女騎士アルテミス・エルドラド建国記『人の書』(HDリマスター版)
冥界の王と春の女神 〜運命は巡り、未来に向けて収束する〜
『啓示』の権能により、急激に『生命力』が奪われたのでしょう!『女王様』が、倒れ込みます!!
ああ、完全に、やばいやつですわ!!
「『女王様』!!」
わたくし、ペルセポネは『女王様』を、抱き締めます!!
「『春の女神』よ!我が友を救う力を、わたくしに!!」
暖かな春の日差しのような力が、わたくしから発せられ、『女王様』を包み込みます。
それは、春の女神『ペルセポネ』の、癒しの波動。
全てを癒し、『生命力』を授ける、女神の力。
『生命力』を回復した『女王様』に、アルテミスが詰め寄ります。
「なぜ、あのような『無理』を!?ペルセポネ様がいなかったら、どうなっていたことか!!」
そう言われて、私も戸惑います。
「……わたくしも、初めて使う権能だったかしら?」
『女王様』は驚きつつも、反省している様子でした。
「心配をかけてしまって、ごめんなさい……でも、囚われているハーデスのことを考えれば、居ても立ってもいられなくて」
なんだか、はぐらかされてる気がしますわ!まあ、良いでしょう。
わたくしは『女王様』を、さらに抱きしめる。アルテミスも、抱きついてくる。
「……怖かった!あなたまで、わたくしの前から居なくなるのかと思って!」
「『女王様』が居なくなったら、私も生きていけません!」
わたくし達は、喜びに涙しました。
そこには、立場を越えた友情がある、そう、思えたのです!
『女王様』は、アルテミスに向き直り、告げます。
「アルテミス!『女王』として『勅命』をもって命じるわ!騎士の中の騎士『王下十字騎士』の権限をもって、『王国』左軍騎士団、ならびに右軍騎士団を率いて『北の山地』を包囲しなさい!」
アルテミスは侍女服のまま、騎士のように起立して応えます!
……なんで、この方は侍女服を着ているのでしょう?
「かしこまりました、『女王様』!」
アルテミスは、騎士団を招集するため、直ちに動き出します。
「さあ、私達も行きましょう!ハーデスが、待っているわ!」
「ええ、『女王様』。わたくしも、あなたの側にいて支えますわ。ハーデスを、無事に助け出しましょう」
わたくしを、怪訝そうに見つめ『女王様』は言います。
「何を言ってるの?きっと、あなたが『主役』よ?」
わたくしは、きょとんとして、首を傾げてしまいました。
ここは『荒れ果てた領地』の北の山地ですわ。
先々代の国王様の時代に『やらかした』領主から、領地を取り上げた場所。それ以来、王家の直轄領となっているが、管理できてない状態が続いています。
王都を出立した、左軍騎士団、ならびに右軍騎士団は、夕方頃に陣地設営を済ませ、交代で警戒にあたっています。
彼らには『女王様』により、中にいるクーデター首脳陣を『逃さない』ようにと、厳命されている。
日は既に落ち、『月』の光が辺りを照らします。
そう、『彼女』の出番ですわ!
「『女王様』、包囲は完了しました。北の山地のハーデス殿下がいると思われる坑道に、侵入する入り口を発見しました」
アルテミスが『女王様』に報告します。
「アルテミス、あなたの『光の屈折』と『暗視』の権能を、私達にも付与して。攻撃をあなたが防ぎ、ペルセポネが魔法で無力化する。私は『時間』を司るの権能で、数秒先の未来を見て危険を知らせるわ」
『女王様』の作戦は、大・気・流・突・撃と名付けられました。
『女王様』は、はしゃいでいます!かわいい!
「うふふ。さあ、行きましょう『女王様』。私たちの力を合わせて、ハーデスを救い出すのですわ!」
と言っても、さすがに権能の合わせ技に、敵はかなうはずもなく、わたくし達は最深部に到達します。
「二人とも下がって。私の『サトゥルヌス』の権能で、ハーデス以外を、無力化するわ!アルテミスは、権能の発動が確認され次第、突入してちょうだい!」
『女王様』が指示を出し、わたくし達は頷きます。
「いい?権能を発動するわ!
我が信奉を捧げる神『サトゥルヌス』よ!
不届き者に、不自由の罰を与え給え!
【我は『女王』!頭が高い、跪け!】」
権能の効果が確認され、アルテミスが突入します。
わたくしも続き、『魔法』を使うために、魔力を練ります!
中では、貴族や有力商人たちからなる、クーデター首脳陣が、『女王様』の権能の効果で拘束されています。
口々に、『女が!』とか『王位簒奪の罪人が!』と、つぶやいています。
『噂話』に踊らされている、哀れな人達……我が身を振り返り、目を背けます。
アルテミスが『女王様』に報告します。
「『女王様』!ハーデス殿下です!牢に閉じ込められています!」
思わず、涙が流れる、わたくし!
「……ハーデス!」
しかし『魔女様』が、叫びます!
