第2話 がしゃどくろ②
お待たせ致しましたー
怖い、はずだと思っていたのに。
本当に、骨が好きなのか。秋保は目を爛々と輝かせていたのだった。
「…………すっごい!! 凄いですぅうう!!」
合歓が声をかける前に、秋保はぴょんぴょんとその場で跳ねたのだった。
「……怖く、ないの?」
本性のがしゃどくろのせいで、変にかすれた声になるが。秋保は気にせずに首を縦に振ったのだ。
「ちょっと、大きいのには驚きましたけど!! 失礼ですけど、骨格標本がまるまるおっきくなったんですもん!! 私は好きです!! 大好きです!!」
「だ、だいすき……って」
合歓のことではなく、がしゃどくろの方だろうが。
それでも、この本性の姿で『好き』と好印象を持たれるのがまずなかったため。
今、合歓は人化じゃなくてよかったと思った。
本性なら血肉などがないので、顔色がバレないからだ。けど、嬉しくないわけではない。むしろ。
「合歓さん、合歓さん! 触ってみてもいいですか!?」
「へ? さわ!?」
「だってだって!! リアルに骨に触れる機会ないですもん!! ね? ね?」
「あー……ああ……うん」
合歓というよりは、『がしゃどくろ』に触りたいのだろう。
少し複雑な気分にはなったが。触りたいという女性は今までひとりもいなかったので、正直言って嬉しい。
だが、足だと万が一踏んづけてはいけないので、手に乗るように促した。
「わ、わ! 乗っていいですか!?」
これまた、テーマパークのアトラクションに乗るみたいなはしゃぎっぷりだ。
全然、まったく怖がらずに合歓の骨だけの手の上に乗り。潰さないように、握り過ぎないようにと、丁寧に軽く握ってから顔の近くにまで持ち上げてやる。
だが、間違っていたのかもしれない。
秋保の、子供のように興奮して、頬が紅潮した様子が間近に見えるのだから。
そして、手の方は目の前にあるので既にペタペタと触られていた。
「すっごい、すっごーい!! 生の骨ってこんな感じなんだ?! 標本とかじゃ、プラスチックや樹脂だから冷たいし質感も違うし」
「……楽しい?」
「はい! あ、頭蓋……顔もいいです?」
「……どーぞ」
もうここまで来たら、許す以外ないだろう。
もう少し顔を近づけて、触りやすいようにしてみたが、よくなかった。
人化で言う唇。
歯の上部分をペタペタと触るのだから、なんだかむず痒くなってきたのだ。噛まないように気をつけていたが、これ以上はまずい。
さすがにくすぐったくなってきたのだった。
「あー、満足! ありがとうございました!!」
くすぐったいのを我慢していたら、秋保は満足したらしく。
もう、終わりか、と。少し寂しさを覚えたのが時間も時間なので。
送るために、秋保を下ろしてから素早く人化した。
元に戻るというわけではないのに、人化の方がやけにしっくりしたのだ。
上着と帽子を見つけて身につけていたら、離れたところに下ろしてた秋保がダッシュでこちらに来た。
「合歓さん、合歓さん!」
「……なんだい?」
怖がられていないのに、少し嬉しく感じたが。人化の合歓では物足りないと思われるだろうに。
秋保は合歓の手をいきなり掴んだのだ。
「こっちの合歓さんもですけど! 骨の合歓さんもかっこよかったです!!」
「……本気??」
「はい!! だって、イケメンさんですから骨の形状も綺麗でしたし、納得です!!」
ぶんぶんと握られた手を振りながら、頬を紅潮させているのだから本心なのだろう。
だから、合歓も感極まってしまい。
思わず、秋保の手を引いて、胸に抱き込んでしまった。
「……ありがとう」
この人間の子が、欲しい。
好きになったから、欲しい。
合歓は、あの猫人の言っていた『好きになった相手』のことがよくわかったのだ。
次回はまた明日〜




