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くっころの騎士団と枢軸の魔術師  作者: Tand0
Saga 5: くっころの騎士団と枢軸の魔術師
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くっころの騎士団と≪砂丘≫トトリー(とっとり

 猫耳の少女――ドーラは告げる。


「電波系の力をキャッチしました」


 熊のような大男――エセネアは答える。


「うむ。待ってたぜ。この瞬間を――」


 それで? と熊のような大男は続きを促す。

 猫耳の少女は慌てて手前の水晶球を操作した。


 2人のいる場所は≪砂丘≫トトリー。


 ――その昔。異世界(にほん)からこの世界(アジア)に出現した数々の魔王たち。

 その魔王はこの≪砂丘≫トトリーという今でも天空に浮かぶ空中庭園までも用意できるほど強大な魔術の持ち主であり、地元民を永遠の生を持つ≪魔王の徒≫に作り変えるなどして世界に数々の変革をもたらした。

 だがそれは数年も続かず、魔王達は世界から撤退し、残された≪魔王の徒≫達は世界を何度も蹂躙。破壊された大地を避け庭園に逃げ込み一旦封印した2人と1柱以外同士討ちを続けていき、最後には誰もいなくなっていった。それが約500年前だ。


 猫耳の少女は空中庭園を制御する水晶球を操作し、索敵システムから電波系の力がどこから来て、どんな電波な内容なのかを解析していく。


「出現箇所は、アーカンソー王国。出現したヒストリカルブラックは――、え!? (ヒストリカル)歴史書(ブラック)――四十八手の指南書!?」


「な、なんだと――」


 そう、魔王の徒はすでにこの世界(アジア)にはこの2人しかいないが、魔王達が残したマジックアイテムはまだ世界の禍根として幾つか現存しているのだ。再び悲劇をもたらさないように、世界を破滅へと導かないように、それを回収することが今の2人と1柱の目的。


 魔王の徒がもたらしたマジックアイテムには生産職が製作した強力な武具、たとえば聖剣エクスカリバーなどがあるが、それよりさらに強力な魔導器が存在する。それがヒストリカルブラックだ。

 ヒストリカルブラックにはさらにいろいろな種類がある。たとえば膨大な魔力を持った東部黒鉄器の錫杖(なまくら)、十万のイカヅチを総べる星降る(ぴかぴかの)光の剣、1912年に新造された豪華客船であっても一撃で沈没させることが可能な氷河の(つるぎ)、叩いた敵の性格を歪ませるZ8141:2001(ファイブ)-5603(スター)約束された鉄板の笑い(ハリセーン)、などなど――


 その中でも(ヒストリカル)歴史書(ブラック)と呼ばれるシリーズは魔王の想いが形になった、いわゆる「何でもアリ」の魔導書だ。


 それら千差万別な魔導を回収するにあたり、事前の情報は不可欠だ。調べるには膨大な時間が掛かる。


 しかし、2人には(ヒストリカル)歴史書(ブラック)の、その「四十八手の指南書」と呼ばれる名前に既に聞き覚えがあった。

 なにしろ今ここに住む、天空に浮かぶ大地たる空中庭園。≪砂丘≫トトリーこそはこの魔導書によって作られたのだ。知らないはずがない。


 最後にヒストリカル・ブラックを回収してから早10年。


 あの時は所有者にとても不幸な、不慮の事故が発生して回収するに至った。

 その氷の魔剣によって海に氷山を作るほどの世界改変を行った所有者に『なぜか』不幸にも突然現れた熊のような魔物が襲い掛かったのだ。

 改変直後の魔剣は魔力を使い切っており、襲い掛かる熊に所有者が立ち向かう(すべ)などなかった。


 と、不意に。2人の背後に魔力を感じ、猫耳と熊は振り返った。


「あぁ、あの子はいいわ」


 ≪瞬間転移≫で現れた美しい銀髪、狐耳、七尾の妖狐の女――ヨーコ・ナナビーノ。


 彼女は≪魔王の徒≫ではない。


 あの魔王群の襲来のあった100年後に再び戻ってきた、たった1柱のホンモノの魔人であった。


「僕はあの子の使っている四十八手の指南書がどのような物かは把握しているのです。アレは日本という異世界の大地を形象し具現化する恐るべき万能なる力」


「そのようなもの放置して……」

「でも問題ないのです」


 その魔人たる妖狐ですら「万能」という言葉を使うことに熊は驚く。

 そのようなものは世界(アジア)にあり続けてはならないものだ。


「日紀元前660年から時を刻み続けてきた、恐るべき(すべ)ではあるけれど、あれは結局のところ攻撃発動数が48しかないのです。しょーもないことに使い切らせればそれで終わるのです」


「そのようなこと、できるのでしょうか?」


「できるのです。だって、今あの子には私が付いているもの」


 猫耳の問いに狐耳の妖狐は自信たっぷりに答えた。


「そう、例えば……。『くっ…、殺せ』とか言ってるくだらねぇ女騎士を2、3人助けることを繰り返せばいいのです」


 そして、使い切れば彼は――、今度こそ私のものよ。

 と、妖狐は締めくくる。


「ほら、人間というものはより近くで観察した方が面白いでしょう?」


 いたずらっ娘のような笑顔を見せる妖狐。

 それはまるで、人間観察が大好きなゲームマスターのような魔の呪詛であった。

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