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くっころの騎士団と枢軸の魔術師  作者: Tand0
Saga 5: くっころの騎士団と枢軸の魔術師
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くっころのおんせいかい (ちば(後編

「いやー。気持ちがいいねぇ。ヨーコ」


「お背中流しましょうか、オーカ。僕はもっとのんびりしたいのだけれど」


「いやいや、いいよいいよ。ヨーコもくつろいで」


「ふあー」


 魔術師は岩を移動させて天然に湧き出る温泉のお湯を貯める場所を作り、そうして出来上がった風呂場にゆっくりと漬かっていた。完全に裸だ。

 一方の妖狐は装備をそのままに素足を晒し、足湯として寝転がる程度であった。だが、それでも気持ちのよさに目を細めている。


(さぁて、面白くなってきたのです)

(どこがよ。この確信犯さんめッ)


 妖狐はサクラと意識を共有しつつ、サクラと魔術師の状況、今後の展開を一人楽しんでいた。


「なぁ、ヨーコ。なんで今日は特になんでそんなに楽しそうなんだ?」


「オーカと一緒のときはいつも楽しいよぉー」


 妖狐はそれはもうニコやかな笑顔を魔術師に返した。



「今はだめッ!」


 エルフの女騎士であるエルが何か言おうとするのを右手で制するサクラ。


「ほら、知っているでしょう? 私達がたった2人でこんなアウェーにくるはずないって――。シノ! やれ!」


 突然窓ガラスが割られ、そこから白い玉のようなものが投げ込まれる。

 その玉は真っ白い煙を大量に吐き出し、煙はあたりを埋め尽くした。


「ごほっ。ごほッっ」

「いまどき煙幕かよ。なんと古めかしい」

「おのれ! 忍びめ! さすが汚い!」

「ヤツラが窓から逃げたぞ! 追え!」


 慌しく鳳凰騎士団の男性騎士達が動き出す。


「サクラ・サバッキーノを拘束しろ! 平民と婚姻しようなどという腐った性根を叩きなおしてやるのだ! 隣のエルフの女騎士は好きにしていい。行け!」


 男達はそれを聞き、我先にとサクラの後を追った。

 そうなってしまえば、2対1500。捕まってしまうことは自明の理である。


「はぁ、はぁ、はぁ……」


 息を切らしながら走るサクラとエルフの女騎士エル。

 騎士の日課として普段走りこんでいるエルとは違い、貴族であるサクラの体力では長時間の逃走は不可能だ。

 すぐに2人は男性騎士に囲まれてしまう。


 エルは新調したレイピアを振るいなんとか活路を見出そうとするがそれも簡単にはいかない。

 ちょっとした隙により簡単にレイピアを奪われ組み敷かれてしまう。


 もはやこれまでなのか。


「くっ、殺せ……」


 エルの声にサクラは「あっ」と声をあげるが、もう遅い。

 瞬間的にすっぱだかの男がいきなり転移してきたかのように現れた。


「そのセリフ、俺の方が言いたいぜ! くそがっ」

「いやーん。なんて時に呼ぶのです? (笑)」


 同時になぜか素足の銀髪の妖狐の女の子が現れ、前回と同じようにエルを助ける。笑いながらエルを組み敷いていた男性騎士は片手で排除された。さすが魔人だろうか。小柄なのにかなりの腕力だ。正確には魔力の篭った腕だが、男性騎士は簡単に吹き飛ばされた。


 全裸の男、おそらくは魔術師は顔を真っ赤にしながら挨拶とばかり不思議な呪文を叫んだ。それは四十八都道符拳が一つ。


「こんに千葉拳(ちばけん)!」


 恥ずかしさを隠すように右手で大地を叩く。

 しゃがんだことで男の中央にある棒がそれで隠れた。

 叩いた地面からはまるで名産の落花生のように砂利(じゃり)が飛び散り、飛び散った砂利(じゃり)はなんと千葉県の地図を形象するような赤い身体のマスコット、黒い鼻の悪魔となって男性騎士どもに襲いかかる。

 襲われた男性騎士はまるで柏モチのようにモチモチにされてしまった。それは恐るべき魔法のチカラだ。


「ふっ。これはアイサツ代わりだ!」


 パンツだけは死守したHENTAIが一人。

 それはシャキーンという装備音が聞こえてきそうなほどギリギリのタイミングであった。


「殿方のは始めてみますわね。でもでもお婿さんのだからいいのかしら?」

「私はお嫁に行けなくなるわ」


 だが、ちょっとだけ間に合わなかったらしい――



「逃げられましたな」

「な、なんなんだアレは」


 崩れ落ちる鳳凰騎士団の本拠地の中、オジ・サーマキーノは叫んだ。


「おそらく、あれが薔薇騎士団の隠し玉なのではないかと」


 フォローする老齢の騎士は、だから手をだすなと言わんばかりの視線を向けつつもオジ・サーマキーノに対し答える。


「被害は!」


「重軽傷者合わせて約700。死者はありません。物理的な被害は僅かとはいえ、人的には壊滅的な被害です」


「おのれー。薔薇騎士団めぇぇ――」


 オジ・サーマキーノは始めて本気の殺意というものを知った。

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