18話 ナオエとホロウ
ベッドに座り腰に置いていた『頭』を持ち上げると、その唇からツッと糸が引かれ重力に負けて切れた。
いつも思う事だが首から下が無いのに、飲んだものはどこへ行くのだろうか?
「ん、ん~、のみひゅらい。んくっ、ん、欲しい、水」
片手で頭を支え、備え付けの鉄瓶を手に取りその注ぎ口をホロウに差し出すと、にちゃりと言う音と共に口が開いた。
濁った粘性のそれが、ホロウの口の中に存在している状況に興奮を覚えたがグッと我慢する。
こくっと音を出しながら水を嚥下したホロウが、ふぅと息をつくとまた口を開く。
飲んだ、という事を確認するとホロウの口内に手を入れて舌を指で引き釣り出し、そのままヌルヌルとした舌の感触を楽しむ。
舌に沿って指を口内に差し入れ、歯の内側や舌と顎の隙間をなぞり上げるとホロウがくぐもった声を上げた。
その直後、ホロウの頭がフルフルと震え硬直した後に脱力した。
それに構わずにしばらく口内の感触を楽しんだところでホロウの舌に吸い付くと、今度はホロウの舌が俺の口内に侵入してくる。
俺がなぞった場所を、そのままホロウが舌でなぞり返してくるのを受け入れつつ唾液を溜めてホロウへ流し込んだ。
ホロウがそれを飲み込んだ後、今度はホロウの口内へ舌を差し入れ満足するまで舐る。
心ゆくまで楽しんだ後に口を離すと、お互いの舌からその余韻が滴り落ちた。
「足りなくなった、魔力。もう一回」
「やはり大人数の移動は厳しいか。無理しなくても良いんだぞ?直接魔力を受け渡す方法も」
「嫌だ。良い、この方法」
「そうか、では頼むよ」
ホロウの絹糸のような黒髪を撫で、手で梳いているとその髪が俺に纏わり付いてくる。
ホロウが自らの頭を固定するのを待って、俺も自身に力を入れた。
優しく始まったそれは、徐々に激しさを増していく。
ホロウの舌の動きが分かる。
俺を楽しませるためだけではなく、自身も高みへ押し上げるかのような舌使いだった。
アンデッド特有の冷たさを持つ口内が、俺の熱で人肌へと温まっていくにつれ快感が増幅していく。
髪が俺に絡まり、その絹のような感触が心地よさをもたらすのを感じた瞬間・・・俺は全身から力が抜けていくのと同時に耐え難い快楽を感じた。
先程と同じようにホロウに水を飲ませ一息つく。
「ん、終わった。皆、移動」
「移動計画などは全てスリャに任せると伝えてくれ。・・・身体はどうする?」
「ダメ、恥ずかしがってる。それに食料運搬、移動中の。これから。残念」
「そうか、気が向いたらいつでも言ってくれ。俺も奉仕だけしてもらうというのも気が引けるしな」
「いってる、大丈夫。私も」
今更ではあるが、ホロウは何故か頭と身体でそれぞれに意思がある。
どちらもホロウ本人らしいが、性格に違いがあるのだ。
どうも身体のほうは極度の恥ずかしがり屋らしい。
・・・嫌われてるんじゃないと信じたいが。
「大丈夫。慰めてる、一人で。奉仕してる時、私」
俺の不安を察したのか、ホロウがフォローしてくれた。
しかし、そのフォローの仕方はどうなんだろうか?
唐突に俺の影が揺らめいたかと思うとガントレットに包まれた腕が伸び、ホロウの頭を掴み取りそのまま影に沈んでいった。
聞いていたみたいだな。
ギリッという音を立てて頭を掴んでいったが・・・どちらもホロウなんだ、大丈夫だろう。
多分。
この宿は人外の街にあるだけに、各種人外に対応した部屋の作りになっている。
俺が今使っているこの部屋は水生系の人外用の部屋で、通常のベッドとは別に水を流している水路が設置されている。
ベッドは四角い木の枠に藁を敷き詰めその上に麻のシーツを敷いたタイプ、水路は中型の人外が身体を沈められるほどの大きさだ。
この水路に張ってある水は近場の川から引かれている物と、転移装置を設置して海から引いている物がある。
簡易な濾過機能も付いているため、多少の汚れは流しても大丈夫になっているのが嬉しい。
勿論シアのためにこの部屋にしたのだが、今はシアはオーゼに話があると言う事で部屋には居ない。
その間にホロウの魔力回復をしていたのだ。
川の水路に布を浸し、それで身体を清めるとそのままベッドに横になる。
オーゼの傍には今シアがいるため問題は無いが、誰かしらが常に近くに居るのがベストだろう。
オーゼが女性だと言うのを考えるとシアに付いていてもらうのが一番か。
そんな事を考えているとペタペタという特徴的な足音・・・シアの足音が聞こえてきた。
ノックも無くそのままドアを開けたシアは開口一番
「オーゼを抱いてこい」
そう言い放った。
ストック切れました!
次回投稿はまたストックがたまり次第行います。




