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人類保全  作者: wwaabb
46/49

第47話 適用

船体が、わずかに沈む。


0.98。


0.96。


戻る。


1.00。


揺れではない。


調整だ。


のどかが言う。


「来ます」


声が低い。


理央の画面が更新される。


・次工程:適用

・進行率:24%


数値は淡々としている。


だが意味は重い。


充が言う。


「電源、引かれます」


炉出力は変えていない。


だが。


分岐流が増える。


0.0006%。


0.0008%。


0.001%。


細く。


確実に。


「勝手に持っていかれてる」


黒川が言う。


「止めるな」


即答。


「干渉する」


充は頷く。


「はい」


止められる。


だが止めない。


止めたらどうなるか、分かっている。


理央が言う。


「分布、変わります」


画面が切り替わる。


船体全体。


温度。


応力。


電位。


色が揃い始める。


ばらつきが消える。


「均一化が始まってる」


氷室が壁を触る。


「……硬さも変わってる」


さっきまでの金属の感触。


少し違う。


弾く。


返る。


「馴染んできてる」


棚橋が言う。


「それ、まずくないですか」


誰も否定しない。


理央が言う。


「外部構造と応答一致」


0.02Hz。


五十秒。


完全同期。


のどかが言う。


「体も」


全員が見る。


「違和感、減ってます」


さっきまであった圧迫感。


消えている。


楽だ。


だが。


それが嫌だ。


航田が言う。


「合ってきてる」


主語はない。


だが。


全員が理解する。


“向こうに”。


黒川が言う。


「どこまでやる」


理央が答えない。


分からない。


だが。


止まらない。


画面がまた更新される。


・適用対象:局所構造

・範囲:拡張中


船体外周。


さらに内側。


じわじわと広がる。


充が言う。


「推進、さらに落ちます」


ノズル二番。


24%。


22%。


「接続されてる感じです」


壊れているのではない。


使われている。


氷室が言う。


「交換できないな」


ぽつり。


「これ」


少し間を置かず続ける。


「部品扱いされてる」


誰も否定しない。


棚橋が小さく言う。


「……それいるの?」


答えは出ない。


理央が突然言う。


「境界、あります」


全員が画面を見る。


船体の一部。


色の変化が止まっている場所。


「ここ」


局所的に。


変化しない。


充が言う。


「電位、違う」


氷室が触る。


「硬さも違う」


黒川が言う。


「そこが境界か」


理央が頷く。


「完全に取り込まれていない部分です」


航田が言う。


「時間の問題」


短い。


のどかが言う。


「体も同じです」


全員が止まる。


「同期してる部分と、してない部分」


「まだ混ざってる」


黒川が言う。


「全部揃ったらどうなる」


誰も答えない。


理央が画面を見る。


更新。


・進行率:29%


上がる。


静かに。


確実に。


そのとき。


船体に、軽い圧がかかる。


押される。


12N。


理央が言う。


「圧力」


氷室が言う。


「押してる」


同時に。


揺れ。


0.02Hz。


そして。


充が言う。


「電力、引かれてます」


三つ。


揃う。


棚橋が固まる。


「……それ」


誰も動かない。


理央が小さく言う。


「オシナオスンと同じ条件」


黒川が言う。


「そうだな」


短い。


船全体が、わずかに硬くなる。


音が変わる。


コン。


高い。


氷室が言う。


「固定されてる」


約三十秒。


誰も動かない。


動けない。


そして。


ゆっくり戻る。


柔らかさ。


元に戻る。


沈黙。


理央が言う。


「……使ってる」


黒川が言う。


「だな」


充が言う。


「俺たちを材料にしてる」


のどかが言う。


「体も対象です」


航田が言う。


「設備の中」


主語はない。


だが。


意味はある。


棚橋がポケットに触れる。


何も言わない。


小さな破片。


あれと同じ。


だが。


スケールが違う。


理央の画面。


更新。


・次工程:適用

・状態:進行中

・進行率:31%


止まらない。


黒川が言う。


「いい」


低い。


「分かった」


短い。


「俺たちは今」


誰も続けない。


だが。


全員が分かっている。


船は流されている。


巨大構造体の内部で。


材料として。


処理されている。


そして。


まだ途中だ。


終わっていない。


むしろ。


ここからだ。

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