ママ、あの姿は一体なんなのよ!
真美子がゼンタイの写真集を持ってきた理由はずばり”同志”を得ることであった。つまりはゼンタイを一緒に着てもらえる仲間だ。そもそもゼンタイのようにフェチの分野とされるものの愛好家を探すのはネットが進んだ現在であっても難しい。いたとしても「エロ」方面に嗜好が向いている場合が多い。
彼女としては、あくまで大道芸人のようにパフォーマンスとして一緒にゼンタイを着てくれる仲間が欲しかったのだ。だからこそ、脈があると思った泰子にアタックをしたのだ。だが、そんな彼女もまだゼンタイというものに触れたことはなかったのであるが。
それはともかく、いつの日かチャレンジしたいという気持ちだけはある真美子であったが、それが実現するのはもう少し後のことであった。泰子にあの写真集を置いていった。
辺りが暗くなり面会時間が終わる間際になって母の美智代が見舞いに来た。いくら深刻なものではない盲腸とはいえ娘が入院している病院に来たのは三日目にして二回目であった。いくら柄の展覧会の準備が忙しいとはいえ、少々薄情ではないかといわれても仕方なかった。
「ごめんね泰ちゃん。あなたを一人ぼっちにして。退院したらみんなで一緒に寿司を食べに行きましょうね。それとパパだけど明日、出張から戻ってきたらすぐ来るそうよ。パパもごめんと伝えてといっていたよ」といって、枕元の整理を始めた。すると、あのゼンタイの写真集を手にとったところで固まってしまった。
「それねえ、部活友達の島本さんが持ってきたのよ。あの晩、パパとママの姿と一緒でしょ。ママ、あの姿は一体なんなのよ! 教えてもらえないかな」
娘の言葉に対し返答に窮する美智代であった。




