くっころの柔肌砦(ぐんま(中編
魔術師と妖狐は、薔薇騎士団本陣への道を外れ北上していた。
「いやー、しかしうちの嫁さん、かわいかったねぇ。黒髪セミロングいいじゃない。胸もロリなわりには結構あったよな。ありゃぁ4年後が本当に楽しみだ」
「オーカはあの一瞬でよくそこまで見ているのです?」
「もちろん。だって嫁さんだよ嫁さん」
魔術師は頷く。
テンションはかなり高めだ。
「ははは。マスターはかなりドン引きでしたけどね」
「――ま、あれじゃぁな……」
確かに始めての出会いが全裸じゃ最悪だよね。と魔術師のテンションはみるみる落ちていった。
「まぁいいや。それでは障害排除、行ってみようか。一応庭師として雇われているのだし、掃除は必須スキルだよね」
「あ、見えてきたね」
二人の目標であるエアーズの砦はまさにそこへと迫っていた。
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「サクラ様、準備一切整いました。総員511名。揃いましてございます」
「うん」
薔薇騎士団が本陣シャーウッドの園。
エルフの女騎士エルの掛け声に応じ、騎士団を統べるサクラ・サバッキーノは立ち上がる。
周囲には思い思いの装備を身にまとう薔薇騎士団の面々。彼女らは4つの職種部隊に分かれていた。
第一の職種部隊は、騎士団の副長であるエルフの女騎士エル・エルブズを長とする主力隊。
第二の職種部隊は、白銀のプレートメールで統一された強襲隊。その長は全体の騎士団長でもあるカーラ・ナポリターノ。
第三の職種部隊は、ローブや軽装を身にまとい、弓矢や魔術を主に扱う支援隊。癖の多い彼女らを束ねるのは暁の銀騎士の二つ名を有するヒラリー・ヴェネチアーノ。ヒラリーはサクラの師であり、同系魔術の使い手だ。
そして第四の職種部隊は、シノを中心とするくノ一隊。隠密を主体とする彼女らの実態は謎に包まれている。
「エアーズの岩砦を破壊し、有機カリの森を平定。最終目標はオーストロシアを降伏させる」
集まった彼女たちにサクラははっきりと言い切る。
それはオジ・サーマキーノが言うとおり、やはり狂気の沙汰といってよいだろう。普通であれば。
「やはり、これはあまりにも無謀では?」
「ともかく付いてきてくれ。行けば分かるから」
「やはり、あの魔術師を使うので?」
エルにはあのキーワードを使うような事態に陥るのは簡単に想像できた。
だが。果たしてあの男一人でなんとかなるのだろうか。
「今から行われるのは国のためにはなるがはっきり言おう。これは単なる私闘であると! ところで聞きたいのだが我ら薔薇騎士団の存在意義はなんだ! 女の本懐を遂げることであろう。わたしは彼のことが好きだ。大好きだ。策は練ってある。ダメだったら直ぐに撤退する。だから、付いてきてくれ――。」
サクラは頭を下げ、女騎士たちは困惑した。