部隊の動向はどうだ」

「いま確認中です。しばらくお待ちいただきたく。しかし今週は先日のオーストロシアへの進軍のこともあり、部下には休暇を取らせています。討伐等の危険なことはやっていないかと」


「ではカーラ・ナポリターノ。第二強襲部隊の動向はどうだ」

「同じです。今週は全員非番にしておりますが、それだけにどこかに行かないとは限らないところが」


「ではヒラリー・ヴェネチアーノ。第三魔術師部隊の動向はどうだ」

「今確認中です。しかしヨーコ様のことであれば情報が。あの方の魔力は非常に大きい。その大魔力が東の方に消えていったことを私が確認しており、継続して調べさせています。それから本日、東の方面に向かっていたものはおりません」


 さすがは暁の銀騎士(シルバーウィザード)と称されるヒラリー。

 既にヒラリーは妖狐の動向を一部掴んでいた。



「ではシノ。第四くノ一部隊の動向はどうだ」

「東と――言うとこちらの腕利きが鳳凰騎士団に行っていますね……」


 それを聞いてサクラは悩む。


 鳳凰騎士団。それはアーカンソー王国の男性で組織される騎士団だ。

 常にお飾りと見なされる薔薇騎士団とは違い、アーカンソー王国の主力部隊であり、そこに下手に敵対行為を取れば反逆者と呼ばれる可能性もある。前回はサクラが襲われたが「平民と結婚しようとする愚かな貴族の小娘を更正させるのだ」といえば言い訳が立つ。今回、こちらか攻めるとしても大義名分がない。


「いるとすればそこでしょう。ここから東にある鳳凰騎士団の本陣は太古の昔、魔王の徒と呼ばれる超常の人物が都市規模の(トラップ)を仕掛けていたと聞きます。それで大規模攻勢魔術を耐えたこともあると。その罠を発動できるものが鳳凰騎士団の中にいればあるいは――」


 暁の銀騎士(シルバーウィザード)、ヒラリーが補足した。



「前回のとき、わたくしは鳳凰騎士団から簡単に逃げられたのだが、なぜ今回に限ってそんな準備ができたのでしょう?」


「それは私が阻害をしていたからです。突発な短時間維持で相手にもたいした事前準備がないのであればそのくらい可能です」


「いまは相手に準備があると。こちらの妨害もない。困ったな――」


 およそ3時間後、第四くノ一部隊の一人、鳳凰騎士団を諜報しているシルバーナとの連絡が付かず、失踪していることが確定する――

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