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くっころの騎士団と枢軸の魔術師  作者: Tand0
Saga 5: くっころの騎士団と枢軸の魔術師
29/52

復活する魔物たち(やまぐち/とやま

「なにこれ……」


 朝おきると部屋の外が騒がしいことに気づく。

 外に視線を飛ばすと、死んだはずの大量のルーミート達が土下座していた。


「なにとぞー。なにとぞそちらの魔術師殿にぃ――」


 ともかく薔薇騎士団の一行はルーミート達の話を聞くこととなった。


「ワシはルーミートの長。リノール・サーンと申します。この度は見事我々を復活させていただきありがとうございます」

「あー。別に君達死んだわけじゃなくて、我々薔薇騎士団の脅威を避けるため、一度死んだマネをさせていただけだからねぇ……」

「そうでしたか……」


 ルーミートの長の言葉に引きつったような顔を見せる妖狐。

 そこから妖狐達の仲間内でひそひそ話しが始まるのであった。


「どうやら島根拳(死マネけん)の対象になったのは我々だけではなかったようですわね」

「僕の東京都拳(とうきょうとけん)の攻撃範囲は結構でかかったのです。さらにさらに、放置しておけば世界の全土に広がりましたけどね!」

「うわぁー。さすが俺のヨーコ。大魔力でかっこいいねぇ(なでなで」

「こらそこ! 隙を見ていちゃつかない!」


 エルは頭を痛めつつ、ルーミートの長に来た要件を尋ねた。


「こほん。それで何用ですか? もしかしたら忘れているかもしれませんが、我々薔薇騎士団は、一応アーカンソーの貴族が有する私軍です。国にも属す軍であるからには魔物がここに来たのであれば討伐の対象としないといけないのですが」


 だが、無抵抗に土下座するルーミート達の首を刎ねるのも躊躇われる。


「そこの魔術師によって我々ルーミートの魔物一族は復活を――あぁ、死んだマネでしたか――を図ることができたのですが、問題は有機カリの森に住んでいたらーミートの魔物一族まで復活を遂げてしまったのです」


「よかったじゃねーか。それ」

「おめでとー」


 うんうんと祝福する魔術師と妖狐。


「しかし、有機カリの森は見事な青森スギになってしまったため、ラーミート達の食べるものが……」


 ぐ、っとそこで言葉に詰まる魔術師。


 確かにそうだろう。有害な有機カリであったとしても、それは人族にとってのみ。

 魔物にとってはそうではないのだ。


「しっかし、アオモリはもう使ってしまったしなぁ……、どうすれば森まで復活できる?」

「いや、そこは見返りをまず要求するところでは?」

「サクラの言い分はもっともだけど、やっちまったのは俺だからなぁ……」


 頭をぽりぽりと掻く魔術師に妖狐が張り付いた。


「じゃぁ、とりあえず行ってみましょうよ。ネタは行きながら考えるとして……」


 腕を組みながら旧有機カリの森へ行こうとする妖狐に、サクラは待ったを掛けた。


「いやいや。2人で行くとか無いでしょう。わたくしも行きますわよ」

「ちょ、ちょっと待ってください。主君が行くなら私たちも行きます」

「あー。そうか。ちょっとシノ!」


「ここにおります」

「うぉ。くノ一!」


 あらかじめ控えていたのだろう。

 黒装束のくノ一、薔薇騎士団第四職種部隊の長 シノが魔術師とサクラの前に現れた。

 魔術師はくノ一が突然現れたことにビビる。しかしそれは「くっ、殺せ」と女騎士が叫んだ瞬間に魔術師が現れてびっくりされることと大差はない。


「先行して旧有機カリの森へ行け。到着したらその後あのキーワードを言え。(ただ)ちに」

「承知!」

「では行け」


 号令とともに消えうせるシノ。

 現れたことと同様に消えることも突然であった。


「これで暫く待ちですわね……」


 これでかなり効率化ができるとドヤ顔を決めるサクラ。


「でも、そのパターンで現地召喚されたら行くのは俺とヨーコだけで、サクラは行けないぜ」

「あ……」


 その顔が恥ずかしさで真っ赤になるのに時間は掛からなかった。




「ということで、旧有機カリの森の山の入り口にやってきました」


 順調に昼にくノ一のシノに「くっ…、殺せ」というキーワードで召喚された魔術師と妖狐だったが、どうしたものかと首を捻るしかなかった。山の入り口で。


「山の入り口、山の入り口……、四十八都道符拳のうち、何を使えばこの広大な森を有機カリに変えることが出来るだろうか?」

「僕は普通に考えたら山口拳(やまぐちけん)だと思うのです。九州から本州への玄関口。≪砂丘≫トトリーのように空中庭園を造ってそこに草生やすとかどうなのですw?」

「空中庭園はさすがに俺の魔力が持たないのでは? 継続系なのだろう?」

「んー、オーカでは難しいかも?」


 魔術師と、妖狐は山の入り口で頭を悩ましたが、良い案は出てきそうになかった。

 ちなみにシノはここまで全力で忍者走りをしてきたため、体力の限界でヘロヘロと息を切らしており、とても深い思考ができるような状態ではない。


「とりあえず、山が付いている都道符拳ってなんだったっけ?」

「山形、富山、山梨、和歌山、岡山、山口。それから愛媛の拳超所在地が松山なのです」

「はぁーん。いいのがあるじゃねぇか!」


 魔術師は身構えた。そして詠唱する。

 それは四十八都道符拳が一つ。


富山拳(とやまけん)!」


 気合一発。叫び声と共に天空から巨大な土と岩が振ってくる。

 それらはあっという間にヒダヒダな山脈を形成し、そこに富んだ森を――有機カリの木を含む――造りだしていった。


「おー。ありがたやー。ありがたやー」


 何事かと現れたラーミート達は突然出現した有機カリの木々を目にし、涙を流しながら木々に走っていった。ま、元を正せば全部魔術師が悪いのだけれど。


「ところでシノくん」

「は、はい!?」


 突然魔術師に呼ばれビックリするシノ。

 何をする気なのだろうか。


「俺とヨーコはキーワード一つで戻れるが君は――、がんばってくれ」

「くっ……」


 ヨーコとサクラは意識が繋がっているため、事が終わるタイミングをサクラは分かるのだ。

 楽に戻り疲れた身体を休ませることができないシノはガックリと膝をつくのであった。

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