伯爵の想い
時は過ぎ、シノアの怪我も良くなった頃。運命の舞踏会が始まる。
「はぁ……」
「またため息かよ。辛気臭ぇな。」
「だって、もしかしたら今日断罪されるかも!」
「まだ大丈夫だろ。」
「むー!クロッカスは分かってないわね。」
「……もしもの時は……」
「?」
クロッカスは思い詰めた顔で彼女をみた。
「お前を、僕が……」
会場にはいると王子がいた。
「来てくれたんだね。シノア。迎えに行けなくてすまない。」
「いいえ。大丈夫ですわ。」
何気なく話しているととある少女がぶつかってきた。
「「きゃ?!」」
「シノア!」
シノアはコケる前に王子が支える。しかし少女はそのまま転んだ。
「す、すみません。急いでいたもので……」
「あ、いいのよ。別に……!」
「あばばばば!?公爵令嬢様にアイ王子?!」
DEADEND来たー!!
そう、この子こそ、この王子の運命の相手。デイジー・ミリアード!
「申し訳ありません!」
デイジーは必死に頭を下げる。
きっと王子は今ので一目惚れを……。
「全くだ!私の麗しいシノアになにかあったらどうしてくれる?!」
「??!!」
「誠に申し訳ありませんでした!!」
「謝って済む問題ではない!」
「お、王子?!落ち着いてください。私はこうして無事ですので!」
思わず彼女を庇っていた。
「……君がそう言うなら……全く、シノアに感謝するんだな!」
「ありがとうございます。」
そう言って彼女は肩身が狭そうに去っていった。
それにしても王子は一体どうしたのだろう?知っている物語と変わっている。
シノアは己が物語を変えた事に気づかないまま舞踏会は終わっていった。舞踏会が終盤になるととある伯爵が話しかけてきた。
「シノア、久しぶりだな。」
「あら、カトレア伯爵」
カトレア伯爵は……
「君に会える日を夢にまでみていた。」
「まあ、そんな……ふふふ」
そう、この人もシノアの恋人である。クールで有名なカトレア伯爵。でも、その実シノアにぞっこんの人である。
「おい、カトレア。私の未来の妻に馴れ馴れしいぞ!」
「馴れ馴れしい?まだ婚約されているだけでしょう?」
あ、なんか火花が見える……。
「不愉快だ。シノア行こう。」
アイはシノアの手を取ってゆく。カトレアはそれを見ていることしかできなかった。