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出航2

“ラーメンでも食べに行こうぜ”、とかいってみても南の反応が悪いから、本当に一体どうしたのかと思う。

「なぁ朱音、どうやら俺たち2人はつい数ヶ月前故郷を出発して以来船の上で過ごしてきた。そして略奪やら嵐だのを乗り越えてこの港にやってきた。そうだよな?」

「その通りじゃないか。何寝とぼけてるんだ?大丈夫か?」

「いや大丈夫じゃないのはお前の方だって。一体どうして海賊船がいる時代に、こんないかにも現代風の港があるんだよ。これ、俺たちが中学のときにのったフェリー乗り場だろ?まぁところどころ違うけど、どうしてこんなものがあるんだよ?」

「それは、なんでだろうな?・・・・ゆめ、だからか?」

「そうだよ。これは夢だ。実感がないのか?こんなにおかしいのに。」

南が不安そうに自分の顔を覗いてきた。

「やめろよ。大丈夫だ。わかってる。たまにはこういうこともあるんだ。南だってないわけじゃないだろうに。夢の途中までそれが夢だなんて気付かない。そんな夢だってあるだろ?」

「ないこともないけどな。でももしかすると俺は今、自分の夢で朱音を自分勝手に作りだしているだけなのかもしれないだろ。」

「理想通りに?」

「いや、そうでもないけどな。」

そうでもないなら、夢だと思わないでもらいたい。

「っ。人格は感じないのか?」

「わからないよ。ぼんやりとした感覚しかないんだ、自分についても。ましてや人のことなんて。」

「ふーん。それで俺は、南の中の朱音ちゃんなわけだ。」

「否定はできないだろ?」

「親方と俺の違いがわかれば簡単だよ。そんなことも、」

言いかけて後ろから声が掛かった。

「おーい。お前ら忙しいんだから、荷物ちゃんと運べ。久々の陸だ。羽を伸ばすのもいいが、商品を売りさばくのが先だ。じゃんじゃん売って、思い切り儲ける。わかったかー?」

がははっといかにも豪快に笑って見せるのが親方だ。

「あー、まんまステレオタイプだな。あの親方。」

「俺たちの想像力が足りないのか。」

どっちでもいいさ、南がぼやいた。

穏やかな海、かもめなんかもその辺を飛んでいて南に言われてみるとやはりこれは夢だった。途中から分かる夢だってあるさ、南は変なところで心配症なのだ。あまりありきたりな海に退屈さがないこともない。けれどいよいよ船が碇を下ろす間際にまで近づいたときに、それは起こった。

 ドンッ!船が何かに激突して大きく傾く。

衝撃に耐えられずに、自分と南はなすすべもなく甲板を滑った。むさくるしい仲間たちとぶつかって思わず目を閉じたが、船はそのまま傾いたまま止まる。

「どうした?」

見上げると自分たちの船の横にさらに柄の悪そうな海賊船が一体いる。あれが全力でぶつかってきたのだ。めり込んだ部分から向かいの船の船員たちが見えた。





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