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ヤエー!初めての帰宅困難  作者: 砂糖水色


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4/24

4話 ミキ


 

細い曲がりくねった道を下りきった先に、グレーの建物が見えた。

目の前の砂利の駐車場にバイクをとめて、目的地の駒入池キャンプ場に到着した。

朝八時に集合して、十三時半到着。

約六時間半の長旅だ。

晴ちゃんはさっそくスマートフォンで嬉しそうにチェックイン作業をしている。

お金は予約の時点で支払い済だと言っていた。

私が達成感を感じながら伸びをしていると、あっという間にチェックイン作業を完了し、二人で受け付けに向かう。

そういえば、叔父さんつまり晴ちゃんのお父さんの知り合いがいるとか言ってたけど…と、思っていると早速声を掛けられた。

「晴ちゃん??」

「久しぶりだねー大きくなったねぇ」と三十位の女性がとても嬉しそうにしている。

女性は白いニット帽を被ってワイドな黒いパンツ、グレーのスウェットパーカーの上にポケットの沢山付いた茶色いベスト着ている。

胸にネームプレートが付いていて、ミキと書かれていた。

美樹、美希…漢字は分からない。

アウトドアのプロっぽいなーと思う。が、アウトドアのプロとは?と自問自答して苦笑しそうになる。

晴ちゃんも小学生の時何度か会ったことがあるらしく、嬉しそにしている。そのままそのミキさんが受け付けを担当してくれた。

ミキさんの背後には百八十五cm以上ありそうな若い男性がニコニコしながら立っている。

チャラそうだけど、どこか憎めない感じだ。

 

