第5話 真穂と翠雨
お待たせ致しましたー
結果、紗凪は解体の一部始終を見届け。
臓物が出ても、きゃっきゃとはしゃぐだけで終わり。
しかも、初挑戦なのに生き血のポートワイン割りを飲むまでやってのけたのだ。
可愛らしい見た目に反して、豪胆だった。
さすがは、烏天狗の彼女だからか。
「んん!? お肉のお刺身美味しい!!」
今はスッポンスープが出来るまで、脚肉の生姜醤油和えを口にしていた。
今日のスッポンは仕入れた二匹とも雌だったので、全員卵も堪能したのだった。
「うむ。相変わらず美味いでござる」
「あんたの口調も相変わらずねぇ、翠雨? 烏天狗の次期頭領だからって」
「昔からこうでござった。今更変えるつもりはござりませぬ」
「あっそ。別にいいけど」
真穂と知り合いだと言うのは知っていたが、少しぎこちなく感じた。真穂と言うより、翠雨の方が。
「……真穂ちゃんと翠雨さん、仲悪いの?」
恐る恐る、真穂に聞けば。彼女は猪口を傾けながらからからと笑い出した。
「違う違う。こいつが赤ん坊の頃から知っているから、ちょっと反抗期なわけ?」
「な!? 真穂様!!?」
「事実じゃなぁい?」
「えー? すーくんが赤ちゃんの頃ってどんなんだったんです?」
「あら、聞きたい?」
「是非是非」
「やめろでござる!!?」
ああ、なんだ。杞憂だったのか。
美兎はほっとしてから、梅酒のロックを口にした。氷が少し溶けて薄くなったが、それもまたまろやかで飲みやすかった。
とここで、美兎は思い出した。
「火坑さん、今日の心の欠片を」
「ええ、お願いしますね?」
「へ? なにそれ??」
そう言えば、紗凪にはまだ伝えていないのを思い出した。
「魂の欠片とも言いますか。ただ、直接寿命などには関係がありません。わずかな片鱗、魂の輝きを僕のような妖が顕現します。その引き出しを可能とする方から、お代金の代わりにいただくんですよ。それは、ほとんどの場合食材になります」
「へー? そんな仕組みがあったんですね?」
「引き出すことを可能とする妖は少ないでござるからな? 紗凪にはそう言う店に連れて行ってなかったゆえ」
「どーやって取り出すんですか?」
「見ててください」
美兎が両手を火坑の前に差し出して、火坑の肉球のない猫手がぽんぽんと触れてくる。
お決まりの、一瞬フラッシュをたくように、店内が白い光に包まれて。
消えた時には、少し見覚えのある白っぽい魚肉が笹の葉の上に乗っていた。
「うわ!? ぽんぽんしただけで出てきた!?……はまち??」
「いや……それは、マンボウの肉でござる!?」
「あら、季節外れだけど、珍味じゃない?」
「火坑さん、これなら」
「ええ。せっかくなので、作りましょうか?」
マンボウのカツカレー。
前回のマンボウの肉は、シンプルに串焼きでいただいたから。
翠雨に提案すると、思いっきりガッツポーズをしたのだった。
次回はまた明日〜




