戦力強化訓練
「みなさん。調子はどうですか?」
次の日、事務所の室内トレーニング場で集合し、体の調子を聞いた
「痛みはないね。何なら調子がものすごく良い」
「うん。感じる魔力が桁違いに大きい」
「そりゃそうでしょうね。全員が元々の20倍以上の魔力を持ってますからね」
「ぜ、全員!?」
〝いいなぁ〟
〝羨ましい〟
〝ずるい〟
「やって欲しい人がいるみたいですね。抽選でもやって当選した人にやってあげようかな」
〝マジか!!〟
〝よっしゃ!〟
「まぁ、痛みは常人じゃ耐えられませんけど」
〝やっぱ、辞めるわ〟
〝俺も〟
〝私も〟
「賢明な判断です♪」
「色々疑問なんだが……常人じゃ耐えられないって言ったか?」
和樹が問いかける。みんなも同じような疑問を抱いていたようで、レイの言葉に耳を傾けている
「言いましたね」
「それってどう言うことだ? 確かに痛かったが、耐えられないほどではなかったぞ?」
「皆さんは常人ではなく強者ですから痛みに慣れてるんですよ。強者だと、体も強くなりますしね」
「もしかして……経験値……?」
「そうです! 経験値です。強化されるのは魔力だけでなく、体もなんです!」
「サラッとぶっ飛んだこと言ってねぇか……?」
「仕方ないよ。こう言った面では、レイも頭がおかしいから。普通の人の感性がわからないから」
「なっ……失礼な! ちゃんと僕も普通の人です!」
レイは仁の言葉に憤慨した様子を見せるが、周りの全員(視聴者も)がレイのことを「何言ってるんだこいつ。」といった目で見て(観て)いる
「……まぁ、そのことは置いておいて、実践形式で戦いますよ!」
「全員でいいんだよな?」
「ええ、全力でお願いします」
「いくぞ」
「どうぞ」
「はあ!!」
「よいしょ!」
「ふっ!!」
「えい!」
「おら!!」
「ここ!」
男性陣が斬り掛かってくるのに加えて、離れた場所から魔法を撃つ女性陣。レイとの戦闘を繰り返し、元から上手かった連携がさらに上手くなりつつある。だが……
「ぜーんぶ遅い」
襲いかかってきた3人を格闘技でねじ伏せた後、飛んできた全ての魔法を手(魔力付与済み)で叩き落とした
「強すぎだろ……!」
「1発も当たらないなんて……」
強くなったと感じて、自信満々で挑んだ皆んなだったが、レイという巨大な壁の前では全く歯が立たず、意気消沈してしまった
「せっかく魔力量が多くなったんだから体に魔力を纏わせれば良いのに」
「前から気になってたんだが……体に魔力を纏わせるってどう言うことだ?」
「あれ? 言って無かったっけ? 簡単に言うと身体強化。魔力を持ってる人なら全員できる技術?魔法?だよ」
「もっと早く言ってくれよ……って言うか、やり方を教えてくれよ……」
「あはは、ごめんね。えっとね。魔法を使う時みたいに魔力を集める。それを身体の外側に覆うだけだよ」
「……むずくね?」
「そうだね。単純だけど練習しないと難しいかもね」
「あ、レイ君! 出来たかも!」
雫が興奮したように話しかける
「どれどれ……うん。出来てますね……すごい才能ですね。まさか1発で成功させるとは……」
「うん! だけど……これ……魔力の消費が激しい……!」
「まぁ、常に魔法を打ち続けてるみたいなもんですからね」
〝ずっと魔法を撃ち続けるのと同等ってかなり魔力の消費激しくね?〟
〝え、俺、10秒持つかな?〟
〝そもそも、その魔法を使えるかどうかって言う話なんだけどね〟
事務所のみんなは絶句。コメント欄は阿鼻叫喚。
「多分、私は……もって5分ぐらいなんだけど……レイ君だったらどれくらい持つの?」
雫が思ったことを口にする
「え? 僕ですか? 僕だったら……そうですね……最低でも1年は強化しっぱなしでもいけますね」
「えっと……それって私の何倍?」
「単純計算で最低でも約10万倍ですかね?」
「「「ッ!?」」」
〝はぁ!?〟
〝エグすぎ!?〟
〝嘘!?〟
コメント欄を含め、全員が絶句する。ちなみにこの時の視聴数は100万を超えており世界中が観ている。だが、ミラー配信等もあるので実際はそれよりも多いが
「さて、そろそろ終わりにしましょうか。最後に魔力回路に干渉していきますね」
「ええ!? まだやるの?」
「一回で終わりにしても良いですよ? でも、やればやるだけ増えますけどね」
「じ、じゃあ、お願いするね……!」
「明梨さんが最初ですか。いきますよ」
「う、うん!」
レイは明梨に、魔力を流す。流し続ける
「痛い……けど、そんなに?」
「え? そんなはずは無いと思いますが?」
レイは不思議に思いながら魔力の大きさを検知する
「え? ……ううん……そんなはずは無い……もう一回……変化無し? ……どう言うこと……?」
レイは戸惑いながらぶつぶつ独り言を言いながら考え込む
「ねえ! レイ君!私の魔力がどうしたの!?」
レイは困惑しながら口を開く
「流した瞬間に魔力量がさらに10倍になりました。明梨さんって人間ですか?」
「失礼な! ちゃんとした人間だよ!」
「ま、まあ、明梨さんが例外なだけかも知れませんし?」
そして、全員に同じことをすると……?
