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人類保全  作者: wwaabb
47/49

第48話 持っていたもの

船は流されている。


変わらない。


だが。


中身は変わり続けている。


理央が言う。


「進行率、34%」


静かに上がる。


止まらない。


充が画面を見たまま言う。


「ノズル二番、20%切ります」


19%。


18%。


削れているわけじゃない。


持っていかれている。


使われている。


氷室が壁を触る。


「完全に別物だな」


もう元の感触じゃない。


弾性が違う。


返りが速い。


「一体化してる」


誰も否定しない。


のどかが言う。


「体もです」


違和感が消えている。


呼吸が楽だ。


心拍が揃う。


50秒。


それが普通になる。


「これ」


小さく続ける。


「このままの方が、楽です」


危ない言葉だ。


黒川が言う。


「楽な方は、大体ダメだ」


短い。


それでいい。


理央が言う。


「境界、縮小しています」


画面に表示される。


変化しない領域。


さっきより小さい。


じわじわ。


削られている。


航田が言う。


「時間ないですね」


主語はない。


だが。


全員同じことを考えている。


全部揃う前に。


何かする必要がある。


充が言う。


「止めますか」


黒川は即答しない。


止められる。


だが。


止めた瞬間。


どうなるか分からない。


理央が言う。


「干渉は危険です」


「上限、まだ見てません」


オシナオスンのとき。


0.0003%。


あの先。


誰も知らない。


氷室が言う。


「でもこのままもダメだ」


現場の判断。


正しい。


棚橋がずっと黙っている。


ポケットに手を入れたまま。


握っている。


黒川が見る。


「何だ」


短い。


棚橋は少し迷う。


視線が泳ぐ。


言うか。


言わないか。


でも。


時間がない。


取り出す。


小さな破片。


米粒より少し大きい。


黒い。


理央がすぐに反応する。


「それ」


オシナオスン。


充が息を止める。


「持ってたんですか」


棚橋は頷く。


「……捨てなかった」


誰も責めない。


責める時間がない。


氷室が言う。


「同じ挙動するか」


理央が言う。


「条件が揃えば」


三つ。


押す。


揺らす。


電力。


黒川が言う。


「今、全部あるな」


誰も否定しない。


船全体がそうなっている。


なら。


ここでも。


起きる。


棚橋が言う。


「これ」


手の中で軽く押す。


柔らかい。


揺れに合わせる。


0.02Hz。


充が言う。


「電力、来てます」


勝手に供給されている。


三条件。


揃う。


次の瞬間。


破片が変わる。


カチ。


硬い音。


理央が言う。


「固定」


表面光沢が変わる。


弾性係数上昇。


小さい。


だが。


明確。


氷室が言う。


「完全に同じだ」


オシナオスンと。


棚橋が言う。


「じゃあ」


少し間を置かず続ける。


「これ、逆に使えませんか」


全員が見る。


黒川が言う。


「どうやって」


棚橋はうまく言えない。


だが続ける。


「向こうが使ってるなら」


「こっちも使える」


航田が言う。


「位相、合わせる?」


理央がすぐ理解する。


「逆位相」


充が言う。


「干渉させる」


氷室が言う。


「局所で崩す」


黒川が言う。


「できるか」


理央が答える。


「分かりません」


正直だ。


だが。


選択肢は少ない。


画面が更新される。


・進行率:38%


上がる。


止まらない。


のどかが言う。


「体、さらに揃います」


時間がない。


黒川が言う。


「やる」


短い。


棚橋が破片を握る。


「どこに当てる」


理央が言う。


「境界」


変化していない部分。


そこ。


氷室が動く。


固定。


押し当てる。


12N。


揺れ。


0.02Hz。


電力。


流れる。


三条件。


揃う。


その瞬間。


破片がさらに硬くなる。


そして。


境界が、わずかに歪む。


理央が言う。


「変化、確認」


均一化の流れ。


一瞬だけ。


乱れる。


航田が言う。


「止まった」


ほんのわずか。


だが確かに。


進行が鈍る。


充が言う。


「効いてます」


黒川が言う。


「続けろ」


短い。


だが。


次の瞬間。


全体の揺れが強くなる。


0.02Hz。


崩れる。


0.03。


0.05。


理央が叫ぶ。


「位相、乱れます!」


のどかが言う。


「心拍!」


氷室が言う。


「やりすぎるな!」


棚橋が手を止める。


破片を離す。


揺れが戻る。


0.02Hz。


安定。


沈黙。


理央が言う。


「……局所干渉は可能」


黒川が言う。


「だが」


充が続ける。


「全体が反応する」


航田が言う。


「繋がってる」


主語はない。


だが。


意味は明確だ。


この構造は。


一体だ。


棚橋が破片を見る。


小さい。


だが。


確かに効いた。


黒川が言う。


「いい」


短い。


「武器になる」


誰も否定しない。


理央の画面。


更新。


・進行率:41%


止まらない。


だが。


さっきより、わずかに遅い。


完全ではない。


だが。


抗えている。


棚橋が小さく言う。


「それいるの?」


今度は。


答えがある。


黒川が言う。


「いる」


短い。


それで十分だ。

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