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第2話 心の欠片『和風オムライス』

お待たせ致しましたー

 さて、オムライスと言えば。


 日本が生んだ洋食とは言え、完全に洋食スタイルなのもいかがなものか。


 灯矢(とうや)の食べたいものは、きっとそれかもしれないが。完全に洋食店の味を再現するだけでも面白くない。面白味を追求してもいけないとは思うが。


 少々、内側のご飯の味を工夫しようと決めた。


 灯矢から取り出した心の欠片である、卵達は調理台の脇に置き。


 まずは、玉ねぎを刻むことにしたが。



「灯矢君は、苦手な野菜とかはありますか?」

「な……ない、です!」

「ふふ。基本的に好き嫌いはないんですよ」



 母である灯里(あかり)が小さく笑うくらいだから、本当にないのだろう。であれば、にんじんとピーマンを入れよう。


 火坑(かきょう)は子育てをしたことはないが、野菜をまったく食べないのもいけないと思っている程度。


 火の通りやすいように、細かく刻み。油で炒めて、合い挽き肉も入れてケチャップは入れずに、醤油、砂糖、酒、みりんを合わせた調味液を流し入れる。


 アルコール部分を飛ばすためにも、よく煮込んで。煮詰まったら、ご飯を入れて混ぜてから皿に盛り付けておく。



「ケチャップの匂い……しない?」



 ちょっとだけ残念がっているようだが、火坑は小さく笑った。


 次に卵。


 灯矢から取り出した、有精卵のように赤い卵。これを贅沢に三つも使い、バターと塩胡椒でスクランブルエッグのように焼いていく。


 それを包むように、ご飯の上に乗せたら。仕上げに、灯矢念願のケチャップをかけていく。


 途端、灯矢から『わあ』の声が上がった。



「お待たせ致しました。特製和風オムライスです」

「わふう?」

「醤油とか、みりんを使ったので。普通のオムライスとは違うんですよ?」



 灯矢にはまだ持つのが重そうなので、カウンターに置いてやった。木製のスプーンを渡してやると、彼の白目が黒く、水色のような瞳が楽しそうに輝き出した。


 子供の客は少なくないが、たまに訪れる彼らと同じ表情になるのは嬉しかった。


 もう一度、さあどうぞ、と告げれば。灯矢はいただきますをしてから、スプーンでオムライスをすくった。



「わあ!」



 また声を上げてから、勢いよく口に入れると。はふはふしながら、ゆっくりと噛んでいく。



「こらこら、ゆっくり食べなさい」

「……ん。美味しい!! おしょーゆの味のご飯だけど、美味しい!! 卵、ふわふわ!!」

「ふふ。ここの大将さんのお料理だもの?」

「お粗末様です」



 喜んでくれて何よりだ。


 灯矢は少しオムライスが冷めてからも、ゆっくりゆっくり食べていく。普段から、灯里達にきちんと言いつけられているのだろう。


 ああ、もし美兎(みう)と将来的に結婚して子供が出来たなら。どう育てていくのか。


 楽しみだが、まだまだ考えるのは早いと考えていたことを霧散させたのだった。



「……ごちそうさま、です」



 気がつくと、ゆっくり食べていたのにもう灯矢は食べ終えてしまったようだ。


 子供サイズに作ってやったから、なくなるのもあっという間だったのだろう。


 次はどうするか、灯里の方に聞くと。



「卵ばかりもよくないですし……去年と同じような煮穴子の握りを」

「あなご??」

「ふわふわして美味しいお魚よ?」

「食べたい!」

「かしこまりました」



 それから、雨女一行のランチタイムは。


 時間の許す限り、続いていったのだった。

次回は土曜日〜

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