こうやってスリスリしていたのよ
泰子の母・美智代はその質問の答えに窮していた。娘も薄々気付いていることでもあるだろうが。子供の時に「ねえ赤ちゃんって、どうやったら出来るの? 」という質問なら、幼ければコウノトリが運んできたなどという古典的な逃げも出来る。しかし泰子はもう高校生だし今頃は性教育でその程度の知識はあるだろう。
しかし夫婦であの晩やろうとしていた事は一般には”アブノーマル”なことに他ならなかった。しかし今それを説明したら、折角ゼンタイに目覚めた泰子が敬遠しかねない事だった。そこで一部だけを教えることにした。
「あの晩、パパとママはこうやってゼンタイを楽しんでいたのよ」といって泰子のゼンタイに覆われた手を取って触りだした。そしてスリスリしながら言った。
「どんな感じ? こうやってゼンタイを着たもの同士が触りあうと素肌では味あえない感覚が得られるのよ。ゼンタイを着てこうやって触ったりハグしたりしていたのよ」というのである。泰子は想像していたものとは少し違っていたが、確かに今まで感じたことのない心地よいものであった。
そうやって黄色と赤色のふたつの女性の形をした何かがスキンシップをし始めていた。ふたつのシルエットは夕方までしばし変な別の次元に行っていたようであるが、それは突如終わりをつけた。玄関の鍵が開く音がしたのだ。
「ただいま! ママとお姉ちゃん帰っているのよねえ」という大きな声がした。弟の真司が思っていたよりも早く帰ってきたのだ。美智代は手馴れた手つきでゼンタイを脱いであっという間に昼間に着ていた服に着替えた。しかし泰子は脱ぎ方がわからないので頭をはずしたところまでしか出来なかった。
「泰ちゃん、あなたはね自分のベットで寝ておきなさい。真司には気分が悪いから寝ていることにしておくから。どうせあの子はゲームでもしているだろうから、その時に脱ぎ方を教えてあげるから」といって泰子は自分の部屋に押し込められてしまった。首から下はまだ真っ赤なゼンタイ姿だった。




