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第3話 クリスマスケーキを①

お待たせ致しましたー

 どうやら、自分は思ってた以上に顔に出易いらしかった。



美兎(みう)っちに男が出来た話?」

「割と知られているわね?」

「先月でしたっけ〜?」

「中旬頃だったわね? 異様にニヤついてた」

「先輩ぁい、あれは幸せオーラですって」

「え、えーと」



 三田(みた)と話してから数時間後のおやつ休憩。


 美兎の会社は、体資本、特に頭を使うので15時くらいには数十分交代で休憩タイムを取ることになっている。


 今日は、同期の田城(たしろ)真衣(まい)に二年先輩の沓木(くつき)桂那(けいな)と一緒になったので、せっかくだから聞いてみたわけだが。


 見事、ど真ん中を突かれてしまったわけだ。



「で、で? マジでマジ?」

「う、うん。……お付き合いしてるよ」

「おーおー!! どこの誰? 写メは?」

「……田城ちゃん落ち着きなさい。湖沼(こぬま)ちゃんが答えにくいでしょう?」

「え、えーと……(さかえ)で料理人をしてる人です」

「ほう? 歳は?」

「…………28歳です」

「わぁお!」



 付き合っている以外、もし他人に聞かれた場合に使ってくれと火坑(かきょう)に用意してもらった偽情報だ。合っているのも料理人の部分だけである。写真も、この間のデートの時に証拠写真として残してあるのだが。


 保存アルバムから見せれば、二人とも何故かガッカリした表情に。



「……普通だ」

「悪くはないけど……普通ね? ブサメンじゃないけど、物凄くイケメンでもないわ」

「あ、あのー」

「ああ、ごめんなさいね? あなたの彼氏くんを貶すわけじゃないけど。……そうね、彼のどこに惹かれたのかしら?」

「! 顔……よりも、内面です」



 猫人と言うことは言えないが、美兎が好きなのは彼の表面よりも内面。優しく包み込んでくれる気遣いがとても好きなのだ。


 それをいかに凄いか伝えてみたら、二人が圧倒したような表情になってしまったが。



「わかったわかった!!」

「湖沼ちゃんが、彼氏くんをどれだけ好きかは分かったわ。けど……それじゃ、せっかくの初クリスマスなのに仕事で無理ね?」

「い、一応……初デートと彼……の誕生日の日に簡単にお祝いはしました」

「ほほう? デキた彼氏くんね?」

「歳上で料理上手の彼氏か〜? 美兎っち裏山〜! ね、ね、どっちが告ったの?」

「む、向こう……から」



 あれは思い出すだけで、顔から火が出てしまうと思うくらい。場所は場所だったが、きちんと想いを伝えてくれたのだ。



「おおおお!? 我が社のデザイナー花形がとうとう告られてしまったのか! しかも、相思相愛で漬け込む隙はナッシング! 先輩〜、これただでさえ落ち込んでる同期や先輩方に知られたら大変ですねー?」

「そうね、大変だわ」

「はい?」

「自覚ない美兎っちだ〜け〜どぉ〜? あんた、倍率高いんだよん?」

「真衣ちゃんじゃなくて?」

「嫌味ったらしくないのが、逆に憎いね〜?」

「こう言う素直さは、あなたも見習いなさい?」

「うぃっす」



 いまいち理解は出来ないが、どうやら美兎は自覚していないのだが社内で人気があるらしい。だが、彼氏が出来たと知られれば阿鼻叫喚図が出来上がるだろうと沓木は言った。


 けど、普段通りでいいからと言われてから、美兎は彼女の特技を思い出した。



「沓木先輩」

「うん?」

「その……お菓子作りを教えていただきたいんですが」

「あら、彼氏くんに?」

「はい。……本当はバレンタインまで練習しようかと思ったんですけど。大晦日前までには一度会いたいですし、クリスマスを過ぎてもいいんでお祝いしたいんです」

「健気だね〜? 美兎っち」

「……ほんとね? いいわ、それなら今日はまだ定時で上がれそうだから。田城ちゃんも一緒にうちに来なさい?」

「おお!」

「ありがとうございます!」



 そうして、おやつタイムを切り上げてから丸の内のデパートで少々買い込んでから、地下鉄で移動して沓木の家がある八事(やごと)に到着した。


 会社から適度に離れてはいるが、路線も名城線で来られるから便利と決めて住んでいるそうだ。

次回はまた明日〜

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