設営落ち着いた頃に行くね。とミキさんが明るく送り出してくれる。

管理棟を出て、キャンプ場の砂利道を恐る恐るバイクで進み、指定された砂利の駐車場に到着する。

オートサイトでは無いので、テントを張る場所までバイクや車は入れられない。

ここから荷物を手で運ばなければいけない。

なので、荷物はバイクに置いたまま場所取りに行く。

芝生の小さな丘を超えて、小さな川にかかっている可愛らしい木の橋を渡ると目の前に池が現れた。

直径で言うと二百m位ありそうだ。

池の周りにはいくつかテントが張られていて、波の無い池に反射して、鏡合わせのようになっている。とても綺麗だった。

通路以外どこにテントを張っても良いそうだ。

これは場所決め重要だな…。

紅葉している白樺の木に囲まれた池のほとりにシートを広げて場所取りをする。

池までは高さに差があるので、少々雨が降っても平気そうだ。

晴ちゃんがベスポジを取れた気がする。と、はしゃいでいる。


このキャンプ場には池の周りの他にも、川沿い、林間サイト、芝生サイトがあるが、私達の目的は最初から池の周りの場所だった。

有名なテントのメーカーのホームページのトップ画像にもなっていて、晴ちゃんの憧れの場所だった。らしい。

前回来た時は凄く混んでいて、良いところは取れなかったそうだ。


バイクから荷物を運んできて早速設営を始める。

晴ちゃんがテントを袋から引っ張り出し、広げる。

シートの角にペグをハンマーで打ち込む。

更に上からシートを被せ、太いポールを持って晴ちゃんがシートの中に入る。

テントの真ん中に太いポールを立てると、あっという間に三角形のテントの形が出来上がる。

残りのペグを打って、ロープを引っ張り、ペグにかける。

全体を見ながら調整をして、20分程でにテントの設営が完了した。

「早いなー晴ちゃんプロだな。」

「簡単なテントだからね!可愛いでしょ」

中々愛らしいドヤ顔である。

テント言えばこれっていうイメージ通りの円錐型で、アイボリーの生地にオレンジと水色の柄ーナバホ柄と言うらしいーが、入っていてとても可愛い。

2人で池の反対側に見に行ってみる。

かなり良いのではないだろうか。池の水にテントが反射している。テントの両サイドに紅葉で黄色くなった葉の着いた白樺の木があり、青い空が見える。

これが映えか!と、思う

とりあえずスマホで写真を何枚か撮る。

ちょうど三羽の合鴨がキラキラした池の湖面をふわふわと横切っていった。


テントに戻り、残りの設営を始める。

私は今回の為に購入した、唯一のキャンプ道具であるコンパクトになる椅子を組み立ててみる。

晴ちゃんが持ってるのと同じものを買った。

安くて使いやすいらしい。

ちょっと組み立てづらいけど、とも言っていた。

まぁ、なんとかなるだろうと思い。ネットで購入した。

今回が初めての組み立てだ。

アイボリー色の収納袋のチャックを開けてみると、袋と同じ色の布と黒いパイプが出てきたので、パイプを引っ張り出してみる。

パイプ同士を繋げていくだけで簡単に椅子の形になった。

パイプの中にゴム紐が繋がっていて間違えようがない

簡単じゃん。

コレに布をはめ込めば完成だ。

布の方向を確認して入れてみる。

が、入らない。

説明書には上のパイプに布の差し込み口を入れる。と書いてあるが、入らない。

無理やり押し込んでみる。無理だ。

もっと無理やりやっていいのかな?と晴ちゃんを見てみると、もう椅子は完成していて、テーブルを組み立て始めている。

「晴ちゃんこれ入らないんだけど、不良品?」

と聞いてみると。多分大丈夫と言いながらアッサリ入れる。

「ある程度無理やりだけど、ちょっとコツがあるのかも。

新品だと特に布が固く入りにくいね。何回かやったらすぐできるようになるよ」

と、優しい。

なにはともあれ椅子とテーブルが完成した。

あとはテントの中に折りたたみの銀色のマットを敷いて、寝袋を広げる。

「天気も良いし、タープはいらないね。」

晴ちゃんが言う。

よくわからないが、晴ちゃんが言うのなら、平気なんだろう。


一段落したので池に向かって椅子に座る。

晴ちゃんがお湯を沸かし、インスタントのカフェオレを入れてくれる。

シルバーの黒く焦げたあとのある無骨なコップでカフェオレを飲む。

疲労した体に染みるように入っていく。

暖かい。

目の前の池に空の雲が反射してゆっくりと流れていく。

色々な木が周りには茂っていて絵画みたいだ。

周りからはペグを打つ音なのか薪を割る音なのかカンカンと音が聞こえる。

神奈川とは匂いも空気も違う。…気がする。

池の周りの所々に色々な形のテントが立っている。色んな形や色のテントがあるんだな、と見回してると、池の反対側に女性が立っていて、こちらにスマートフォンを向けている。

私がそちらを見ると先程のスタッフの方が手を振ってきたので、座ったまま会釈する。


しばらく風景を眺めながらのんびりしていると先程の、スタッフの女性ーミキさんと受け付けにいた、長身の男性がテントまでやってきた。

男性が両手に薪を持っている。

チェックインの時に購入した薪を持ってきてくれたようだ。

キャンプ場のスタッフはこんな事もしてくれるのかーと思ってると、男性が口を開いた。

「ホントは薪を持ってくるサービスなんてないから内緒ね。可愛い女の子達には特別です。」

やっぱりチャラそうだと思っていると、ミキさんが

「じゃあ私も特別だよね!

売店のデザート食べたいから、買ってきて。」

と言う

男性はめんどくさいなぁーとかブツブツ言いながらも管理棟に向かって歩いていく。

それから女性三人でしばらく色々な話をした。

先程撮った私達の写真をキャンプ場のSNSに載せたいだとか、四歳の息子がめちゃくちゃ可愛いだとか、さっきの男性スタッフの車がてんとう虫みたいだとか、ミキさんはよく喋る。

男性スタッフータカシさんと、言うらしいーが戻ってくるとビニール袋からどら焼きをひとつずつ手渡してくれる。

ミキさんが袋を開け1口食べ、もぐもぐしながら言う。

「このドラ焼き美味しいよー

一日二十個くらいしか入荷出来ないんだー。

あれ?そういえばタカシの分は?」

タカシさんが悲しそうに言う。

「三個しか残ってなかった。」

ミキさんが笑いながら

「もう買えないって思うと尚更美味しく感じるねぇ。」

と笑う。

私と晴ちゃんも笑う。

するとタカシさんが、缶コーヒーを両手に持って言う。

「良いもん。そんなミキさんにはコーヒーはやらん。」

と言って缶コーヒーを2個とも開けて飲もうとする。

ミキが

「この裏切り者ぉ!」

「コーヒーよこせ!」

とタカシさんが口を付けようとしてる缶コーヒーを奪う

…仲良いな。

ミキさんは離婚してバツ1だと言っていたが、タカシさんと付き合ったりしてるのだろうか。

私達そっちのけでとても楽しそうだ。

自分の状況を鑑みて少し憂鬱になる。

横を見ると晴ちゃんが、鉄の板から細い棒が突き出てる物を弄っている。

煤のようなヨゴレが付いているので、これが焚き火台になるのだろうか。

しばらくするとミキさんもタカシさんも管理棟の方に戻って行った。ミキさんは夕方には帰宅するらしい。

それから、LEDのランタンを用意したり、二人でキャンプ場を散策したりした。

晴ちゃんが前回来た時よりテントの数は半分以下らしく、全体的に静かだ。

静かな森を散歩するのはとても気持ちが良かった。

私も晴ちゃんみたいにキャンプにハマるかもしれないな。

そんな事をぼんやり考えていた。

 

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