あの夢なんなのよ
この日、両親は仕事が忙しかったし、弟も高校受験で塾の合宿に行っているため、泰子が入院している病院にお見舞いに来る家族はいなかった。彼女は他の患者と相部屋になっていたが、ほかの入院患者は中年以上だったので特に話をすることもなかった。
消灯時間が過ぎ、眠れない泰子は昼間の真美子の言葉をまだ考えていた。たしかにレオタードもゼンシンタイツも同じような生地であるのは間違いなさそうだった。しかもどちらも身体を包みそのボディラインを浮き出させるのに変わりはなかった。そのため両者は包む度合いが違うだけで同じではないかとも思い出していた。
そう思っているといつの間にか眠りに落ちていた。その日、夢の中ではあの晩の続きのような夢を見ていた。それは泰子が両親の寝室の前に来たところから始まっていた。
全身がレオタードに覆われた両親に介抱されていた泰子の腹の痛みが治まったが、依然として両親はあの衣装のままであった。その姿は声以外では自分の両親とも気付かないものであった。それにもかかわらず泰子はなぜか安心しきっていた。
すると両親は泰子が着ているパジャマを脱がし始めたじゃないか! そのあまりの行動に驚いたが体は動かなかった。さらに下着まで脱がされ一糸纏わぬ身体にされたうえで、レオタードみたいなものを足の先から入れられてしまうではないか。この二人は私をどうするかと思っていると、徐々にあのレオタードで身体が締め付けられる心地の良い感覚に襲われた。
ここまでは過去に経験したことであるがその引き締まる感覚が頭を覆うと息が出来なくなってしまった。それであわてているとママが「大丈夫、これであなたもわたし達と同じゼンタイ界に入ったのよ。これからずっとあなたはこの快感の中を生きていくのよ。もう元には戻れないわ」というではないか。
「わたしって、これから変態になるというわけ? いったいなんなのよ、この夢は? 」と夢の中で泣き叫ぶ泰子であった。