クビにした!
「お嬢様、今なんと?」
「だからクビだっていったのよ!」
クロッカスは驚いた表情でシノアに詰め寄る。
「何故ですか?!僕何かしましたか?!」
「貴方との関係を終わらせたいの!」
「そんな!……結局お前は……」
クロッカスはシノアを睨む。
あ、しまった。怒らせすぎると死……
気がつくとクロッカスはナイフを構えていた。
「クロッカス?!」
「お前のせいで!僕はっ!!」
ナイフで刺される!そう思った時には遅かった。
「あっ……」
ナイフを持ったクロッカスがシノアに襲いかかる。腕にナイフの刃が掠める。赤い血が滲む。
「う、そ?!」
転生したのだから何かチート能力とかないの?!ここで死ぬの?!
「い、いや!死にたくない!!」
シノアは必死に馬車から降りて逃げる。
嫌だ!痛い!
腕の傷口からはか赤い血がドクドクと流れ出す。特にチート能力もないし、助けも来ない。どうすればいいんだろうと思った時だった。気がつくと崖に追い詰められていた。
「なんでよ!!誰か助けて!!」
「みーつけた。」
クロッカスがナイフをもってシノアを追い詰める。
「やめて!クロッカス!」
「うるさい!黙れ!!」
クロッカスはナイフで襲いかかってくる。しかし、クロッカスは石に躓いてしまう。バランスを崩したクロッカスは崖から落ちる。
「うわぁっ?!」
「クロッカス!?」
シノアが見ると崖の下を見るとクロッカスは崖に生えた木の枝になんとかつかまっていた。
クロッカスは思った。殺されると……。
自己中でわがまま、そして、人を陥れることが大好きな彼女の事だ。きっとこのまま見殺しにされる。蹴り落とされるに決まっている。
「クロッカス!」
しかし、その思惑は違った。彼女はクロッカスの手を掴む。
「?!」
「クロッカス!しっかりつかまって!!」
シノアはなんとか崖から引きずり上げようとする。だが、力が足りない。
「な、んで……?」
シノアは必死に引っ張るが全く上がらない。それどころかシノアまで引きずり込まれる。
「バカ女!離せ!!」
「いや!!」
「このままじゃ、2人とも……!」
「いやだ!!離したくない!!」
目の前で人が死ぬのは嫌だ!助けないなんてできない!
シノアが必死に引き上げようとすればするほど引き込まれる。
「くそっ!」
クロッカスはその様子をみて痺れを切らした。自分を引き上げようとするシノアの手にナイフを突き立てる。
「離せ!!」
「いやぁあっ!!」
しかし、シノアはとうとう離してしまう。
「ふっ、お前なんかに助けられてたまるか……?!」
シノアは崖から飛び降り、クロッカスを抱き寄せる。
「は?!」
クロッカスは目を疑った。2人は猛スピードで崖下へと落ちてゆく。