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ヤエー!初めての帰宅困難  作者: 砂糖水色


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2/24

2話 湘南発


集合場所に決めたローソンに時間ピッタリに着くと晴ちゃんはもう到着していた。

上下スキーウェアのような格好をしていて、暖かそうだ。

青地に白いラインの入った大きめのジャケットに、黒のズボン、茶色い手袋が愛らしい。

控えめながらも芯の強さを感じる瞳にショートボブがよく似合っている。

横には小さい青緑色のおしゃれなカブがあり、ミラーにアイボリーのフルフェイスを掛けてある。

いつ会っても、晴ちゃんは可愛い。

こんな妹がいたら良いのにと、つい思ってしまう。


晴ちゃんは隣駅に住んでいる従兄弟で、小さい頃は同じバレエ教室に行っていたり、お互いの家で遊んだりとよく会っていた。

私が高校に入ってバレエを辞めると、会う回数は減ったが、親戚の集まりや、文化祭等で年に数回顔を合わせ、仲良くしている。

二人で旅をするのは初めてだ。

そもそも、家族以外と旅行をするのは初めてだった。

最近色々な事があって、気持ちが晴れなかったけど、この旅行で少し変化があるといいなと、思っている。

二人とも不慣れで、スマホで説明書を読みながらインカムを繋いだ。

インカムとはヘルメットに取り付ける会話用の機械で、LINE通話よりも格段に高音質で走行中も会話出来る機械だ。

同じメーカーの物なのでアッサリ繋がり、出発する。

晴ちゃんが

「さぁいこーか」

と何かのセリフっぽく言うのでクスッと笑えた。

 

天気予報では来週末までずっと晴天が続くらしい。

朝八時前の空気は思ったほど冷たくなく、澄んだ青空が広がっている。

爽やかな秋晴れ、キャンプには最高の季節だ。

 

 バイクに積載した荷物で後頭部しか見えなくなった晴ちゃんの後ろを追いかけて、バイクを走らせる。

私はまだ免許を取ってから数回しか乗っていないので少し緊張感がある。

そんな緊張感を他所に、晴ちゃんはしゃべり始める。

「ちょっと聞いてよー彩ちゃん

ウチのお父さんがさぁ」

と、叔父さんの愚痴が始まる。

相槌をうちながら、信号が青になるのを待つ。


左側の林の切れ目から湘南の海が見える。

久しぶりに見る海はキラキラして美しい。

江ノ島のある藤沢市に住んではいるが、海に来る事は滅多にない。

住んでいる地域が藤沢市でも北の方であるし、海に来る用事は基本的にない。

それに、江ノ島周辺は年中渋滞が多すぎて近寄りたくない。

信号が青になり、アクセルを回した瞬間、バイクがガクンと止まった。

「うわっ」

エンストだ。

焦って後ろを確認するが、後続車はいなかった。

ほっと胸をなでおろす。

晴ちゃんがインカム越しに

「気にしない気にしない」

と軽くいう。車道の左画にバイクを寄せて待ってくれている。

「晴ちゃんはエンストしないの?」

と再発進してから聞くと

「私のカブはクラッチが無いからエンストしないよー。左のハンドルはクラッチレバーが無いの。」

と左手を離してヒラヒラとみせる。

「でもギアはあるから乗ってて楽しいんだー」

と言う

クラッチなしで、ギア???と不思議な気持ちになる。

慣れてきたらバイク交換して乗ってみたいなーと言うと晴ちゃんも嬉しそうに是非!と、こちらのバイクに興味津々だ。


ちなみに私のバイク、エストレアは父親の物だ。

今の父親ではなく、私が幼い頃離婚した実の父親である。

年に数回二人で食事をする間柄で、もうすぐバイクの免許を取れると話したら何台か所有しているバイクの一台をプレゼントしてくれるという話になった。

母に話すと嫌そうな顔をしたので、とりあえず今回は借りるこ形になった。任意保険の方もしっかり対応してくれたようだ。


晴ちゃんと会話しながら走っていると、対向車線を走るバイク乗りが手を振ってきた。

晴ちゃんが走りながら左手を振る

「知り合い?」

 と聞くと

「全然知らないよー」

「知らない人に手を振られたの?」

さらに聞くと、ヤエーを教えてくれた。

「何それ楽しそう。

私もやってみたい。」


やがて海沿いを離れゆるやかな山道に入っていく。

周りの景色がじわじわと変わっていった。

潮風の香りがうすれ、代わりに湿った土や木の匂いが漂ってくる。…気がする。

フルフェイスのヘルメットをかぶっているので匂いはよく分からないけど。

視界の両側は崖や木々に覆われ、道路沿いの店も次第に減っていく。

交通量も減り、自分たちのバイクの排気音が大きくなった気すらする。

こういう変化があると遠くへ行く事を実感する。

「気持ちい〜〜」

晴ちゃんが風を切るように叫ぶ。

はははと笑いながら私は後ろを走っていく。

確かに信号の無い緩やかなカーブを走るのは本当に気持ちよかった。

気がつくと法定速度よりスピードが出てしまうほどだ。気をつけよう。危ない危ない。

「彩ちゃん六百m先の交差点を左ね。」

晴子ちゃんがハンドルに固定したスマートフォンのナビを見ながら先導してくれる。

「あ、この信号左ね。左に曲がりマース。」

と分かりやすく教えてくれる。

「高校生なのにスゴイなー」

 と言うと

「お父さんに鍛えられたからね!」と少し得意げだ。

免許取り立ての頃はずっと叔父さんが先導していたが、最近は半分以上晴ちゃんが前を走っているらしい。

晴ちゃんの父親のバイクは四百ccあり、本気出されたらついて行けないからね。と、笑う。

そんな会話をしながら、私はライダーとすれ違う時の為に左手を離す練習をこっそりとしながら山道を走った。

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