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伝説~裏切りの民~




 これは誰の望んだ現実か


 誰の願った幻想か


 時代の流れは


 時に変化を見せつつも


 円を描くかのように


 巡り巡って


 同じことを繰り返す


 だがしかし


 同じことを繰り返しても


 同じ結果が得られる訳ではなく


 同じ結末を迎える訳ではない


 だからこそ繰り返す


 違う結末を得るために


 自らの望む未来を手にするために


 世界に存在する全ての生き物は


 時に手を取り 時に諍い


 時に相争い 時に譲り合い


 数を増やし 時には減らし


 栄え 滅びる


 誰にも流れる時を止めることは出来ない


 繰り返される歴史


 されど同じものは何一つ無く


 しかし同じ結末を迎えることもある


 なればこそ抗うのが生き物たちの性


 だが心せよ


 流れる時間は無限にあれども


 地上に生きる者達に与えられた時間は


 みな等しく有限なのだ





 限りある時の流れの中で


 人間は力を持たなかった代わりに知恵を得た


 知恵を使い技術を磨いた


 技術で得た力でもって他を淘汰しつつ数を増やした


 そしてある日


 人間はあることに気付いた


 たとえ持つのが小さな力でも


 卑小な力の集まりでも


 集えば大きな力に対抗することができることに



 人間の暴挙は止まらない


 暴走は誰にも止められない



 人間は他の種族を飲み込み


 そして支配しながら


 領土を拡大してゆく


 支配する喜びに人間は驕った


 力ないゆえの鬱屈した思いを刃に乗せて


 全てを支配するべく人間は進行してゆく



 やがて人間は考え至った


 手にした力を用いれば


 <人>を滅ぼすことも可能だということに


 それは決して不可能ではなかった


 技術で編み出されたのは


 様々な道具の数々


 使い方次第では


 我が身よりも大きな存在をも打ち滅ぼすことのできる力


 <人>とは違う力を持ち得た人間は


 その事実に嗤い


 <人>に刃を向けることを決意する







 それは突然のことだった


 それとも当然のことと捉えるべきか


 人間は<人>に反旗を翻した


 だがそんな人間のあがきを


 空中に浮かぶ大陸に住まう<人>達は


 それでも人間に刃を向けること無く


 ただ静かに見つめ続けた


 それは全てを知るからこその選択



 そして<竜>と<魔>は


 <人>の意思を尊重し


 手を出すこと無く静かに結末を見守った



 終わりを迎える日は近い








 人間が何より憧れ憎んだ<人>


 だが天空高い場所に住まう<人>に


 如何にして刃を届かせるか


 あがき続ける人間の振り上げた刃は


 その恐るべき妄念のためか


 <人>の喉元まで及ぼうとしていた


 探し求める執念の果てに


 都市へと至る道を見つけ出した人間は


 歪んだ笑みを浮かべ


 研ぎ澄まされた刃を構え


 そして我先にと都市に押し寄せた


 濁った目をした人間たちに


 投げかける言葉は無駄でしか無く


 財を 命を 全てを


 無情に刈り取ってゆく


 得た力を容赦なく振り下ろした人間の


 愚行の果ての暴挙は輝かしき地を蹂躙し


 無情のままに全てを血に染め上げた







 ――それは一つの終焉


 <人>の住まう大陸の落下によって全ては終わったかに見えた


 だが都が落ちた瞬間


 世界を染め上げるほどの輝きが満ち


 一つの大陸を覆うほどの結界が築かれた


 結界が成されると同時に


 都市へと攻め込んでいた人間達は


 気づけば外へと弾き出されていた


 その後いくら足を向けても


 閉じられた大陸へは


 決して侵入することは出来なかった



 それは外からの干渉を絶対に阻む壁


 だがなぜこの時に結界が築かれたのか


 結界は誰が何のために成したものか


 真実を知る者は数多くなく


 真実を知る者は誰もが口をつぐんだ


 そして閉じられた大陸は


 再び静けさを取り戻した



 これ以後<人>は我が身を守る檻の中に住まい


 人間は決して手の届かぬ場所へと変わった大地に項垂れる


 そして後に


 人間が<裏切りの民(ジャフデ=ヴァーネ)>と呼ばれるようになったのはこの時から






 人間の為した果ての果て


 世界は変わらず動き続ける


 時は流れ


 落ちたる大陸の時代よりはるか未来


 過ぎ去った時間だけ全ては忘却する


 意味あるものも 無きものも


 記憶も 記録も


 全ては等しく忘れ去られ


 また朧気なものとしか残らない


 だからこそ伝説として語り継がれる



 かつて憎み憎まれた相手


 <人>も人間も区別なく


 種族も隔てる事無くテューアと呼ばれるほどの時が過ぎた


 だが時間だけは過ぎても


 閉じられた世界は変わること無く外界を拒む



 外界に住まう者達は


 見果てぬ地に憧憬を


 踏み込めぬ大地に羨望を


 夢を 希望を


 様々な思いを抱き待ち望む



 内界に住まう者達は


 過去の愚行を記憶するものもいまだ居るがゆえに


 外界に恐れを抱きながらも


 かつて空中の大陸より見下ろした


 果てしなく広がる大地と


 空の広さをを思い描く



 人々は夢見る


 いずれ解き放たれるであろう大陸の姿を


 踏み入れることの叶わぬ地を 光景を


 何時の日かその目に焼き付け 踏みしめることを








 移ろう時の流れの中で


 やがて変化は訪れる




 それは――


  閉じられた大地に住まう者達の物語




 長い時の中で動くことの無かったものに


 初めての訪れた変化


 それが一体何を意味するか


 果てに何を約束するのか




 そして――――


  物語はここからはじまる











 紡がれる<現在>の物語


 無情に流れ行く時間の中で


 物語の主人公たちは


 取捨選択し進んでゆく


 より良き明日へと続くために



 いずれ至る


  <未来>へと続くために――




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