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人類保全  作者: wwaabb
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第50話 終わりの手順

船は流されている。


もう“搬送”ではない。


“収束”。


理央が言う。


「進行率、63%」


速い。


確実に。


充が言う。


「ノズル二番、12%」


ほぼ終わりだ。


推進は意味を失っている。


氷室が言う。


「ライン外されたな」


誰も否定しない。


航田が前を見る。


何もない。


だが流れがある。


一点に向かって。


「行き先、変わりました」


主語はない。


だが全員理解している。


理央が画面を更新する。


・状態:排除処理中

・進行率:66%

・収束先:局所集約領域


棚橋が言う。


「集めてるんですね」


充が言う。


「一箇所に」


氷室が言う。


「捨て場だ」


のどかが言う。


「処分…ですね」


黒川が言う。


「いい」


低い。


「やることは同じだ」


それで全員が動く。


黒川。


「船を見る」


氷室。


「外、確認する」


充。


「電源、維持」


理央。


「記録、残す」


航田。


「流れ、読む」


のどか。


「体、見る」


棚橋。


「……持ってます」


ポケットを叩く。


それでいい。


船は進む。


いや、送られている。


前方。


“場”が開く。


空間ではない。


穴でもない。


ただ、そこにある処理領域。


理央が言う。


「エネルギー密度、上昇」


充が言う。


「吸われます」


全部。


電力。


熱。


構造。


氷室が言う。


「分解だな」


黒川が言う。


「だろうな」


棚橋が破片を取り出す。


小さい。


黒い。


最後の手段。


「やりますか」


黒川が言う。


「やる」


三条件。


押す。


揺らす。


電力。


全部揃う。


12N。


0.02Hz。


供給。


カチ。


硬化。


構造が歪む。


今までで一番大きく。


航田が言う。


「流れ、止まった」


一瞬。


完全停止。


充が言う。


「戻ってる!」


ノズル二番。


15%。


17%。


ほんのわずか。


だが回復。


理央が言う。


「進行、停止」


・進行率:71%


止まる。


沈黙。


いけるかもしれない。


その一瞬。


画面が変わる。


ログではない。


言語でもない。


だが意味だけが流れ込む。


・異常検知

・抵抗強

・処理更新


黒川が言う。


「来るな」


次の瞬間。


全部が来る。


圧力。


振動。


電力。


三条件。


最大。


0.0003%。


越える。


0.0004%。


未知領域。


氷室が叫ぶ。


「離せ!」


遅い。


船が鳴る。


音はない。


だが鳴る。


のどかが崩れる。


「……無理」


心拍。


完全同期。


0.02Hz。


航田が言う。


「……終わりですね」


黒川が言う。


「いい」


低い。


「十分だ」


「ここまで来た」


理央が記録を保存する。


「残します」


充が電力を維持する。


「最後まで出します」


氷室が壁に触れる。


「構造、分かった気がします」


棚橋が小さく笑う。


「それ、いるの」


黒川が言う。


「いる」


それで終わる。


船が崩れる。


壊れるのではない。


揃えられる。


境界が消える。


構造の一部になる。


最後に残るのは。


記録。


理央の画面。


・処理完了


暗転。




記録は存在する。


だが。


保存ではない。


通過。


・局所異常:解消

・非適合構造:再構成済

・資源配分:更新


それだけ。


判断はない。


評価もない。


意味もない。




さらに奥。


恒星側。


巨大なエネルギー流。


0.02Hz。


わずかな乱れ。


一瞬。


補正。


消失。


記録すら残らない。




観測はある。


だが認識ではない。


検知はある。


だが関心はない。




地球。


古い施設。


静かな部屋。


一台のモニター。


長く沈黙していた。


一瞬だけ。


光る。


ノイズ。


そして一行。


「到達記録 更新」


それだけ。


誰もいない。


誰も見ていない。


だが。


確かに届いた。


失敗だ。


また失敗した。


だが。


今まで届かなかった場所まで。


行った。


それでいい。


まだ。


続きはあるかもしれない。


誰も知らないまま。

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