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第8話 添い寝

お待たせ致しましたー

 歩きに歩き回って、足は疲れたが。


 心は、充実していた。


 美兎(みう)火坑(かきょう)と一緒に、夕方あたりに宿屋に戻ってから。備え付けの露天風呂を堪能していた。


 ひとりじゃなくて、今日守護として荷物持ちとしてずっと頑張ってくれてた、座敷童子の真穂(まほ)もだが。



「ふぃ〜、極楽極楽〜!」



 少し年寄り臭いが、実際に真穂は長命なので間違っていないかもしれない。怒られるかもなので、口にはしないが。


 今の姿は、本来の子供のような姿。風呂はあまり広くないので省エネモードらしい。



「今日はありがとう、真穂ちゃん」

「大したことしてないわよ? 美兎が楽しめたんなら、何よりだわ」

「……うん」



 彼氏と旅行だなんて初めてで。


 こんなにも幸せでいいかってくらいに、素敵な日を過ごせて。


 至れり尽くせり、だった。夕食はこれからだが、きっととても豪華なのだろう。


 今日は甘いものを中心に食べ歩いたりしたが、満腹までは食べていないせいか少し空腹気味だった。


 火坑もそれを見越して、エスコートしてくれたのだろう。


 かけると肌がツルツルになるお湯で、今は真穂と一緒に楽しんだ。今日限りだけど、肌がツルツルになるのは嬉しかった。



「……まあ。あいつはほとんどなんもしないと思うけど」

「? うん?」

「何回か間違えられたみたいに、夫婦気分でいたいんじゃない?」

「ふ!?」



 夫婦。


 たしかに、何回か勘違いされてしまったが。


 嬉しくなかったわけじゃない。だが、少し恥ずかしかった。まだまだ美兎は火坑に比べたら子供同然なのに、あの涼しい笑顔を向けられると心が蕩けてしまいそうになる。


 決して、嫌じゃない。


 だが、昼間。一つ目小僧の朔斗(さくと)に告げていたように。まだまだ美兎を人間として扱ってくれている。


 それに、ほんの少し。淋しいと思ったのも嘘じゃない。


 なんて、あさましい思いを抱いているのかとは思うが。顔に出てたのか、真穂に鼻をつままれた。



「みーうー?」

「ふぁい?」

「ひとりで抱え込まないの! そう言うことは火坑や真穂とかにちゃんと言うの!!」

「だって……呆れない?」

「内容によるわね?」

「…………たい」

「ん?」

「…………もっと。火坑……さんに、近づき……たい」



 ぽつり、と口にすれば。真穂は呆れるどころか口笛を吹いた。



「んじゃ、セックスは出来ないんだったら……添い寝とか?」

「そ、添い寝?」

「まだしてないでしょう?」

「……して、ない」



 じゃあ、口にしてみろと言われたが。


 それから、お風呂から上がっても。


 美味しい美味しい京都の豆腐料理を堪能しても。


 食後の日本酒のスパークリングを軽く飲んでも。


 美兎は緊張でガチガチになって、なかなか言えずにいたのだった。



「……美兎さん。どうかしましたか?」



 夜も猫人に戻らず、響也(きょうや)のままでいた火坑はピッチリと綺麗に着た浴衣姿で、優雅に日本酒のグラスを傾けていた。


 それがどうしようもないくらい、綺麗で美兎は見惚れてしまいそうになったが。


 彼の言葉に、すぐに首を横に振った。



「な、ななな、なんでもないです!」

「ふむ。なんでもと言う割には顔が赤いですよ?」

「……呆れ、ませんか?」

「ふふ。美兎さんからのお願いに、呆れはしませんよ?」

「!」



 じゃあ、と二人以外に誰もいないのにひそひそ声で彼の耳元で呟いたら。


 彼は、にっこりと笑って美兎の手を掴んできた。



「そのような可愛いらしいお願い、叶えないわけにはいきません」

「い……いん、ですか?」

「もっと先に進むのは、まだまだですからね? 添い寝であればお任せください」



 そうして、軽いキスを何度かしてから。


 美兎と火坑は、ひとつのベッドで仲良く眠りについたのだった。

京都旅行編終了


明日からは新章スタート‼️

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