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第3話 船という構造
施設の奥で、宇宙船を見た瞬間、
黒川は思った。
これは、完成品じゃない。
見た目がどうこうじゃない。
造りが、現場寄りだ。
装甲は分割され、継ぎ目が多い。
配管も配線も、外す前提でまとめられている。
一体で仕上げる気が、最初からない。
効率は悪い。
重量も増える。
だが――直せる。
黒川は、船体の周囲をゆっくり歩いた。
構造の考え方だけは、伝わってくる。
この船は、
壊れないことを信じていない。
設計資料を開く。
数値は多い。
だが、意味は分からない。
航路も、観測も、専門外だ。
黒川は、理解しようとするのをやめた。
代わりに、読み飛ばさずに眺める。
説明が、前に進みすぎない。
置いていかれない書き方をしている。
通信担当が言った。
「説明、優しいですね」
黒川はうなずいた。
「失敗したときの話が、
ちゃんと書いてある」
成功条件より先に、
制限と戻り方がある。
黒川は資料を閉じた。
「嫌いじゃない」
この船は、
途中で想定が外れる前提で作られている。




