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第3話『カラスミと桜エビのパスタ』

お待たせ致しましたー

 秋保(あきほ)のお腹が悲鳴をあげているので。


 火坑(かきょう)はまず、先付けにと冷やした枝豆を出してあげた。



「どうぞ。お通しの枝豆です。冷やしていますので、食べやすいかと」

「いただきます」



 秋保は手を合わせてから、おしぼりで手を拭いて。枝豆を手に取ると、ゆっくりサヤから出して豆を口に入れた。



「!?」

「どうでしょう?」

「冷たいけど、美味しい!! 冷凍の枝豆とか時々買うんですけど、全然違います!!」

「ふふ。ありがとうございます」



 さて、ここは小料理屋だがしっかりめに食べたいのであればご飯ものがいいかもしれない。美兎(みう)には前にも食べてもらったことがあるものにしようとしたが、趣向を少し変えようとパスタを戸棚から取り出した。



「あ、火坑さんがパスタって珍しいですね?」

「ええ。カラスミを使って、ペペロンチーノ風にしようかと」

「わあ!!」

「から……すみ?」

「ぼ、ぼらの卵を干したもんだ」

「そうなんですか?」



 火坑の代わりに、がしゃどくろの合歓(ねむ)が答えてくれたが。


 やはり、秋保に一目惚れしてしまったようだ。あれだけ酒に溺れていたのに、今は酒が抜けておろおろしている。


 たしかに、秋保は可愛らしいが。合歓の正体を知ったらどうなるか。秋保は少し怖がりな部分があるようだが、先はどうなるかわからない。


 とりあえず、火坑は料理に取り掛かることにした。


 パスタを茹でている間にソースを作り、茹で上がったら手早く和えて。


 合歓の分も入れて、三人分出来上がったらそれぞれ出したのだった。



「桜エビだ!」

「好みは伺いませんでしたが、大丈夫ですか?」

「大好きです!!」

「私も!!」



 添えたフォークで、秋保は丁寧に巻いてから口に入れた。味見はしたので大丈夫だとは思うが、秋保や美兎の顔を見れば心配は無用だった。



「すっごく美味しいです!」

「やっぱり、カラスミ美味しいですね!」

「ちょいピリ辛なのがいいなあ? 鷹の爪が効いてる」



 合歓も揃ってぱくぱくと食べてくれていた。酔い覚ましがわりになって何よりだが、食べながらも秋保を見るのはやめない。


 話しかけたいが、どう話しかけていいのかわからない。と言った感じか。


 プレイボーイのように、言い寄ってきた女性の相手をしては振られてたらしいのに、なんと初心な反応だろうか。


 かく言う、火坑も美兎のことに関しては冷静でいられないことが多いのでわからなくもない。京都旅行の時も、美兎から添い寝をお願いされた時は。一瞬、理性が飛びそうになったくらいだ。



「美味しい……美味しい!! 最近、外食でもこんな美味しいご飯食べてなかったから!!」



 あっと言う間に、秋保はパスタを食べ終えてしまい。新しく出してあげた煎茶でひと息吐いた。



「お気に召したようで何よりです」

「迷った時は、もうダメって思っちゃったですけど。ここ来れてよかったです!」

「ふふ。手順を踏めばまた来れますよ?」

「うーん。(にしき)辺りで適当に歩いてただけだったんで、覚えてないですぅ」

「俺が!」

「ん?」

「え?」

「ふぇ?」



 いきなり、合歓が声を上げて全員で彼を見れば。恥ずかしかったのか、合歓は手で顔を隠していた。



「い、いや! ささ……河原、さんが嫌でなければ、俺が教えるよ」



 本当に、彼はプレイボーイだったかと火坑はまた疑問に思ったが。少し、おかしくも感じた。合歓がそれだけ緊張する相手なのだな、と。



「いいんですか!?」



 秋保は本当に嬉しかったのか、横顔を見る限りはしゃぎそうな感じであった。


 本人が同意したのであれば、火坑も深くは追及するのをやめよう。


 とりあえず、他にも料理を出したのだが。


 秋保は美兎に出したスッポンスープで頭部が入れられているのを見て、最初は引いてたが自分のに入ってた足や甲羅の部分をしゃぶったので考え方が変わったようだ。


 そして、予定通り。合歓が彼女を人間界に送っていくことになり。火坑は代金代わりに彼女から心の欠片をいただいた。


 はじめは彼女も驚いていたが、身につけてたネックレスと同じ状態から、ダチョウサイズの卵に変化したのだった。



「合歓さん、笹河原さんと仲良くなれたらいいですね?」



 〆のスッポン雑炊を口にしながら、美兎は苦笑いしていた。


 火坑もそう思う。


 いきなり一目惚れで、いきなり告白するまではないと思うが。


 もし、がしゃどくろの本性を知られた時に。拒絶されなければいいとは思うが。


 願うしか、出来ない。


次回はまた明日ー

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