第36話 流れているもの
装置は動き続けている。
第二リング。
第三構造。
周期は安定している。
だが。
理央が言う。
「変です」
黒川が聞く。
「何が」
理央が答える。
「エネルギー量です」
画面を拡大する。
巨大設備の流路。
そこを流れるもの。
数値が出る。
充が言う。
「大きすぎます」
航田が言う。
「どのくらい」
理央が答える。
「恒星規模」
沈黙。
氷室が内部から言う。
「流路、見えます」
ライトが奥を照らす。
透明ではない。
だが。
何かが通っている。
波。
粒子。
流れ。
氷室が言う。
「黒川さん」
「はい」
「これ」
「配管です」
理央が言う。
「流路構造」
充が言う。
「ポンプがある」
航田が言う。
「じゃあ」
少し考える。
「何流してるんですか」
理央が答える。
「まだ分かりません」
だが。
一つだけ言える。
理央が言う。
「この設備」
「宇宙から何かを集めています」
黒川が窓の外を見る。
巨大構造体。
リング。
流路。
周期。
すべてが同じ方向を向いている。
黒川が言う。
「つまり」
理央が答える。
「巨大収集装置」
航田が言う。
「何の」
理央はまだ答えない。
データが足りない。
だが。
推定は出る。
理央が言う。
「エネルギー」
「恒星エネルギーです」
棚橋が言う。
「星の発電所?」
充が言う。
「規模が違う」
氷室が内部で笑う。
「宇宙規模の工場だ」
黒川が静かに言う。
「そうかもしれません」
装置はまだ動いている。
ゆっくり。
だが確実に。
遠くの構造がさらに動く。
理央が言う。
「まだあります」
航田が言う。
「どこまで続いてるんですか」
理央が答える。
「分かりません」
「でも」
そして言う。
「かなり遠くまで」
宇宙の片隅。
人類の船。
七人のクルー。
その目の前にあるのは。
遺跡ではない。
死んだ文明でもない。
まだ働いている機械。
そして今。
その機械の奥で。
さらに巨大な装置が。
ゆっくり。
動き始めていた。




