第35話 動き出した機械
リング装置は、安定している。
0.02Hz。
五十秒。
完全な周期。
さっきまでのわずかな遅れは消えている。
氷室が内部から言う。
「落ち着きました」
理央がログを見る。
「振動誤差、ゼロ」
充が言う。
「エネルギー流束、安定」
棚橋が小さく言う。
「ちゃんと直ったんですね」
氷室が笑う。
「たぶんな」
そのとき。
理央が言う。
「第二周期」
全員が画面を見る。
180秒。
新しい波形。
ゆっくり。
大きな波。
黒川が聞く。
「どこです」
理央が窓の外を指す。
巨大な壁。
その奥。
さっきまで動いていなかった構造。
巨大なリング。
直径、数キロ。
それが。
ゆっくり。
回転している。
航田が言う。
「回り始めました」
氷室が内部から言う。
「こっちも振動増えました」
理央が言う。
「第二装置です」
充が言う。
「連動してる」
黒川は窓の外を見る。
巨大構造体。
歯車のような配置。
今まで静止していた部分が。
順番に。
動き始める。
氷室が言う。
「工場みたいですね」
棚橋が言う。
「ライン起動」
充が言う。
「それに近い」
理央がログを見ながら言う。
「停止状態からの再始動」
航田が小さく言う。
「電源入れた?」
黒川が答える。
「部品を入れました」
遠くのリングが回る。
その奥。
さらに大きな構造。
ゆっくり。
角度が変わる。
理央が言う。
「第三構造」
航田が言う。
「まだありますね」
理央が答える。
「はい」
少し間。
「この設備」
そして言う。
「一つじゃありません」
氷室が内部構造を見る。
流路。
リング。
螺旋。
それぞれが。
少しずつ動いている。
氷室が言う。
「黒川さん」
「はい」
「これ」
少し考える。
「全部つながってます」
黒川が頷く。
「でしょうね」
巨大機械はゆっくり目を覚ます。
歯車のように。
一つ。
また一つ。
順番に。
動き始める。
宇宙の片隅。
人類は今。
巨大文明の設備の中で。
起動の瞬間を見ていた。




