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ヤエー!初めての帰宅困難  作者: 砂糖水色


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23/24

23話 決意


 

 インカム越しにミキさんとタカシさんの賑やかな話し声が聞こえてくる。

私たちはタカシさんの車の後ろをついて行くような形で帰路についている。

ミキさん達もミキさんの母親の自宅の横浜市まで行くらしい。

「ノリ乗りかかった船よ。」

「ノリノリじゃん」

 タカシさんのツッコミが聞こえる

「横浜市だけど、藤沢市寄りだしね。晴ちゃんのお父さんに凪を合わせたいし」

と同行する事になった。

インカムを使ってタカシさんのスマホとLINE通話しながら走っている。

車内はスピーカーにしているようだ。

インカム同士の通話に比べると音質はかなり落ちるが、なんとか会話が成り立つレベルだ。

たまに凪がしゃべっている声が聞こえるのが嬉しい。

やはり信号が動いていると安心感がある。

一昨日ほどの極端な渋滞は今の所無い。

下道で一時間半の距離だ。

よほどの渋滞が無ければ昼前後には帰宅出来る筈だ。


チエミさん夫婦には本当にお世話になった。

今朝皆で朝食を頂き、食器の片付け、部屋の掃除等をして、出来る限りのお礼を言って来た。

本当に助かったし、昨日は楽しかった。

 

災害時に炊き出しを手伝うことがあるとは思っていなかった。

あんなに1日に「ありがとう」と言われる日は今後あるだろうか。

色んな人達が来てくれた。小さな子供のいる家族や年配方々。警察官に消防士の方。

タクシー運転手に自称インフルエンサーの女性もいた。

今後の人生にどんな影響があるのかは分からないが、有意義だった事は間違いないと思う。

あんなピンチから大逆転だ。

 

