ゼンタイって美しいわ
真美子が持ってきたゼンタイの写真集はとにかく異彩を放っていた。普通女の子の写真集といえば可愛いかセクシーな衣装、そしてアイドルや美人と言った顔やルックスを持っている体型の女の子というところが普通だろう。しかし、このゼンタイの写真集に出てくる女の子(後でわかったけどアラフォーの美魔女も含まれていた)は顔はわからないし人間の肌の色もわからない、ましては年齢すら判らない。にも関わらずゼンタイで彩られることで人間ではない何かに美しく変身しているのだ。
彼女ら、いや正確には男性ゼンタイとのカラミも少しあるのだが、それらの姿は色とりどりのゼンタイに覆われることで背景の風景にオブジェとして存在することが許されるのだ。似たようなものとしてはマネキンがあるが、あれは顔は人を模したものであり人間の姿を写した人形である。
しかし写真集にあるゼンタイ姿の人物は、生物的であるのに非現実な色彩である。またオブジェのようであるが中には生きた人間が入っているという現実がある。いわば人の世界の風景なのになにか違う世界の風景であるかのようであった。
泰子は一瞬であったが両親のゼンタイ姿を目撃していた。その姿が写真集を見たことで甦ってきた。なんてゼンタイは美しいことだろうかと。これから後、泰子はゼンタイの世界に引き込まれていくことになった。