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異世界の朝は妹とお姫様と

 新章、開幕。

 俺は新原(ニイハラ) 佳助(ケイスケ)。16歳の高校1年生。ある日、俺は自分で開けた扉が異世界へ繋がるということを知り、色々あって今は異世界のお姫様であるティアラのコムレイズとして、彼女を護衛している。

 昼は高校、夜はバイト、そして休日は異世界でコムレイズという三足のわらじ生活も大変だけど、割りと充実してる。2人暮らしの妹や同い年の幼なじみ、そしておてんばなプリンセスに囲まれた騒がしい日々も、慣れれば悪くない。

 そして今、妹の舞依は。


「今日からお兄ちゃんとティアラさんと一緒に異世界の学園生活かー! マイ、めっちゃ楽しみ!」


 なんでこうなってるのか。

 まずは説明しなければならない。

 そうだろ?


 ――【闘争を招くもの(ウォーブリンガー)】とティアラの()執事ルドルフの共謀を阻止し、ティアラは姫としてではなく、自分自身の生き方を見つけようと普通の学園生活を送ることになった。

 当然(?)、俺も彼女の護衛として同じ学校、同じクラスに編入することになる。そんな新しい門出へ向かって、俺はいつも通り玄関のドアから異世界に足を踏み入れた。

 しかし、そこで思いがけないアクシデントが起きた――舞依も異世界へ来てしまったのだ。


「おおお、お兄ちゃん!? ここどこ!? なんで家の外がお部屋になってるの!? 誰このかわいい人!?」

「まあ、あなたがケイスケさんの妹さんですわね! はじめまして、(わたくし)はティアラと申します。よろしくお願い致しますわ」

「かわいいけど誰ーーー!?」

「えっと……ごめん。今まで黙ってたけど、俺、ドアを開けたら異世界に行けるんだ」

「なにそれ!? え、どういう理屈!?」

「分かんないけど……行けるんだ」

「えぇ? そういうのって、マイよく分かんないけど、そういうのってなんかこう、簡単にできることじゃないじゃん!? 簡単にできたら、そんなドア開けて異世界行けたら、ノーベル賞とかじゃん!? ていうか、それもう実質どこでもドアじゃん! お兄ちゃん、実質ドラえもんじゃん!」

「あ、どこでもドアか……いい例えだな」

「マイさん、落ち着いて…………ケイスケさん、最初から説明してみてはいかがでしょうか?」


 ティアラに諭され、俺は一から順を追って舞依に説明した。全てを――。

 俺は舞依もティアラも悲しませたくない。だから、舞依に異世界のことを隠したまま、ティアラのコムレイズを続ける必要があったんだ。

 全てを話し終えるまで、舞依は、ただ黙って聞いてくれた。


「――って、こんな感じ。分かったか?」

「分かんないよ!?」


 申し訳ないが、ものすごくテンパってる舞依は、かわいい上に面白い。


「ああ、もう少し分かりやすく説明した方がいいのか。えっと…………」

「いや、なにが起きたのかは分かったよ? ()()()そんなことが起きてんのか分かんないの!」

「それは、俺も…………」

「私たちも、まだ調べている途中ですわ」

「そうなんだ…………あぁ、分かんないならしょうがないね」


 疲れたのか、舞依は急に大人しくなった。


「――あ、ごめんなさい。えっと……ティアラさん。舞依っていいます。お兄ちゃんがお世話になってます」

「いいえ、お気になさらないで、マイさん。私の方こそ、ケイスケさんにお世話になってばかりですわ」


 舞依とティアラは、少し打ち解けたのか、柔らかく笑った。


「じゃあお兄ちゃん、自分でドア開けたりできないの?」

「いや、横に開くタイプのは平気」

「どういうこと?」

「ほら、教室とかベランダの窓とか。ああいうのは開けても異世界に繋がらないんだ」

「……あー、だからお兄ちゃん、最近ベランダから出るのハマってたんだ。そうしないと家の外に出れないから」

「そういうこと」


 舞依は合点がいったのか、うんうん頷いた。


「で、お兄ちゃんは毎週土日、ティアラさんの護衛として異世界に来てるってわけね」

「はい……本当に、ケイスケさんにはつい頼ってしまって…………ごめんなさい、マイさん」

「大丈夫大丈夫、お兄ちゃんもこう見えて、人のこと放っておけないタイプだから。公園で高いところにボールやっちゃった子どもに、ボール取ってあげるタイプだから。あと、迷子のペットの貼り紙しっかり見てるタイプだから、お兄ちゃん」


 実際は、子どもにボールを取ってやる状況に遭遇したことはないし、ペットの貼り紙も言うほど見てはいない。

 けど、まあ困ってる人を放っておけないのは正直そうだし――だからこうして異世界に来てる――俺はあえてツッコまないでおいた。

 それに、本当に舞依の言う通りやりかねない自分を、容易に想像できた。


「ええ、ケイスケさんは優しい方ですわ。ケイスケさんの妹でいられるマイさんが羨ましいです」

「え? そう?」

「だって、理由がなくてもずっとケイスケさんと一緒にいられるのでしょう?」

「そ、そんなことないよぉ〜……えへへぇ…………」


 なんか2人の周りがポワポワしている気がした。


「ケイスケさんは、私と同じ学園へ編入までしてくださるのですよ!」

「え、なにそれ!?」


 なぜか自慢げなティアラと、えらく迫真に迫る表情の舞依。この時、俺は2人がどんな結論に辿り着くのか、知る由もなかったんだ。


「私、前からずっと普通の学園生活に憧れていて、ついにその願いが叶うのですわ! そこへ、ケイスケさんもコムレイズとして同行してくださいますの!」

「えーっ、お兄ちゃんと同じ学校いいな〜……マイも行きたい…………」

「よろしければ、マイさんも私たちと一緒に編入なさいますか?」

「え、いいの!?」

「もちろんですわ!」

「なんで?」


 俺は思わず口を挟んだが、もはや止めることはできなかった。ティアラの父・シュトラウス王の威権もあって、とんとん拍子に俺たち3人の編入手続きは進み、そして1週間後の今日から、俺たちは新しい学園へ通うことになった。

 舞依とティアラは、お揃いの制服で待ち受ける学園生活への期待に笑い合っている。白のカーディガンに似た衣装は、異世界の割りには現代にあっても遜色ないコーディネートだ。

 他人に姉妹と言っても違和感を覚えられないであろう2人が、俺に手を伸べる。


「行こう、お兄ちゃん!」

「行きましょう、ケイスケさん!」


 俺たち3人は、これから通うことになる異世界学校――【ダイアデム学園】へ向かった。

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