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第5話『再び、アボカドグラタン』

お待たせ致しましたー

 美兎(みう)は今、楽庵(らくあん)に居た。



「へー? 花菜(はなな)ちゃんが楽養(らくよう)で働くきっかけが」



 今日も今日とて、恋人の営む小料理屋に足を運んでいたのだ。お土産を配り終えてから、座敷童子の真穂(まほ)とゆったりと酒や料理を楽しむ。


 その時に、火坑(かきょう)が雪女の花菜が楽養で働くきっかけの日を話してくれたのだ。



「ええ。大人しそうなお嬢さんが、勇気を出して師匠にお願いされてましたからね?」

「あいつ、土壇場の行動力は高いもんね?」



 盧翔(ろしょう)の事もだけど。


 と、真穂がぼやくのに美兎達は苦笑いするしか出来なかった。



「まあまあ。今はちゃんと付き合えるようになったんだから、いいんじゃない?」

「みーう? 脅されかけたのに、よくそんな暢気に言えるわね?」

「うーん? とりあえず、勘違いだってすぐにわかったし?」

「懐広いわね?」

「そうかな?」

「ええ。美兎さんはお優しいですから」



 そう言われてしまうと、くすぐったい気持ちにもなるが嬉しくなってしまう。


 四月になり、少し温かくなってきたので、美兎は梅酒のロックをちびりちびりと飲んでいた。



「で? 道真(みちざね)に縁結びの儀式してもらったんだから? 何年先に結婚すんの?」

「ぶ!?」

「ふふ、どうでしょうね?」



 妖と本当の意味で結ばれれば、人間の美兎は寿命や外見が歳を取らなくなる。


 真穂も、海峰斗(みほと)といつかは結婚すると約束しているのに、そこはどうするのだろうか。


 少し梅酒をむせてしまったが、美兎はそんなことを考えていた。



「真穂は真穂で、みほとの事はちゃんと考えてるって言ったでしょ?」



 美兎の表情で読んだのか、得意げに言うのだったが。



「ふふ。さて、次のお料理はどうしましょうか?」



 話に夢中になっていたので、真穂もだが美兎もあまり料理は口にしていない。


 何にしよう、スッポンにしようか。他にしようか。


 真穂と話し合いながら、いつものように心の欠片を火坑に差し出して。


 京都でも食べた、アボカドの器で出来たグラタンを食べることになったのだ。



「アボカドでグラタンねぇ?」

「美味しかったよ?」

「美兎は火坑の作るもんならなんでも美味しいって言うでしょ?」

「う」

「ふふ。少し趣向を変えますので、お待ちください」



 そして、少し待っている間に出来たアボカドのグラタンは。


 朔斗(さくと)が作ってくれたのは、ホワイトソースでのグラタンだったが。


 火坑が作ってくれたのは、全体的に薄茶色の仕上がりになっていた。



「何入れたの?」

「お味噌です」

「味噌、ですか?」

「合わせ味噌に、少々マヨネーズを加えたものです。甘辛くて美味しいですよ? 実は先日試作してみたんです」



 火坑がそう言うのなら、絶対美味しいに決まってる。


 美兎は手を合わせてから、添えられた漆塗りのスプーンを手に取り。


 パン粉も少しかかっているのか、サクッとした感触が伝わってきて期待が高まっていく。少し湯気が出たので、軽く息を吹きかけたら。


 味噌とマヨネーズがアボカドに調和していて、蕩けた食感が堪らなかった。



「おい」

「し!」



 大振りのアボカドを取り出したので、半分でもとても食べ応えがあった。


 夢中で、グラタンと梅酒を交互に口にすれば。幸せの循環が訪れたのだった。



「ふふ。お粗末さまです」



 そんな美兎達を、相変わらず火坑は涼しい笑顔で見守ってくれていた。

雪女続編終了


次回から新章スタート‼️


また明日〜

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