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第2話 異界の鉄と影

異世界の緑濃い大地にたたずむ日本軍の駆逐艦。だが、陸軍の小隊が頼りにするのは、この鉄の巨体だけではない。

大丘博大尉は、部下たちに向けてかつての戦歴と兵器の性能を語り始めた。元教師としての彼の口調は、冷静で落ち着いていた。


「この八九式重擲弾筒は、軽い砲弾を敵陣に撃ち込むことができる。だが、連射は効かない。だからこそ、狙いは慎重にな。」

円利少尉が頷きながら応じる。「特にジャングルの地形では、砲撃の効果が限定的になる。だから近接戦闘でも三八式歩兵銃や九六式軽機関銃をうまく使う必要がある。」

参田須軍曹は手榴弾を手に取り、笑みを浮かべながら言った。「この手りゅう弾は、急所を狙うには最高だ。敵の隠れ場所に投げ込めば一気に形勢を逆転できる。」


博は続けた。

「我々はこれまで、数々の戦場でこれらの武器を使いこなし、数的に劣勢でも戦い抜いてきた。サイパン島でのゲリラ戦や、南洋の孤島での防衛戦……。だがここは異世界だ。武器だけで勝てる保証はない。」


その言葉に、部下たちの表情が引き締まる。

「敵はただの野蛮な異世界人じゃない。彼らは魔法を使い、我々の想像を超える力を持っている。」円利少尉が厳しい目を光らせる。


一方、彼らの前に迫るのは、男爵の軍勢だった。男爵は冷酷非道な人物として知られ、領地内では恐れられている。財力と武力で権勢を誇り、平民からの搾取も激しい。

騎士たちもまた、封建社会の掟に縛られながらも、独自の誇りを持ち、それぞれに複雑な思惑を抱いている。王族のために戦う者、己の名誉のために戦う者、あるいはただ命令に従うだけの者もいた。

従者たちはそんな騎士たちの影で、金銭に執着し、権力争いの隙間で暗躍している。

この男爵の軍勢は、単なる悪役ではなく、彼らの人間らしい弱さや欲望も垣間見える。


だが、戦いは避けられない。

大丘大尉は小隊に向かい言った。

「男爵の軍勢は三段階に分かれて動いている。まずは上段の丘陵地帯での偵察と前哨戦、中段の密林、そして下段の海岸線へと向かうはずだ。各段階で戦闘が起こる可能性が高い。」


部隊はそれぞれの地形に合わせて準備を進める。魔法と武器が入り混じる未知の戦場で、双方の駆け引きが始まろうとしていた。

大丘の心に、ふと元教師としての冷静な分析と、戦場で鍛えられた指揮官としての覚悟が交錯する。


「ここが異世界であることは確かだが、我々は戦士だ。生き残り、任務を全うする。」

彼の言葉に、部下たちは静かに頷いた。今、戦いの火蓋が切って落とされる――。

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