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私はなにも悪くない  作者: 蠱毒児導
2章 羽ばたき
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2章 羽ばたき 2-3



「おっ!愛もラケット買ったんだ!」


「買うのに二時間もかかったけどね」


「えっ、何があったの!」


絶望的なまでに方向音痴な私はショッピングモールで二時間程彷徨っていた、ラケット一本買うだけでこの体たらくなど恥かしくて言える訳がない。


「まぁ、色々とあったんだよ」


カナと二人ラリーを交えて交わす会話、毎日練習したお陰かお互い形にはなってきた。


「私達、大分上手くなったよね」


「そうだね、ラリーも継続出来るようになったしさ」

 

始めは空振りばかりだったカナも、今では私に付いて来るまで成長した。


「このままいけば大会でも勝てちゃうんじゃない?三勝くらいさ!」


「三勝とまではいかなくてもまぁ一勝くらいはしたいね」


カナから飛んだラリーは、絶好のスマッシュボール。


「でも大会前に期末テストがあるよね、愛はちゃんと勉強してる?」



「えっ!?!?」



予想外からのスマッシュにスカッと空振る、これではラリーは中断だ。



「えーーーーーーーーーーっ!?」



どうしよう、入学してからピンチが私を襲い続ける。


「ヤバいヤバい、何か頼りになる『モノ』は」

 

目の前にいるではないか、偽りの仮面を装着し微笑みを浮かべる。


「ねぇ、カナって頭良い方?」


「多分良い方だと思うよ、なんで?」


「でかした子供!」心の中でガッツポーズを取った私は再びカナに微笑みかける。


「一緒に勉強、しよ?」



「えっ!?!?」



「今から!勉強会しよ?」



「えーーーーーーーーーーっ!?」



拒否権は与えない、会話のラリーも中断だ。教科書を持ちファーストフード店へ、期末テストに向けた駆け込み勉強が開幕する。


「ねぇ、愛ってどの科目が得意なの」


「私は数学と理科の理系科目だね、カナは」


「私は国語と英語の文系科目が得意だよ」

 

二人の得意科目が被っていない、不幸中の幸いだ。


「得意科目が被って無いのはラッキーだね、お互い苦手な所から潰していこうよ」

 

二人で進めるテスト勉強、カナの教え方が上手いのか苦手科目が潰れてくのは嬉しい誤算。


「カナって教え方上手いよね、先生より解りやすいよ」


「愛の飲み込みが早いだけだよ、先生なんて大げさな…」


突発的に行われた勉強会は私にとって大きなプラスとなる。


「今日は短い間だけど良い勉強会だったね」


「カナの教え方は為になるよ、またやりたいな」


「あっ、じゃあ連絡先交換しよ。愛って携帯持ってる?」


携帯電話、実績や成果を出していない間は先ず買って貰えないだろう。


「携帯まだ持ってないんだよね」


「そうなんだ、買ったら教えてねそれじゃあまた明日」

 

利便性を考えると携帯を持ちたいが私には所持する資格が無い、無駄を嫌うお父さんと交渉する為には切り札が必要な物なのだ。


「それじゃあづつう君この問題は解りますか、籠の中から同じ色のリンゴを取る確率は…」


カナから教わった人に教える勉強法、友達のいない夏木愛は仮初の王子様を抱えていた。


「傍から見たら痛い子なんだろうなぁ、私の部屋には誰も来ないから良いけどさ」

 

大人びた胸に挟まるづつうへ勉強を叩き込む、これで効果が無かったら私は滑稽なピエロだ。人を容易く信頼できないこの身体、疑心暗鬼の頭を抱える


「こんなんで成績が上がったら苦労しないけどなぁ。友達選び間違えたかぁ?」


己の見る目が無い事を怨みながらも期末テストを終えていく。



そしてテスト結果の返却日。



「うっっそだろ?…」



クラス順位は三位、学年順位は九位。苦手だった教科の底上げによる功績が大きかった。


「えっ、何これ。こんなの初めて」

 

ようするに私は天才だったのだ。


容姿端麗、頭脳明晰、才色兼備の私に対する周りからの評価はうなぎ登りとなる事だろう、己の優秀さに我ながら惚れ惚れしてしまう。


「ねぇねぇ、愛はクラス順位どうだった?私は六位だった!」


「カナのお陰で三位!私はずっとカナの事信頼してたからね、流石私の親友!」


多少信頼出来るカナは是が非でも傍に置いておきたい、携帯電話を得ると言う最重要課題を遂行する為にお父さんの躾を受けなければならない。


「あぁ、気乗りがしない。でもしかたないな、頑張ろう」


親友との約束を果たす為、私は鳥籠へと帰巣したのだった。


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