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第4話 妖怪さんとの恋①

お待たせ致しましたー

 秋保(あきほ)合歓(ねむ)の本性である『がしゃどくろ』を見させてもらったらしい日から数日後。


 美兎(みう)は、楽庵(らくあん)に来て欲しいと秋保から連絡があり。


 時間になって、店に向かえば。先に来ていた秋保が、美兎を見るなりいきなり抱きついてきたのだ。



「……秋保ちゃん?」

「うわーん!! 美兎ちゃん美兎ちゃん、どうしよう!?」



 どうした、と言いたいのは美兎の方だが。それでは話が始まらないので、ひとまずは落ち着かせて。


 席に座ってから、火坑(かきょう)も苦笑いしつつ、温かい煎茶を出してくれた。



「さあ、笹河原(ささがわら)さん。美兎さんもいらっしゃったんですし、ゆっくりお話してくださいませんか?」

「え、火坑さんには何も?」

「ええ。ここに来てからは『どうしよう、どうしよう』とばかりで」

「うう〜〜……だってだって!!」



 秋保はそう言うと、カウンターテーブルに顔を突っ伏した。本当に何があったのだろうか。



「秋保ちゃん?」

「だって……人間でもないのに、妖怪さんを好きになるだなんて、初めてなんだもん」

「え?」

「おや。もしや、合歓さんをですか?」

「そーなんですぅ……!!」



 まさか、と思っていたことが当たっていたのにも驚いたが。


 だが、この様子だとまだ合歓には告げていないようだった。なぜだかは、これから彼女の口から教えてもらえるのだろう。



「え、いつ? いつ好きになっちゃったの?」

「……この前。合歓さんのがしゃどくろ、見せてもらった時」

「んー? どう言うタイミングで?」

「……見せてもらった時ははしゃいじゃったんだけどぉ。人間に戻った? 後に、褒めたら……抱きつかれたの」

「え……えー?」

「あ、別に告白されたわけじゃないよ? なんでかお礼言われたの」

「お礼??」

「ですか?」

「骨さんの姿で、誰かに褒められることがなかったから。嬉しかったんだって」



 美兎も当然、がしゃどくろと言う妖の姿を見ていないので想像はつかないが。


 けど、合歓と出会った時には。彼は悪酔いするまで本性のことを嫌っているように見えた。


 それを思えば、その本性を褒めちぎってくれた女性には、お礼を言うだろう。


 ましてや、一目惚れした相手からなら尚更。



「……秋保ちゃんは、嫌だったの?」

「……うーうん。びっくりしたけど、合歓さんも泣いてたから……どう声をかけたらいいかわかんなくて。でも」

「でも?」

「不謹慎だけど、泣いてる顔が綺麗だって思ったの」

「で、気づいちゃった?」

「……うん」

「なるほど。一目惚れとは違いますが、笹河原さんはきちんと合歓さんを見ていらっしゃったんですね?」

「んーもぉー、どうしようなんですよ!? 恋とか初めてだし、ましてや大好きな骨持ってる妖怪さんだーかーらぁ!?」

「落ち着いて、秋保ちゃん」

「だって〜〜……!!」



 酒は飲んでいないようだが、自分の気持ちの大きさに触れて、若干パニックになっているようだ。


 初々しいが、どうしたものか、と思っていると。


 扉の方から、勢いよく開く音が聞こえてきたのだった。



「さ……さ、河原、さん……今のマジ!?」



 噂をすればなんとやら。


 話題にしていた合歓が、顔を真っ赤にさせて立っていた。ちらっと火坑を見れば、ぺこりとお辞儀しながらスマホを手に持っていたのだ。LIMEとかで、合歓に連絡したのだろう。



「え……え、え、ふぇ!?」



 まさか、秋保は大声にしてた言葉を聞かれるとは思わなかったらしく。


 合歓の登場に、立ち上がっていた膝をかくんとさせてしまい。


 美兎は間に合わなかったが、合歓がすぐに腕を掴んだことで間一髪、カウンターに頭をぶつけずに済んだ。



「……あの、さ。ちょっと、ここじゃなんだし。話がしたい」



 と言う言葉に、秋保は反射で頷いてしまい。


 楽庵から、二人は去って行ったのだった。



「いいカップルになりそうじゃない?」



 影から、真穂(まほ)が女性の姿で出てきて、秋保が座っていたところに腰掛けた。



「ね? けど、火坑さんもずるいですよ? 合歓さんにわざわざ連絡いれちゃって」

「ふふ。後悔したくないのであれば、来た方がいいですよと告げただけです」

「十分、意地悪じゃない?」

「ふふ」



 とにかく、あとは時間に身を任せるだけ。


 明日以降に、美兎も秋保にLIMEで教えてもらおうと決めたのだった。

次回はまた明日〜

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