愛を知るもの(あいち/やまがた/にいがた(最終編
「はいはいはーぃ。僕は召喚されたのでーす」
「しっかし、うちの騎士団にはなんでこんなぽんこつしかいないのだ?」
唐突に出現する銀髪の妖狐の姿に周囲の将校は一歩後ずさり警戒する。
なぜこんなところに妖狐が? そしてナタリーははたと気づく。
「あぁぁぁーーー。しまったぁぁーーーー」
「蜂の罠作戦! だーい成功ぉ☆ミ」
ナタリーは頭を抱えしゃがみこんだ。
方便とはいえ薔薇騎士団に所属したという意識があるナタリーがキーワードを口にすれば何がおきるのか、考えればすぐに分かりそうなものなのに。
「もうやだぁ……、いっそ殺して」
「いやいや。殺さないよ。こんな可愛い娘を殺したら世界の損失じゃないか――」
さらに魔術師然とした男が唐突に謁見の間に現れると、ナタリーに慰めの言葉をかけた。それがナタリーに対して慰めになっているのか本人にしか預かり知らぬところだが。
「おおお、お主がエアーズの岩砦を陥落させ、有機カリの森を書き換えた魔術師だというのか?」
「いかにも。我はアーカンソー薔薇騎士団、庭師が一人。オーカ・スターシーノ」
左手に黒い表紙の魔術を鈍器のように手にする魔術師が答える。
瞬間走る魔術の痕跡。
それだけで周囲の将校は威圧におされ動けなくなる。
「そしてお前は――、魔人――、いやまさか、魔王ヨーコ・ナナビーノか」
「こんにちは。≪冬の≫将軍さま」
「なんだ、おまえら知り合いか?」
壊れたように座りしゃがみ震えるナタリーを無視し、魔術師は妖狐とウィンター将軍を見つめた。
「僕は何代か前の≪冬の≫しか逢ったことはないのです。だけど僕は――容姿でばれちゃうのです?」
「やはり魔王ヨーコ・ナナビーノだったか。魔王の中でもゲームマスターと呼ばれ、この世界に唯一残る最後の黒幕。それが率いる組織は――≪砂丘≫トトリーだったのだな」
「えぇそうなのです。ヒストリカル・ブラックの黒の歴史書を発見したので、すんげーてきとーにくっだらねーことに使い切らせて回収しようかと」
「氷河の剣と同じか――」
にらみ合う妖狐とウィンター将軍。
魔術師はそんな妖狐を賞賛する。
「うわぁー。真剣な表情で黒幕なヨーコも可愛いよ」
「オーカ。そこで注目するところはそっちなのです?」
呆れる妖狐の頭をぽんぽんと撫でる魔術師。
まんざらでもない表情の妖狐。
「じゃぁ俺も少しシリアスに行こうかな。さぁ降伏するがいい。オーストロシア!」
強大な魔力を発散させる魔術師。
謁見の間に魔力風が吹き荒れ、周囲の将兵たちはそれだけで吹き飛んだ。
「く……。こんなくっだらねーことでこのオーストロシアが滅ぶのか。いやまて……。そうだ。ヨーコ殿。何か助け舟はないのかね?」
「え!? なんで僕が≪冬の≫を助けないといけないのです?」
「えーっと。そうだ。アイス、アイスをおごってあげよう。それから、なんだっけ? ジューシーからあげ?」
「ぐ、ぐぬぬぅ」
魔術師は突然の買収劇に慌てた。
「ちょっと待てぇ、ヨーコ。そんなので釣られるな。お前誰の使い魔なのだよ」
「少なくともオーカのじゃないよ? マスターのだから」
「よし。食いついてきた。 先代から聞いた≪砂丘≫対策として用意すべき食い物――確かフライドチキンだったか……」
「じゅるり」
「こらぁー」
妖狐は、当初から意外にチョロインだった。




