ゼンタイ写真集があるのよ
暇を弄んでいる泰子のもとに真美子は一冊のブックカバーに包まれた本を持ってきた。その本は大判でソフトカバーのようだった。普通、入院患者のお見舞いといえば花かお菓子が相場であるが、まだ手術してから三日目なので固形食は食べれなかった。
真美子は「とりあえずこの写真集を見て」といってページを開いた。するとそこには綺麗なプロポーションの人間らしい何かがポーズをとっていた。それはゼンタイに包まれた女性だった。
「これはねえゼンタイの写真集なのよ。昨日見せた”ワールドペディア”の写真だけじゃ良さは判らないと思って、前にミシシッピー・ドット・コムから購入したのを持ってきたのよ」というではないか。この言葉を聞いて泰子はもしかすると真美子も所謂ゼンタイフェチなのか? という疑問が浮かんできた。
真美子は中学時代からの友人であったが、昔から変な趣味があった。着ぐるみがすきなのだ。だから着ぐるみショーに何回もつき合わせられたこともあった。その理由について最近聞いたら「変身願望があるってことよ」といわれた。どうも彼女は叶えられない変身願望を見ることで託しているのかと思っていた。
後日、泰子はそのようなゼンタイフェチの真美子のために、とあるイベントに付き合わされる事になるのである。この時見せられたゼンタイ写真集が泰子が別の世界に入るアシストをしたのだけは間違いなかった。