「待って!ハーデスの様子がおかしいわ!アルテミス、ペルセポネ、油断しないで!」
その時、牢が衝撃でガシャンと音を立てます!
「ぐぐぐ……ぐがぁぁぁ!!」
あぁ……ハーデスが唸り声を上げ、牢を破ってしまったのです!!
「二人とも警戒して、ハーデスは自我がないようだわ!!」
『女王様』が、わたくし達に注意を促します。
きっと、薬物や魔法を使って『傀儡化』しようとした副作用……王族とは言え、幼いハーデスに、こんな仕打ちをするなんて!
「二人とも、お下がりください!ここは私が!」
アルテミスが、前に出ます。
ハーデスの権能を纏った腕が、アルテミスを掠めます。
「ぐぅ!!」
あの、アルテミスが、攻撃をいなせない!?
『ハーデス』。冥界の王である、偉大なる神。
ハーデスは、その力を具現化し、暴走している!!
「ペルセポネ!私たちの権能は、名前の影響を受けるわ!そこで、『ハーデス』の伴侶の名前を持つ『ペルセポネ』!あなたに、ハーデスの説得をお願いしたいのよ!」
『女王様』は、わたくしに告げる。
「わたくしが、ハーデスを!?」
「『春の女神』の優しさと慈しみの力で、ハーデスを説得して、ハーデスの自我を取り戻すのよ!」
わたくしとハーデスに、そんな『縁』が!
「わかったわ『女王様』。ハーデスを説得します」
わたくしは、ハーデスを説得する決意します。
わたくしの中の、女神『ペルセポネ』に語り掛けます。
優しさと慈しみの波動が溢れ出し、わたくしは、ハーデスに近づいていきます。
「ハーデス、聞いてください。わたくしは、あなたを守り、支えたいと心から思っています。どうか、わたくしを信じて、あなたの内に眠る『ハーデス』の力を、呼び覚ましてください。わたくし達は、あなたを必要としています。共に、より良い未来を築きましょう。あなたの心の奥にある優しさと慈しみを感じて、わたくし達と共に歩んでください!」
しかし、ハーデスは唸り声をあげるばかりです。
「うぅぅ、がぁぁ!!」
地面から、冥界の力を宿した鎖が現れて、わたくし達を拘束します。
まだですわ!決して、あきらめません!!
わたくしは、さらに深く、ハーデスの目を見つめ、心からの訴えを続けます。
「ハーデス、あなたは一人ではありません。わたくし達は、ここにいます。そして、わたくし達は、あなたを愛し、支えます。どうか、自我を取り戻してください。わたくし達は、共に、この困難を乗り越えることができるのです!」
わたくしは、自身の権能の力を高め、冥界の鎖をほどいていきます。
そう。固く冷たく閉ざされた心が、春の日差しで氷解していくように……
「思い出してください、ハーデス。わたくし達が二人で暮らした、あの穏やかな日々を!二人で助け会い、支え合った生活を!」
わたくしは、優しい笑みを浮かべ、ハーデスに近寄ります。
ハーデスは、たじろぎ、ただ、わたくしを見つめています。
「その調子よ!ペルセポネ!最後にハーデスに愛を囁いてちょうだい!あなたを慕ったハーデスならば、きっと、あなたの想いに応えてくれるはずよ!」
『女王様』のエールを受けて、頷きます。
ちょっと恥ずかしいですが、ハーデスを助けるためです!
ついに、わたくしはハーデスの元にたどり着き、優しく頬に手を添えます。
「ハーデス、わたくしは、あなたを愛しています。あなたの心の強さ、優しさ、すべてを愛しているのです。どうか、わたくしの愛を感じてください。あなたの中の『ハーデス』の力を信じて、解放してください。わたくし達は、共に、未来を切り拓くことができるのです!」
わたくしは、ハーデスの額に優しくキスをします。
「ハーデス、わたくしの愛を受け入れて、わたくし達と共に歩んでください。わたくし達は、あなたを信じ、愛しています!」
ハーデスの目に涙が浮かび、自我が戻ったように感られます!
「……ペル、セポネ……お姉ちゃん?」
「はい!わたくし達は、やっと『会えた』の、かしら?」
『王国』には、クーデターの爪痕が、まだ残っています。
しかし人々は『女王様』を中心に、未来に向けて、歩み出しています。
わたくしは、ハーデスと共に、離宮に住まうことを許されました。
穏やかな昼下がり。わたくし達は、窓の外を眺めます。
『王国』の空では、『サートゥルナーリアの大結界』が、国民を見守っています。
ここは『王国』の王宮。
『王下十字騎士』アルテミスは、女王に仕える近衛騎士です。
女王は、民衆を解放する法律を作り、『王国』を、より良くするために日々努力しています。
クーデターの折、アルテミスは囚われたハーデス殿下を助け出し、『王国』に平和をもたらしたのでした。
女王は、アルテミスの働きに報いるため、新たな騎士団を創設するそうです。
C O N T I N U E ?
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