表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人類保全  作者: wwaabb
20/49

第21話 入力

保管庫のログが、三つ並んでいる。


圧力履歴。


振動波形。


電源負荷。


理央が無言で重ねる。


波形が、揃う。


0.02Hz。


五十秒。


充が言う。


「電源、0.00025%で周期一致してます」


棚橋が言う。


「押したときだけ、音変わりますよね」


氷室が低く言う。


「揺らしたとき、強くなる」


理央がうなずく。


「単独では弱い。でも、重なると固定する」


黒川が三つのログを見比べる。


押す。


揺らす。


少し食わせる。


短く言う。


「同時入力」


理央が言う。


「試しますか」


止めない。


まだ、止める段階ではない。


固定台にオシナオスンを置く。


棚橋が圧力をかける。


12N。


ゆっくり沈む。


理央が言う。


「保持、三秒」


充が微振動を与える。


0.02Hz。


人工的な五十秒。


充が続ける。


「電源、0.00025%」


供給が入る。


内部温度、+0.08℃。


弾性係数、上昇。


表面の光沢がわずかに変わる。


棚橋が叩く。


高い音。


さっきより明らかに硬い。


理央が息を呑む。


「固定化しています」


固定時間、約三十秒。


その間、衝撃応答は通常値の三倍。


氷室が低く言う。


「緩衝材に近い」


黒川は言う。


「一時的に、な」


三十秒後。


硬化はゆっくり戻る。


沈む。


元の弾性。


理央の目が光る。


「条件が揃えば、制御できます」


黒川は言う。


「上限を見る」


充が顔を上げる。


「安全域は」


理央が答える。


「0.0003%までなら」


黒川は一瞬だけ考える。


「短時間」


供給が上がる。


0.0003%。


その瞬間。


保管庫内圧が跳ねる。


0.02Hzが乱れる。


0.04Hz。


0.08Hz。


倍化。


外壁応力、上昇。


人工重力が揺れる。


0.99。


1.01。


のどかが声を上げる。


「心拍、揃います!」


理央が外部ログを見る。


円筒穴、螺旋構造。


位相ずれ。


温度、+0.2℃。


黒川が言う。


「止める」


充が供給を落とす。


振動が暴れる。


一瞬、無音。


そして、ゆっくり0.02Hzへ戻る。


人工重力、安定。


心拍、ばらける。


誰も喋らない。


理央の呼吸が速い。


棚橋の手が震えている。


黒川が言う。


「分かった」


短い。


「三つ揃えば固定する」


「上げれば、巻き込まれる」


氷室が言う。


「こっちが持たない」


黒川がうなずく。


「使えるが、危ない」


沈黙。


理央が言う。


「制御できれば」


黒川が遮る。


「制御できていない」


そして言う。


「封印する」


理央は目を伏せる。


充は即座に電源遮断。


氷室が三重ロック確認。


のどかが心拍安定を確認。


保管庫は静かになる。


振動は消える。


作業後。


棚橋は物資棚を整える。


封印ケースの番号を確認する。


固定台の下に、小さな黒い破片が落ちている。


実験時に欠けたものだ。


誰も気づいていない。


棚橋は拾う。


指で押す。


柔らかい。


振ると、わずかに硬くなる。


彼は周囲を見る。


誰も見ていない。


ポケットに入れる。


小さい。


米粒より少し大きい。


彼は小さく言う。


「それいるの?」


答えは出ない。


でも、捨てない。


余り物は、いつか役に立つかもしれない。


保管庫は沈黙している。


三条件が揃わなければ、何も起きない。


眠っているのか。


固定されているのか。


分からない。


黒川は保管庫から視線を外す。


「進む」


航田が航路を更新する。


次の星へ。


誰も知らない。


封印が完全ではないことを。


オシナオスンは眠った。


だが、条件は分かった。


押す。


揺らす。


少し食わせる。


それだけで、世界がわずかに変わる。


その上限も、知った。


それで十分だ。


船は進む。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