「嘘でしょ? 全員魔力量が増加……? どんな冗談だよ……なんでだ? 体の性質が変わったのか? 僕の魔力で……!?」
レイが思案しているが、正解である。これは体がより大きい負担に耐えようと、効率よく強化しようと体を最適化した結果だ。これにより、レイの魔力を流し込まれれば流し込まれるほど魔力が瞬時に強化されるようになったのだ
「これは、認めざるを得ませんね……成長速度はみなさんの方が僕よりも上です」
「レイに勝てるところがあったんだな!」
「さらに強化された今なら1発ぐらい当てられるんじゃ無い!?」
「よし、行くぞ! レイ!」
「え? ちょっと待って、今、魔力で建物の保護をするから……!」
飛び交う魔法。レイはまだ保護を完了させることができていない。
「もうっ!! アイスシールド!」
レイは氷の盾を使い、事務所のみんなを覆う。
「フローズン」
中に囚われている人たちを首から下全てを凍らせる
「不意打ちとは卑怯ですねぇ? どう言うつもりです?」
「いやぁ……こりゃ無理だな。不意打ちを効かないんだから」
「うん……作戦失敗」
「なるほど……作戦でしたか」
レイは納得したように顔を穏やかにした。そして、氷を解除する
「なら、それ相応の覚悟はできてるんでしょうね?」
その後、ほんの少し本気を出したレイにみんなはボコボコにされた
「ふぅ……」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
全員をボコボコにし、さらにボコボコにしていると、いつの間にか、暗くなってきていた
「ぐっ……」
「いてぇ……」
「手加減してよぉ」
急にボコボコにされたみんなから不満が漏れる
「まだ元気そうですね。もう一回やっときます?」
レイが悪い笑みを浮かべ、手の上に氷の粒を出しながら問いかける。
「はいはい。そこまでそこまで」
その時、華蓮が仲裁に入った
「どうする? 昨日は家に帰らせたけど、事務社に泊まっていくかい?」
「「「え?」」」
突然の華蓮の提案に心底驚く
「ほら、移動の時間とかが勿体無いだろ? 少しでも長く訓練できた方がいいかなって」
「それは……まぁ……確かに?」
明梨が声を出す
「それじゃあ、もう一回やr「もう遅いから終わりにしようか」……」
もう一回やろうとか馬鹿なことを言い出しそうになったレイの言葉を華蓮が遮る
「レイ。君は大丈夫かもしれないが、一日中戦ってたら疲れるもんなんだ。休憩させてあげよう。な?」
「わかりました。じゃあ、今日は終わりで!」
強張っていたみんなの表情が和らぐ
「うん。それじゃあ、部屋に案内するよ」
それぞれが、それぞれの部屋に入り、10分した後
「よし。そろそろ行くか」
レイが行動を開始した。事務所の裏側、屋外訓練場に訪れる。そして、立てかけてある木刀を手に取り、眺める
(重さは丁度良く、振りやすい。……木刀で丁度いいってどう言うことだよ。ひ弱すぎるでしょ)
レイは自分の弱さに苦笑いする
(身体強化使えば、本当の剣も使えるだろうけど、剣を使ってるってことはかなり危うい状況に陥ってそうだから強化なしで使えるようになりたいんだよねぇ)
「よし、やってみるかな」
木刀に魔力を集中させ、凝縮させる
「白虚零式・ 一氷閃」
的に向かって木刀を振ろうとしたその瞬間
「ッ!? ゴホッ、ゴホッ!」
レイは、全身に襲う強烈な痛みに動きを止めて、膝をつき、口を押さえて咳をする。口を押さえる指の隙間から真っ赤な液体がこぼれて地面に小さな水たまりを作る
「はあ……はあ……ゴホッ、ゴホッ……ふぅ」
(やっぱり……だめか。身体強化しないと体が追いつかない。負荷が大きすぎる。くそっ、まだ一つ目なのに)
「大丈夫。まだ時間はある。ゆっくり鍛えていこう」
レイはゆっくり立ち上がり、自室に戻る。レイが抜け出した時も戻ってきたことにも気づくものはまだいなかった