 ただのツーリングキャンプのつもりがちょっとした冒険になってしまった。

一泊二日の予定が結果的に四泊五日になった。

やはり当初ミキさんが言っていたように最初のキャンプ場で何泊かするのが一番安全に帰宅出来たように思う。

まぁ、後悔しても何も始まらない。安全に前に進む事だけ考えよう。

 タカシさんが聞いてくる

「晴ちゃんはキャンプ歴長いの?かなり何でも一人で出来ちゃう感じだよね?」

「6年くらいですかねぇ、父と毎月行ってましたよ。もう何度かソロも経験してます。」

「すごーい。女子高生がソロキャンプて怖くない?」

ミキさんも興味津々だ。

「スタッフの方が夜も常駐している所とか、ある程度人が多い所にしかソロでは行かないです。」

「なるほど、なるほど。ナンパとかしつこいオジサンとかいない?」

今度はタカシさんの声だ。

「キャンプ中はほとんどないですね。むしろコンビニとか道の駅で声かけられることが多いです」

「あー晴ちゃんのバイク目立つしねぇ。ソレ言ったら彩ちゃんもバイク乗ってたら目立つねぇ」

 今度はミキさんが、ふいに私に話を振った。

「実は私はロンツーもキャンプも今回がほぼ初めてでして。あ、でも今回、声掛けられましたね。」

「彩ちゃんスタイル良いし、髪サラッサラだからなぁ」

タカシさんのコメントをミキさんが茶化すように言う。

「タカシが言うとなんかイヤらしい」

晴ちゃんが大袈裟に手で体を隠すようにしながらモノマネをする

「キャー!タカシさんのエッチ」

信号が青になるのを待ちながらみんなで笑いあった。

「私もバイク乗ってみたいなぁ。免許取ろうかな?あれ?タカシは免許もってるの?」

「持ってますよ。大型の免許。バイクも持ってますよ。」

晴ちゃんが拳を振り上げて言う「タカシの癖に生意気だぞ!」

 晴ちゃんガンガン行くな。と、感心する。

「で、なんてバイクですか?」

「VMAXって言うんだけど、知ってる?」

全員で

晴ちゃん「知らない」

私「知らないです」

ミキさん「見た事も聞いたことも無い」

「酷くない?ミキさん見た事あるのに!」

「あーあれか。前キャンプ場になんか大っきいの乗ってきてたね。そーいえば乗ってた、乗ってたわ」

「でしょ!ミキさんはもうちょっと俺に優しくても良いと思う!」

走り出しながらみんなで笑う。

「ミキさんも免許取りましょうよ。みんなでツーリングしてみたい」

 私が提案してみる。

が、これから私はそれどころでは無いのかと我に返る。

「それ良いねぇ」

とタカシさんだけが反応した。

 少し間が空いてミキさんが聞く。

「で、彩ちゃんどうするか決まめた?」

「んーまぁ、やっばり産みたいですよね。」

「え?産むって?妊娠してるの?彩ちゃんが?晴ちゃん?」

「あれ?タカシ知らなかったっけ。そうそう彩ちゃんね。一昨日発覚したみたい。」

「とりあえず帰ってから母に相談ですねー反対はしないと思うんですけど…」

「ちょっとミキさん。

走りながらする会話にしては重すぎですよー。

もー事故でもしたら本当に大変なんですから。

軽い会話にしましょ聞き流せるくらいの」

晴ちゃんがミキさんに呆れたように注意する。

「なーぎーちゃーん女子高生に、怒られちゃった」

と、ミキが笑う声に混ざって凪の笑い声も聞こえてくる。

ふと対向車線のライダーが手を振ってくれたので晴子と2人で振り返す。

やはり行きの時にしたようなノリの良い気軽なヤエーとは違う、本当に「お互い無事で。」と言う仲間意識のような物を感じる。

ミキさんが丁度見ていたようで「知り合い?」

 と、聞いてくるので今度は私が答える。

「いえ。全然知らない人ですよ。バイクに乗ってる人同士ってこうやって挨拶するんです。「ヤエー」って言うんですけど。安全祈願も含めって感じですね」 

「へぇー何でそんな楽しそうなことしてるのよ?私もやりたくなるじゃない。タカシも知ってた?」

「モチロン知ってるよー俺も結構好きだね、車乗っててもライダーに手を振りたくなるほどに。」

「あー分かります」

と晴子が同意する。

「まぁ結構反対派もいるけどね。」

「えーなんで?」

これはミキさんの声だ。

「ほとんどの場合ハンドルから手を離すからね。お辞儀だけでも良いんだけど。おれは絶対ヤエーなんてしない。って人も居るよ」

「あーそーなんだ。危険て事ね」

「そういえば俺今年SSTRってイベントに参加したんだけど晴ちゃん知ってる?」

「あー父が数年前に参加してたヤツかな?一日で石川まで走るイベントですか?」

「そうそう。日の出から日の入りまでで太平洋側から石川県の千里浜って所までバイクで走るっていうイベントなんだけど。」

「あっ千里浜って車で走れる砂浜の所でしたっけ?夕日が綺麗な」

「おっ彩ちゃん詳しいね。そうそう。

あのイベントで貰ったヤエーは嬉しかったよ。

なんか本当に安全祈願ってゆーか仲間意識みたいなの感じた。」

「なんでタカシはそーゆー楽しそうなの教えないのよ。」

「いや、ミキさん免許無いじゃん。」

「ってゆーか一日で太平洋側から石川県て厳しくないですか?」

晴ちゃんが聞く。

「結構行けるよ。スタート地点が太平洋側ならどこでもいいからね。名古屋からだと三百kmもないから50ccでゴールする人もいるよ。

 去年俺は東京で朝日を見てからスタートして、結構雨降ったんだけど、ゴールは晴天でめっちゃ夕日が綺麗で感動したよ」

「え?何これ千里浜めっちゃ綺麗じゃん!」

 ミキさんは助手席でスマホで調べているようだ。

「しかも1万2千人て!あー期間が2週間位あるのね。なるほどなるほど。次は5月かー」

「今から教習所いけば余裕で間に合いますね。」

と、晴ちゃんが嬉しそうに言う。

「みんなで行っちゃうか!千里浜!」

私は難しいかなぁと思った。

5月だったら、妊娠7か8ヶ月な筈だ。バイクで長距離は難しいだろう。 

さっきからずっと川沿いをゆっくりと走っている。

もう少しで海老名市になる。

都市が近づくにつれ進みが悪くなって来たが、みんなで会話していると渋滞もさほど苦に感じない。

爽やかな秋晴れで、一昨日の苦境が嘘のようだ。

今回のキャンプツーリングはもう少しで終わりだ。

安心感と共に、少し寂しい気持ちにもなる。

次は、今度はと話題になるが、ミキさんとタカシさんは長野に住んでいるので、そう簡単には会うことは出来ないだろう。

 ミキさんには昨日色々とシングルマザーについて色々と教えて貰った。勇気が力が湧くような言葉も貰った。

不安が無くなった訳では無い。むしろやはり不安は本当に大きい。

「どうにかなるんじゃなくて、どうにかしなきゃいけない。絶対にね。

だけど、どうにもなんないなら周りの人に助けてもらっちゃいな!一人で抱えちゃダメよ。周りに家族や親族がいるんでしょ?

私なんてお父さんにもお母さんにも結構手伝ってもらってるよ。」

強い意志。ミキさんにはそれがあるんだな。と、思った。

母親になるという事、自覚もまだ無い。

帰宅して母に話したらとんな顔をするのだろう。

私は20歳を過ぎているのに大人になっていない。大人じゃないのに母親になれるのかな?父親無しで。

どうにかなるんじゃなくて、どうにかする。

私はそうやって進んでいく。


 

 





 

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