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ヤエー!初めての帰宅困難  作者: 砂糖水色


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9話 焚き火


 

 本当は早く寝るべきなのはわかってはいるし、疲労感もある。

それなのに、不安と興奮でまだ眠れそうにない。

 

こんなタイミングで地震とは本当に運がない。

いや、大きな地震を避けられたのだから運は良いのだろうか。

焚き火を眺めていると思考がゆっくりになる気がしてくる。アルコールのせいもあるかもしれないが。

それこそ原始人とかそのくらい昔の人達もこうやって炎を眺めながら、何か思案していたのだと思うと、私の悩みや心配事もそんなに珍しい話でないのだろうな。そんな意味の無い事を考える。

横を見ると晴ちゃんは椅子に深く座りブランケットにくるまってウトウトしている。

幸せそうだ。

「スマホの電波が無いとやる事ないね。」

とボヤいていた。

「普段キャンプ来て何してるの?」

沈黙が続くと、考え過ぎてしまうので、軽い話題を振ってみる。

「んー普通だよ。YouTubeみたり、Netflixみたり。まぁ散歩したりもするけどね。」

「そーなんだ。キャンプする人時はデジタルデトックスするのかと思ってたよ。」

「そーゆー人も居るとは思うけど。プロジェクターで映画見てる人とかもいるしね。」

「凄!みんな自由なんだね」

「そうそう。音出したり、周りに迷惑かけないのは大前提だけどね。」

「私も桃鉄やったり、漫画、アニメとか 全然拘りはないかなぁ。あと、受験勉強もしてたよ。」

 

 普段とは違う、すごく遠くまで来てしまった気がする。が、晴ちゃんは本当に通常営業だ。

それが今の私には少し心強く感じる。

「二人でいつかキャンプ行こうね。」

と晴ちゃんと会う度に約束をしていた。

私がバイクの免許を取得した時点で現実味が増し、晴子の受験が終わった事で、具体的な日時の話になった。

当然学校があるから土日で探すと2週間後の土日が二人とも偶然バイトも入っていなかったのですぐに決まった。

それから晴ちゃんはホントに高校生?と言いたくなるような行動力を発揮した。

キャンプ場選び、道具、積載問題等を軽くクリアした。

私はアニメやYouTubeで見ていた有名キャンプ場の名前を出した。

既にキャンプブームは終わったと言われているが、二週間後の土日が空いているわけも無く、晴ちゃんの父が熱烈にオススメするキャンプ場になった。

距離もある程度あるし、時間もかかるが、長野に入ると渋滞が少なくツーリングに最適らしい。

来てみても、やっぱりちょっと遠すぎる気もする。

やっぱりあの親娘は距離の感覚がおかしい。

次は道具だ。

晴ちゃんの家にはキャンプ道具が豊富にあるので、必要な物はほとんど晴ちゃんにおまかせした。

私が持ってきたのは寝袋と購入した椅子、晴ちゃんに事前に渡された銀マットとブランケット、そして自分の着替えのみだ。

あとは全部晴ちゃんの小さなカブに乗ってきた。

聞けば、予備のガソリンまで持ってるという。そこまで出来る女子高生ってそうそう居ないのでは…と思う。

私が別件で打ちひしがれている間に集合時間まで決まっていた。

すごい。

 

なるほど。せっかくの機会だし、やってみるかと、GoogleMAPで調べてみたら、秒で挫けそうになった。

六時間運転し続けるなんて可能なのかと思った。

けど、晴ちゃんが

「キツくなったら安いホテルやネットカフェとかに泊まっちゃおう。」

と気楽に言うので、やってみたらちょっと腰とおしりが痛い位で、案外平気だった。

むしろ、楽しくてずっと喋っていたので喉の調子が心配になるほどで、想像してたより本当にスムーズにここまで来てしまった。

あ、そういえばインカム充電しないと、流石に明日はこうスムーズには行かないだろう。

早く寝ないとだ。

燃やす薪も使い切ってしまったので、そろそろ就寝しようと晴ちゃんに声をかける。

炭のようになって小さくユラユラと揺れる焚き火を眺めていた晴ちゃんが現実に戻ってきた。

片付けはやってくれると言う。


私は礼を言い、先にテントの中に入りシュラフに潜り込んだ。

先に入れておいた小型の湯たんぽがとても暖かい。

家族の事や明日以降の事を考えると不安で胸がざわつく。

けれどそれ以上に疲労が勝ったのだろう、あっという間に深い眠りに落ちていった。




 

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