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人類保全  作者: wwaabb
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第15話 手順の外

保管庫の前で、氷室は立ち止まった。


ロックは正常。

封印、破損なし。

アクセスログ、空白。


手順通りだ。


手順通りであることを、

二度確認する。


外作業の前は、いつもそうしてきた。


確認しても、

状況が変わるわけではない。


だが、変わらないことを確認するのが仕事だ。



「振動、継続しています」


理央の声が、少し低い。


「0.02Hzに加えて、

 0.04Hzが安定しています」


黒川が聞く。


「外部相関は?」


「なし」


理央は即答する。


「船体振動、推進波形、

 居住区活動ログとも一致しません」


一致しない振動が、

隔離された中で発生している。


氷室は保管庫を見た。


手順は守られている。


守られているのに、

状況は悪化している。



久慈のどかが、端末を覗く。


「心拍、また少し上がってます」


「誰の」


「……氷室さん」


氷室は頷く。


自覚はある。


「異常ではありません」


のどかが言う。


「ただ、反応してます」


何に。


とは、聞かない。



棚橋が言う。


「……近づかない方がいいっすよね」


黒川が答える。


「そうです」


「でも」


棚橋は続ける。


「中で何か起きてるなら、

 見ないと分からないっすよね」


氷室が言う。


「手順外です」


それがすべてだ。



航田が口を開く。


「たぶん」


全員が見る。


航田は、少し考えてから続ける。


「止める手順が、

 決まってないんじゃないですか」


沈黙。


「隔離は、

 影響を外に出さない手順ですけど」


航田は言葉を探す。


「中で進むやつは、

 対象外っていうか」


主語がない。


だが意味は通る。



氷室は、もう一度ロックを見る。


手順は、

外からの影響を防ぐためのものだ。


だが。


中で変化する場合。


この手順は、

前提を満たしていない。



「……確認します」


氷室が言う。


黒川が見る。


「開けるのではありません」


氷室は続ける。


「封印状態で、

 振動の伝達経路を確認します」


手順の範囲内だ。


ギリギリで。



充が端末を見る。


「保管庫外壁、

 微小な応力変化があります」


理央が振り向く。


「どの程度」


「……0.0007」


小さい。


だが。


「周期が一致してます」


0.02Hz。


中の振動と、

外壁の応力変化が揃う。



氷室は手袋をはめる。


外作業用の、

分厚いやつだ。


「接触します」


黒川は止めない。


氷室の役目は、

手順の中での確認だ。


氷室は保管庫の外壁に手を当てる。


冷たい。


金属の感触。


何もない。


五十秒後。


わずかに。


指先に、

遅れてくる反力。


叩かれたような、

内側からの圧。


氷室は手を離す。



「……内圧変動があります」


理央が言う。


「真空ではありません」


氷室が答える。


「構造変化です」


棚橋が小さく言う。


「動いてる……?」


黒川は言う。


「今日は近づかない」


氷室が頷く。


だが。


手順の外に、

もう片足が出ていることに。


全員が気づいていた。


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