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このゼンタイわね

 泰子は水着のサポーターだけを下腹部につけて二階にある母のアトリエにやってきた。そこには母の美智代が待っていた。ここは掃除を手伝いに入ることも少なく中まで入ったことはあまりなかった。この部屋には美智代が描いた子猫を題材にしたものや風景などの油絵などが架けられていたが、奥のほうに油絵によって死角になっているところがあった。よく見るとそこにはゼンタイ姿の妖艶な女性が描かれたアクリル画がいくつも置かれていた。


 「実はね、私の作品で一番売れているのはゼンタイ女の絵なのよ。もしよかったら今度あなたをモデルに書きたいと思っていたのよ」というではないか。泰子は少し引いてしまったが、取りあえず待ちに待ったゼンタイを着せてもらうほうが先だった。


 「もしかすると知っているかもしれないけどゼンタイの着用方法を教えるわね。着用方法には色々と種類があるけど、今日用意したのは代表的なものだからね」といって美智代は手に真っ赤なゼンタイを持っていた。泰子がこれから着るゼンタイのようだった。いよいよ泰子がゼンタイの洗礼を受けるというわけだ。


 「まず背中のチャックを開けます。チャックは上下に付いているのでしっかりと端まで寄せてね。それと迂闊に足や手などを引っ掛けるとチャックが壊れるから丁寧に扱ってね。そして背中の入り口から足を入れて腰まで入れたところで手を入れます。それでそのまま直ぐに頭を入れても良いけど、すぐ被らない時は下のチャックを背中の途中まで上げてもいいわ。そして頭に被ったところで上のチャックを閉めて着用完了というわけ。言葉で説明するだけでは判りにくいからこれから見本を見せてあげるわ」


 そう美智代は、手本だといって自分もゼンタイを娘の前で着るのだという事を言い出したのだ。

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